少子化・高齢化対策や中小企業支援プログラム統合などを提言
 ―OECD経済調査:韓国2024

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2024年8月

経済協力開発機構(OECD)は7月9日、「OECD経済調査:韓国2024」を発表した。それによると、韓国経済は、特に半導体などの好調な輸出に支えられ回復している。失業率は低く、雇用は高いレベルで安定しており、GDP成長率は2024年に2.6%、2025年に2.2%の増加を予想している。個人消費はやや低迷しているものの、今後持ち直していくと分析する。また、韓国が抱える課題として、①世界で最も低い水準の出生率の引き上げ、②急速に進む高齢化への対応、③1,600以上ある中小企業支援プログラムの整理・統合――などを指摘している。

世界最低レベルの出生率の引き上げが急務

韓国の合計特殊出生率は、2023年現在0.7に低下し、日本(1.20)を下回り、OECD諸国で最も低い(図1)。今のままでは、60年後に人口が半減すると予想されており、出生率の引き上げは韓国政府の最優先課題のひとつとなっている。

図1:各国の合計特殊出生率(2023年もしくは最新)
画像:図1

出所:OECD(2024)

出生率を引き上げ、労働力の減少に対応するためには、ワークライフバランスを改善するとともに、ジェンダー格差を縮小させることが鍵になる。韓国の男女間賃金格差はOECD諸国の中で最も大きい。OECDは、働く親を支援するため、保育制度をニーズに合わせて調整し、育児休暇の適用対象を拡大することが必要だと指摘する。職場での男女差別に対する制裁強化や、労働監督官のフォローアップ権限を高めることも必要だとしている。

若者の経済状況は苦しく、結婚や家族形成に負の影響を与えている。OECDは、雇用保護を効率化させるとともに、社会保障を強化し、労働市場に対応することが有効な手段となると提言する。また、高額な住居費や家庭教師費用の軽減は、親の経済力を高めることになるとしている。

急速に進む高齢化に対応した労働市場を

韓国はまた、高齢化という避けられない課題に対応しなければならない。20-64歳人口に対する65歳以上人口の比率は、2023年現在、30%弱だが、2082年には110%を超え、OECD諸国の中でも突出して高くなると予想されている(図2)。

図2:各国別にみた高齢化の状況(65歳以上人口/20-64歳人口)
画像:図2
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出所:OECD(2024)

年功序列による賃金制度は、生産性と連動せず、高齢者のキャリアを短くしてしまう可能性が高い。法定定年より低い企業独自の定年を設けたり、定年前に退職を奨励するような慣行は、高齢者を働く場から追いやってしまいかねない。現在60歳となっている法定定年年齢を引き上げ、リスキリングでスキルアップの機会を提供するなどして、高齢者の継続就労を推奨することが大切だとしている。

また、移民を増やし、外国人労働者を有効に活用する潜在的な可能性はかなり大きいとして、移民政策・制度による労働市場の改善にも言及している。

1,600超の中小企業支援プログラムを整備・統合し生産性向上を

政府は中小企業補助金を多く支出しており、その額は増加している。2023年には、中小企業支援に計1,646のプログラムを実施した。そのうち530は18の省庁と中央政府機関によって、1,116は17の地方政府によって運営されている(図3)。

図3:国・地方政府による中小企業支援プログラム数
画像:図3

出所:OECD(2024)

中小企業は、公共調達において、さまざまな特別待遇や、減税、規制の規模制限、その他の福利厚生を享受している。こうしたサポートや保護を統合し効率化することで、全体的な生産性低下のリスクを減らすことが出来る。OECDは、「韓国の中小企業の雇用割合はOECD諸国で最も高いが、中小企業補助金に対する政府支出が多いにもかかわらず、生産性は大企業の約3分の1となっている」と、公正な競争のため、規制上の障害を取り除く改革が必要だとしている。

また、気候変動政策についても触れている。韓国はOECD諸国の中でも最もエネルギー集約型の国のひとつであり、国際公約として定められた2050年の脱炭素の実現に向け、石油化学、鉄鋼など特に脱炭素化が求められるセクターで、更なる排出量を制限しなければならないと指摘する。

参考資料

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