外国人療養保護士養成のための大学課程を新設

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  • 国別労働トピック:2025年9月

法務部出入国・外国人政策本部は2025年8月、「外国人療養保護士養成大学」として、全国13の広域自治体から24校を選定したことを発表し、2026年から2年間にわたり試験事業を実施する予定である。本制度は介護人材の不足解消を目的として、地方大学に外国人留学生向けの療養保護士養成課程を新設し、留学生の誘致から資格取得、就労までを一貫して支援する仕組みである。以下で主な内容を紹介する。

療養保護士とは

療養保護士とは、認知症等の老人性疾患のために、自立した日常生活を送ることが難しい高齢者に対して、身体介助や家事支援などのサービスを提供する専門職である。

療養保護士になるためには、所定の教育課程を修了し、資格試験に合格して国家資格を取得する必要がある。教育課程は、座学126時間、実技114時間、現場実習80時間の計320時間で構成されている(注1)。試験は筆記と実技で行われ、それぞれ6割以上の得点が合格条件となる。

2024年より在留資格「特定活動」の対象職種に指定

韓国は2025年から超高齢社会に突入し、介護サービスへの需要が急増している。一方、療養保護士の供給は高齢化等により、深刻な人材不足が課題となっている。療養保護士の平均年齢は2023年時点で61.7歳に達しており、2027年には約7.9万人の人材が不足すると予測されている。こうした状況を受けて、外国人専門人材の受入れ拡大が議論されてきた。

現在、療養保護士の教育課程に申請できる外国人の在留資格は、「居住(F-2)」、「在外同胞(F-4)」、「結婚移民(F-6)」、「永住(F-5)」、「訪問就業(H-2)」、「留学(D-2)」、「求職(D-10)」に限られている。

このうち、「留学(D-2)」及び「求職(D-10)」(韓国国内の大学を卒業した者に限る)は2024年に新たに追加された(注2)。さらに、法務部は同年6月に「特定活動(E-7)」の職種に療養保護士を新たに指定し、年間400人を上限とする特定活動の在留資格付与事業を試験的に開始した。「特定活動(E-7)」は、法務部長官が特別に定めた職種に限り、外国人の就職を許容する在留資格である。

これにより、「留学(D-2)」及び「求職(D-10)」のビザ保有者が、療養保護士の資格を取得した場合には、「特定活動(E-7)」への在留資格変更が可能となった。「特定活動(E-7)」の在留期間は最長3年であるが、雇用契約が延長される場合には、在留資格の延長も可能である。

すなわち、留学生が療養保護士として韓国で働く場合は、①韓国国内の専門学士(2~3年制大学)以上の学位を所持すること、②療養保護士の国家資格を保持していること、③韓国語能力試験3級以上(中級程度)、または社会統合プログラムの3級以上を履修もしくは同プログラムの事前評価で61点以上を獲得、のいづれかの条件を満たす必要がある(注3)

なお、外国人療養保護士の雇用は韓国人の被用者数の20%以内に制限されており、賃金は韓国人と同等に最低賃金以上を支給しなければならない。

韓国系外国人の活動期間

韓国国内で労働力を調達できない企業を対象に、非熟練労働者の受入れを認める制度として雇用許可制がある。この制度は、韓国政府と了解覚書(MOU)を締結した送り出し国からの労働者を対象とする「一般雇用許可制」と、韓国系外国人を対象とする「特例雇用許可制」に大別される。高齢者向け介護分野では、「一般雇用許可制」による外国人労働者の就業は認められていない(注4)

「特例雇用許可制」に基づく在留資格である「訪問就業(H-2)」の労働者は介護分野において就業することができ、療養保護士の資格取得も可能である(注5)

2024年からは、「訪問就業(H-2)」で入国した労働者が療養保護士の資格を取得した場合、在留資格を「在外同胞(F-4)」に切替えることが可能となった。訪問就業(H-2)は入国後の滞在期間に制限(4年10か月)があるのに対し、在外同胞(F-4)は回数制限なく延長が可能なため、既存労働者の長期的な定着や新規人材の参入が期待されている。

地域の大学に養成課程を新設

法務部と保健福祉部は、2026年から2年間、「外国人療養保護士養成大学制度」を試験事業として実施する予定である。この制度は、外国人療養保護士の育成を目的に、地方大学に学位課程を新設し、留学生の誘致から資格取得、就労までを一貫して支援・管理することで、地方における介護人材の不足解消を図るものである。学位課程は、法務部及び保健福祉部が策定するガイドラインに基づき構成され、韓国語教育もカリキュラムに含まれる。対象大学には、全国13の広域自治体から24校が選定されており、これらの大学は2026年度第1学期から養成学位課程の運営が可能となる。

選定された大学にとってのメリットは、外国人のための「初期適応プログラム」または「社会統合プログラム大学連携課程」の運営を希望する場合、優先的に指定を受けることができる(注6)

また、留学生に対しては、ビザ発給に必要な財政要件を緩和する方針も示されている。

法務部と保健福祉部は、広域地方自治体と連携しながら、定期的に制度の点検及び評価を行い、正式事業への転換可否を判断するとしている。

参考資料

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