男女賃金格差が縮小、職場での差別は依然として存在

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大手人材紹介会社の猟聘(Liepin)は3月に「2024年ジェンダー人材データ観察リポート」を発表した。2019-23年の5年間で男女の賃金格差が縮小傾向にあること、電子/半導体/集積回路(IC)関係などへの就職を希望する女性が増加することなどを示している。また、別の大手人材紹介会社「智聯招聘(Zhilian Zhaopin)」の調査によると、結婚や育児といった家庭の要素が、女性の昇進に負の影響を与えている。

男女の賃金格差

猟聘の調査によると、男女の賃金格差は、5年間連続で縮小し(図1)、2023年の男性の平均年収は女性よりも26.2%高い水準にある。2019年から2023年までの期間における男女の平均年収を比較すると、その賃金格差は徐々に縮小する傾向にある。2019年には男性の平均年収が女性よりも30.9%高かったが、2023年に26.2%にまで縮小した。2024年の1~2月の2カ月間では、男性の平均年収が24.22万元に対し、女性は19.21万元であり、その差は26.06%となっている。

図1:2019-23年の男女の平均年収と格差
画像:図1

出所:猟聘「2024年ジェンダー人材データ観察リポート(2024女性人才数据洞察报告)」

年収20万元以上の者の割合は過去5年間、男女とも増加している。男性は2019年の25.49%から2023年に29.30%へと3.81ポイント増加。女性はこの間、16.74%から20.60%へと3.86ポイント増加し、男性とほぼ同等の伸びを記録している。また、2024年の1月から2月において、年収20万元以上の女性人材の割合が最も多い都市のTOP20を見ると、北京、上海、深圳、杭州、広州の各都市でそれぞれ30%を超えている。北京は52.53%、上海は51.46%、深圳は41.88%、杭州は34.68%、広州は30.79%の割合を示している。

年収別による女性の割合を見ると、上海市では年収20万~30万元の女性の割合が最も高く、21.31%である。一方、30万~40万元、40万~50万元、50万元以上の女性の割合では、いずれも北京が全国をリードし、上海、深圳、杭州が2位から4位にランクインしている。

業種別にみると、「IT/インターネット/ゲーム」「不動産/建設」「消費財」「医療・健康」「プロフェッショナルサービス」などの5つの業界で、男女の賃金格差が5年連続で縮小している。格差の縮小幅が最も顕著なのは「プロフェッショナルサービス業」で、男女の給与格差は2019年の32.01%から2023年の21.84%に減少した。なお、「インターネット」の給与格差の変動はわずかで、2019年の27.63%から2023年の22.65%へのわずかな減少にとどまった。ただし総じて、教育水準の向上と、高度な専門分野への進出により、女性は職場での経験を深め、仕事上のスキルを向上させている。

求職の傾向

2019-23年の過去5年間で、女性の求職応募割合が最も顕著に上昇した業界は、「電子/半導体/集積回路(IC)」の2.91%である(図2)。2019年の2.32%から2023年の2.87%(0.55ポイント)へと上昇した。「卸売/小売業」(2019年から2023年の間に20.5ポイント上昇)、「機械/設備」および「生物技術」(ともに同0.48ポイント上昇)が続く。「新エネルギー自動車」および「製薬」も、それぞれ0.41ポイント、0.40ポイント上昇した。

図2:2019-2023年の女性の職業別求職傾向
画像:図2

出所:猟聘「2024年のジェンダー人材データ観察リポート(2024女性人才数据洞察报告)」

求職者が関心を持つ企業の種類や業界は、男女で異なる。男性は主に国内企業で、特に自動車メーカーに関心を持つ。国内の主要自動車メーカー(比亜迪(BYD)、理想汽車、蔚来汽車(NIO)、吉利汽車、小鵬汽車)などの新エネルギー自動車がとくに注目を集めている。一方、女性は外資企業に関心を持っている。女性は仕事と生活のバランスを追求し、外資企業がその点でより好まれている。さらに、女性は勤務先の福利厚生への関心がより高い。

また、AIGC(人工知能生成コンテンツ)分野の企業が継続的に注目を集めている。過去1年間(2023年3月~24年2月)の同分野への女性の応募数は前年比で約200%(190.49%)も増加した。2023にChatGPTが国内外でブームを巻き起こして以来、その中核技術であるAIGCの産業が成功を収め、さまざまな人々や分野に影響を与えている。2024年初めにはSora(OpenAI社によるテキストからの動画生成ツール)が登場し、AIGCの人気をさらに高めた。こうした新興分野において、女性の人材は積極的に取り組む姿勢を示している。

昇進への障害

別の大手人材紹介サイトである「智聯招聘」は2024年3月に、キャリア発展、職場のジェンダー平等、結婚育児に関する「2024中国女性職場現状調査報告 (2024中国女性职场现状调查报告)」を発表した。それによると、今後1年以内に昇進の可能性が高いと思っている女性は21.5%(「必ず昇進する」3.0%、「昇進可能性が比較的に高い」18.5%)と3年連続で上昇している。

一方、昇進の最大の障害については、「会社の提供する昇進チャンスが限られる」が男女とも最も多い(男性46.7%、女性44.7%)(図3)。その他の要因としては、「結婚や育児」が女性13%に対して男性2.9%と差が大きい。「家族の世話」も女性が6.9%で男性の4.7%よりやや高い。このように、結婚や育児といった家庭の要因が、女性の昇進に負の影響を与えることが示されている。

図3:昇進への障害となる原因
画像:図3
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出所:智聯招聘(Zhilian Zhaopin)「2024中国女性職場現状調査報告(2024中国女性职场现状调查报告)」

女性の半数以上が性差別を経験

智聯招聘の調査では、職場での性差別に関するデータも取り上げている。それによると、女性の54%が職場で差別を受けたとする一方、男性はわずか6.6%にとどまっている(図4)。女性の48.8%が「求職中に結婚や育児に関する質問を受けた」と回答(男性は32.1%)。さらに、33.1%の女性が「性別による昇進や昇給の不公平を経験した」と述べたのに対して、男性はわずか9.2%だった。

図4:職場における男女差別で不公平を受ける理由
画像:図4

出所:智聯招聘 (Zhilian Zhaopin)「2024中国女性職場現状調査報告(2024中国女性职场现状调查报告)」

さらに、47.6%の女性が「飲み会での不快な状況」に遭遇した。一方、同様の問題を経験した男性の割合はわずか4%だった。女性の職場における不快感は、他の場面でも顕著に現れている。例えば、41.9%の女性が生理期の身体的不快感にもかかわらず仕事を続けたことがある。また、32.6%の女性が「性別によって上司に期待されることがある」と回答した。

なお、女性の職場復帰に関するデータによると、既婚で子どもがいる女性のうち、80%以上が専業主婦として子育てを経験した。このうち、19.7%が「自己実現」のため、19%が「家計負担の軽減」のため、16.2%が「仕事が好きだ」という理由で職場に復帰している。

参考資料

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