外国人労働者の受け入れが減少
近年の引き締め策を受けて、外国人労働者の受け入れ数が急速に減少しており、介護・医療分野などへの影響が懸念されている。政府は、緩和に転じる意向を示していないものの、諮問機関は、現在受け入れが認められている高度な技能レベルの労働者について、過度に高い職種別の給与水準要件を緩和することで、より適正な受け入れをはかることを政府に提言している。
就労ビザ、ピークから6割近く減少
内務省の公表する入国許可発行数のデータによれば、2025年の就学や就労などに関するビザ発行数(観光等の短期滞在を除く)は約79万件となり、近年のピークである2023年(143万件)からは45%の減少となった(図表1)。とりわけ就労ビザについては、2023年の61万件から2025年には26万件と6割近く(57%)減少している。
図表1:目的別ビザ発行件数

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出所:Home Office 'Immigration system statistics, year ending December 2025
' (Entry Clearance Visas - Applications and Outcomes)
就学・就労ビザに関しては、EU離脱以降の新制度下で流入者数が急増、特に主申請者の家族の帯同が多くを占める状況となったことを受けて、ここ数年厳格な引き締め策が実施されたところだ。2024年には、就学ビザと介護ビザについて家族帯同を相次いで禁止、2025年には介護労働者の受け入れを停止したほか、外国人労働者の主要な受け入れルートの一つである専門技術者(Skilled Worker)ビザの給与水準要件の大幅な引き上げ(全体の下限を2024年に年26,200ポンドから38,700ポンドに、さらに2025年には41,700ポンドに改定、併せて職種別の要件も引き上げを実施)(注1)や対象職種レベルの引き上げ(中等教育修了相当から大卒相当以上の職種へ)などを実施した(注2)。結果として、保健・介護ビザの発行数は2025年には5万件弱とピーク時(2023年)の7分の1に減少、直近ではほとんどを家族の帯同・呼び寄せが占めている(図表2)。
図表2:就労目的の入国許可件数の推移

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注:2008年のポイント制導入以前の受け入れは「その他」に合算
出所:同上
引き締め策以降の保健・介護ビザの発行数の減少は、ビザの発行対象の大半を占める介護労働者にとどまらず、看護師や医師等にも及んでいる(図表3)。一方、専門技術者ビザは多様な職種が対象に含まれ、引き締め策以降はほとんどの職種で発行数が減少しているが、中でも近年急速な拡大傾向にあった食品調理・製造職(シェフ等)における縮小が顕著だ。このほか、IT専門職(プログラマー等)や販売・マーケティング関連職などでも相対的に大きな減少が見られる(図表4)。
図表3:保健・介護ビザの職種別内訳

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出所:Home Office 'Immigration system statistics, year ending December 2025
' (Sponsored work entry clearance visas by occupation and industry (SOC 2020))
図表4:専門技術者ビザの職種別内訳

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注:図中の職種は、2021年以降の発行数の累計による上位6職種。
出所:同上
職種別の賃金水準要件は緩和の可能性
外国人労働者の急激な減少をめぐっては、影響を懸念する声も聞かれるものの(注3)、政府は2025年5月に公表した移民政策に関する白書(注4)において、外国人労働者への依存を低め、国内労働者の能力開発等を通じて技能需要の充足に努めるとしており、これまでのところ中程度の技能レベルの職種の受け入れ等について緩和に転じる意向は示していない。
ただし、急減の大きな要因になったとみられる給与水準要件については、調整に向けた議論もある。諮問機関Migration Advisory Committee(MAC)が政府の諮問を受けて作成した報告書(注5)は、受け入れ可能な職種全体の下限として設定されている41,700ポンドについては、財政へのプラスの効果があるとの分析結果から維持を促す一方、職種別の賃金水準要件については過度に高い水準にあるとして引き下げを提言している。2024年の改定で、職種別に参照される賃金額が第25百分位から中央値に変更されたことで要件の充足が難しくなり、結果として要件を満たしやすい、より低賃金な職種の受け入れを優先することになっている可能性がある、というのが理由だ。このためMACは、参照値を第25百分位に戻すことを提言、国内労働者の賃金低下につながりかねないとの懸念については、全体の下限を適正な水準に調整することで対応が可能、との見方を示している。
注
- 2024年の引き上げでは、参照する給与水準を第25百分位(受け入れ可能な職種全体の労働者の75%がこれを超える給与水準)から中央値に変更、職種別の実勢給与額(on-going rate)についても同様の手法により引き上げが行われ、2025年の改定もこの方式が維持された。なお、年齢や職種等によっては、より低い基準額や減額の適用が可能(Home Office 'Skilled Worker visa: going rates for eligible occupation codes
'ほか)。(本文へ) - House of Commons 'Changes to legal migration rules for family and work visas in 2024
' (12 December, 2024)、'Changes to UK visa and settlement rules after the 2025 immigration white paper
' (19 February, 2026)など。(本文へ) - 例えば、Personnel Today 'Fears over vacancies as skilled worker visa numbers plummet
' (27 February 2026)、The Guardian 'Zero net migration would shrink UK economy by 3.6%, says thinktank
' (4 February 2026)(本文へ) - Home Office "Restoring Control over the Immigration System (PDF:2.27MB)
"(本文へ) - Migration Advisory Committee "Review of salary requirements
" (17 December 2025)(本文へ)
参考レート
- 1英ポンド(GBP)=212.64円(2026年3月18日現在 みずほ銀行ウェブサイト
)
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