非労働力層の就労支援策

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2024年9月

コロナ禍以降に増加した非労働力人口が、経済活動の再開後も減少しない状況が続いている。7月に成立した新政権は、非労働力層の就労促進策として、公的医療サービスの改善のほか、地方自治体の主導による包括的な就労支援や、若年層に対する就労機会の保証などを実施する方針を示している。

長期傷病を理由とする非労働力層が増加

統計局が8月に公表した雇用関連統計によれば、2024年4-6月期の就業者数(16-64歳層)は3161万人で、一時期を除きコロナ禍前(2019年12月-2020年2月期で3173万人)を下回る水準で推移している(図表1)。失業者数は140万人、失業率は4.2%で、これもコロナ禍前(137万人、4.1%)より若干高い状況にある。一方、非労働力人口は941万人で、コロナ禍前の水準(855万人)から顕著に増加しており、結果として労働力率(労働力人口に占める就業者及び失業者の割合)は79.5%から77.9%に低下している(注1)

図表1:就業者数、失業者数、非労働力人口、労働力率の変化
(16-64歳、2019年12月-2020年2月期からの累積、千人・%)

画像:図表1
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注:各指標は3カ月間の移動平均データに基づく。

出所:Office for National StatisticsLabour market overview, UK: August 2024新しいウィンドウ’ (A05 SA))

増加した非労働力人口の大半は、16-24歳層(47.5%)および50-64歳層(40.6%)によるものだ(注2)。また理由別に見ると、ほとんどを長期傷病と就学・訓練を理由とする層が占めている(図表2)(注3)。このうち、就学・訓練層の増分の大半は若年層と見られ(注4)、変動しつつ増加する傾向が窺える。一方、長期傷病による非労働力人口の増分は、主に50-64歳の高齢層と考えられ、とりわけ2022年以降に大きく増加しているが、その9割以上(93%)が「就労を希望しない」(does not want a job)層だ。

図表2:理由別非労働力人口の変化(16-64歳、2019年12月-2020年2月期からの累積、千人)
画像:図表2
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注:「その他」には、求職の応募後の結果待ち、求職活動の開始前、仕事が必要ない・求めていない、その他分類できない理由、理由回答なし、を含む。

出所:同上 (INAC01 SA)

就労復帰の支援体制を強化

7月に成立した労働党政権が、非労働力人口の増加への対策の一つに掲げるのは、公的医療サービス(NHS)の改善だ。前政権下で悪化した受診待ち患者数(2024年6月時点で762万人、2010年以降で約500万人増(いずれもイングランド))(注5)の削減を通じて、健康問題を理由とする非労働力層の就労への復帰を図るとしている(注6)

また就労支援策としては、障害者や若者の就労促進を目的に掲げるBack to Work Plan(注7)が打ち出されている。施策の柱の一つは、就職・就業継続支援のための新たな雇用・キャリアサービスの実施で、現在イングランドで実施されているキャリアサービス(National Career Service)とジョブセンタープラス(就労支援、給付支給等を担う公的職業紹介機関)の統合により、支援強化を図るものだ。また、地方主導の支援策のプランとして、障害者や健康に問題を抱える層に対して、就労から健康、技能までの総合的な支援を通じて、就職や就労継続の促進を図るとしている。さらに、18-21歳層を対象とするYouth Guaranteeでは、訓練やアプレンティスシップの機会、または求職支援を提供し、無業状態に陥ることを防ぐとしている(注8)

雇用年金相は、一連の施策を通じて就業率を80%に引き上げることを目標に掲げており、現在非労働力化している就労困難者や若者に就労を促したい、というのが基本的な立場だ。これには、前政権から引き継いだ逼迫する財政の再建策の一環として、社会保障給付支出の削減が想定されているという背景もある(注9)。ただし、受給者を怠惰等と非難して放置しつつ給付削減を図る前政権の手法を同相は強く批判、就労復帰を支援する施策の修復が必要であるとして、ジョブセンタープラスを受給者の監視から解放し、公的医療サービスとの連携により就労困難者の支援を図るなどの大幅な改革を行う意向を示している(注10)。一連の施策の詳細は、白書としての公表が予告されているほか、実施に際しては、新設される諮問組織(Labour Market Advisory Board)により定期的に提言が行われる見込みだ。

参考資料

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