若年層の失業増加と最低賃金の影響

カテゴリー:若年者雇用

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  • 国別労働トピック:2026年3月

若年層の失業状況の悪化を受けて、最低賃金の影響を指摘する議論が高まっている。近年の若者向け最低賃金額の大幅な引き上げと、社会保険料率の引き上げによる全般的な労務費の上昇が、若者の雇用を鈍らせているとするものだ。政府はさらに、成人向け最低賃金額の適用年齢引き下げに意欲を示していることから、若者の雇用状況に一層の悪影響を及ぼしかねないとの慎重論が広がっている。

最低賃金の大幅な引き上げが若者の失業増を招いた可能性

統計局が2月に公表した雇用統計によれば、16-24歳層の失業率はコロナ禍後の2022年中頃に記録的に低下(2022年5-7月期で9.2%)したものの、以降は上昇傾向にあり、2025年10-12月期には16.1%とコロナ禍時のピークを越えて10年来の水準に達している(16歳以上層全体では5.2%)(図表1)。また現在、16-24歳層の8人に1人(12.8%)に当たる95万7000人が無業(就労しておらず、教育訓練も受けていない、いわゆる「ニート」)の状態にあり、コロナ禍を挟んで拡大が見られる(図表2)。うち、4割強にあたる41万1000人を失業層が占めている。

図表1:年齢階層別失業率 (単位:%)
画像:図表1

注:データは3カ月間の移動平均。

出所:Office for National Statistics "Labour market overview, UK: February 2026新しいウィンドウ"

図表2:無業者数の推移 (単位:千人)
画像:図表2

出所:Office for National Statistics 'Young people not in education, employment or training (NEET), UK: February 2026新しいウィンドウ'

失業増加の一因として指摘されているのが、近年大幅な引き上げが続いてきた若者向け最低賃金だ(図表3)。従来は、主に雇用への配慮から、若者向けの最低賃金額(全国最低賃金の16-17歳層及び18-20歳層向け額)は概ね成人向けの額(全国生活賃金、21歳以上層が対象)以下の改定率で推移してきたが、コロナ禍後の雇用の好調さや、成人向け最低賃金額との水準の乖離、さらに将来的な成人向け額への統合などを理由に、2024年以降は相対的に高い改定率が維持されてきた(図表4)。また、2025年4月には国民保険(注1)の雇用主負担分の料率が15.0%に引き上げられ(1.2%増)、21歳未満層については、雇用主負担は免除されているものの、21歳以上層については労務費の増加につながったと見られる。

シンクタンクResolution Foundationは、これらの制度変更によるコスト増は、16-20歳層で5.4%、21-24歳層で3.4%との試算を示しており、特に小売業や飲食業などの若者を多く雇用する業種で求人や雇用の減少につながったと見ている(注2)。また、この間の雇用調整が整理解雇ではなく採用を控える形で行われる傾向にあったと見られることも、初めて仕事に就こうとしている若者には不利に働いた可能性があると分析している。

図表3:最低賃金額の推移 (単位:ポンド)
画像:図表3

図表4:最低賃金額の改定率の推移 (単位:%)
画像:図表4

出所:Office for National Statistics ‘Labour market overview, UK: February 2026新しいウィンドウ" (平均賃金)、'CPI ANNUAL RATE 00: ALL ITEMS 2015=100新しいウィンドウ'(消費者物価指数)

さらなる引き上げに慎重論

政府はかねてから、若者向け最低賃金の設定は差別的であるとして、成人向け額の適用年齢を18歳まで引き下げることで是正を図るとの方針を示し、諮問機関の低賃金委員会(Low Pay Commission)に検討を要請していた(注3)。低賃金委は、各種の分析やパブリック・コンサルテーションの結果などを踏まえ、20歳層は既に7割が最低賃金以上の賃金水準にあると見られることから、2027年には成人向け額を適用することを提言する一方、18-19歳層については経済状況や若者向けの政策動向等も考慮しつつ、2028年または2029年の適用とする案を示している(注4)

一方、Resolution Foundationは、若者向け最低賃金を差別的との理由で廃止することは浅慮だと断じている。とりわけ現在の経済状況下では、若年層の最低賃金額の急速な引き上げは、雇用主による若者の採用を鈍らせるだけでなく、政府の実施する若者の就労支援策への協力の熱意も削ぎかねないなど、雇用へのリスクが大きいとしており、むしろ就労促進に注力すべきとの立場を示している(注5)。また現地メディアによれば、企業や使用者団体なども、若者向け最低賃金は既に雇用に影響を及ぼしているとして、適用年齢の引き下げについては遅延や状況に応じた見直しなどを政府に求めている(注6)

参考レート

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