2026年の労働分野における制度変更

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  • 国別労働トピック:2026年3月

2026年1月1日以降、最低賃金の引上げや操業短縮手当の受給期間延長など、さまざまな制度改正が実施された。以下では、その主な内容を抜粋して紹介する。

法定最低賃金を時給13.90ユーロに引上げ

法定最低賃金は1月1日から時給13.90ユーロに引き上げられた。従前の時給12.82ユーロから8.4%の上昇となる(図表1)。この引上げは、2025年6月27日付の最低賃金委員会の提案に基づき、政府が同年11月5日に制定した第5次最低賃金調整令(MiLoV5)によるものである。

これに伴い、所得税および社会保険料の労働者負担が原則免除されるパートタイム労働の一形態である「ミニジョブ」(注1)の月収上限額も、従前の月556ユーロから月603ユーロへと引き上げられた。

図表1:最低賃金時給の引上げ推移(2015年~2027年)
画像:図表1

注:22年10月の引上げのみ、最低賃金委員会の勧告を経ずに政府主導による法案審議によって引上げられた。

出所:政府広報をもとに作成。

「市民手当」の水準据え置きと制度改正の動向

就労能力のある困窮者とその家族を対象とする基礎生活保障(公的扶助)である「市民手当(Bürgergeld)」は、1月1日以降も前年の水準に据え置かれた。標準給付額は2024年に引き上げられ、2025年および2026年は据え置きとなっている。

具体的な標準給付月額は図表2のとおりである。改定額は、物価および賃金の動向を踏まえた算定方式に基づき、毎年10月末までに連邦労働社会省が決定する。政府によれば、従来の算定方式を適用した場合、本来は給付額が減額される見込みであったが、既得権保護の観点から据え置きとされた。

図表2:市民手当の標準給付月額(2023~2026年)(単位:ユーロ)
給付区分 2023年 2024–2026年(据え置き)
成人(18歳以上) 本人 基準需要額(RBS)1 単身者、単身養育者、ひとり親の受給資格者 502 563
基準需要額(RBS)2 双方とも成人(満18歳以上)同士のパートナー(カップル)の者1人につき 451 506
同世帯において生活する者 基準需要額(RBS)3 両親と同居し、就業していない満18歳以上25歳未満の者、施設(障がい者支援施設、介護施設、社会福祉施設等)に入所している満18歳以上25歳未満の者。 402 451
未成年(18歳未満) 基準需要額(RBS)4 満14歳以上、満18歳未満 (14~17歳)の者 420 471
基準需要額(RBS)5 満6歳以上、満14歳未満(6~13歳)の者 348 390
基準需要額(RBS)6 満6歳未満(0~5歳)の者 318 357

出所:連邦政府(注2)

現政権は、市民手当(Bürgergeld)を見直し、新たな基礎保障へ移行するための「求職者向け基礎保障の再構築に関する法律案」を2025年12月17日に閣議決定した。法案は、支援と義務の均衡を見直し、就労可能な受給者に対して、より強い自立促進を図る内容となっている。

法案では、まず就職可能性を優先的に検討する「職業紹介優先」の原則を復活させるとともに、求職活動やジョブセンターとの協力義務を強化する。義務違反に対しては、職業訓練の中断や応募義務違反の場合、標準給付を最大30%、3カ月間減額し得るほか、面談欠席を繰り返した場合には、段階的手続を経て、最終的に住居費を含む給付請求権を失う可能性がある。

あわせて、現行制度の1年間の資産猶予期間(Karenzzeit)は廃止され、保有資産の上限額は年齢に応じて設定される。住居費についても、猶予期間中から一定の上限が設けられる。法案は、連邦政府の説明によれば、2026年7月1日から段階的に施行される予定である。

操業短縮手当を最長24カ月まで延長

2025年に続き、2026年も1月1日以降、操業短縮手当(Kurzarbeitergeld)の給付期間が、従来の最長12カ月から最長24カ月へと延長された。2026年12月31日までの時限措置とされている。

政府の説明によれば、本措置により、雇用主は数カ月先までの事業計画を安定的に策定でき、労働者は失業リスクから保護されるとともに、収入を維持できるとされている(注3)

年金受給開始年齢の引上げ

2012年から段階的に進められている年金受給開始年齢の引上げ(65歳から67歳へ)は、1月1日以降も引き続き実施され、対象年齢がさらに引き上げられた。1960年生まれの被保険者の場合、年金受給開始年齢は66歳4カ月となる。2031年には、1964年以降に生まれた被保険者について、標準的な受給開始年齢が67歳に設定される予定である。

なお、法定年金の保険料率は、2026年も前年と同様、18.6%(労働者9.3%、使用者9.3%)に据え置かれた。

EU賃金透明化指令の国内法整備

2023年5月に成立したEUの男女間賃金格差透明化指令(注4)は、2026年6月7日までに加盟国に同指令を国内法化することを求めている。そのため、独立専門家委員会(Bürokratiearme Umsetzung der Entgelttransparenzrichtlinie)は、2025年10月に最終報告書(注5)を公表した。

同報告書は、主な勧告として、①目標賃金ではなく実際の賃金を参照すること、②雇用主に対し、是正措置の実施要件が満たされているかどうかを判断する義務を課すこと、③欧州司法裁判所の既存判例に基づき、不平等な取扱いを正当化し得る事由の明確なリストを導入すること――などを挙げている。

立法者がこれら複数の勧告のうちどれを採用するかは、現時点(3月1日)では未確定だが、法案は2026年第1四半期に連邦議会に提出される見込みである。

参考資料

参考レート

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