父親の育休受給率、43.7%
 ―前年比0.2ポイント増

カテゴリー:統計勤労者生活・意識

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  • 国別労働トピック:2023年12月

連邦統計局が2023年に発表した資料によると、2020年の父親の育休手当(両親手当)受給率は、連邦レベルで43.7%であった。前年より0.2ポイント上昇し、過去最高を記録した(注1)

受給率の地域による差―33.8%~54.7%

父親の両親手当受給率は地域による差が大きい。州別に見ると、最も高かったのはザクセン州の54.7%(前年比0.1ポイント減)で、2人に1人以上が受給していた。他方、最も低かったのはザールラント州の33.8%で、3人に1人の受給に留まったが、前年比では1.6ポイント増加していた(図表1)。

図表1:父親の両親手当受給率の推移(地域別、2008年~2020年) (単位:%)
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
バーデン=ヴュルテンベルク 20.6 24.6 27.4 30.5 33.4 36.7 39.2 40.9 42.2 43.7 45.4 46.7 47.3
バイエルン 27.4 30.7 33.5 36.5 38.6 40.5 42.2 44.8 46.5 47.7 49.3 50.7 50.9
ベルリン 27.5 30.7 32.2 33.7 35.5 37.9 39.7 40.9 42.9 43.8 45.2 46.1 45.6
ブランデンブルク 25.5 27.3 28.1 30.2 32.4 34.8 36.6 40.0 42.5 44.9 45.8 48.4 48.2
ブレーメン 18.3 19.9 19.3 21.7 22.9 25.8 27.1 28.1 31.0 33.4 35.0 36.3 33.9
ハンブルク 22.9 27.4 28.5 31.1 33.7 36.2 38.0 40.2 41.0 42.5 44.8 45.9 44.9
ヘッセン 20.3 23.3 25.3 27.2 29.4 30.8 33.1 34.4 35.8 37.3 38.5 38.9 39.3
メクレンブルク=フォアポンメルン 20.5 23.3 23.5 21.3 25.3 26.5 28.0 31.2 35.2 36.5 38.4 39.9 41.3
ニーダーザクセン 19.5 21.6 23.2 25.3 26.9 29.3 31.5 34.5 36.7 38.4 40.6 42.9 42.8
ノルトライン=ヴェストファーレン 16.8 18.5 19.7 20.9 22.0 25.6 27.5 29.4 31.7 33.4 35.3 36.7 37.3
ラインラント=プファルツ州 17.5 20.1 21.7 23.6 25.0 27.3 30.3 31.9 33.5 35.0 37.0 39.4 39.4
ザールラント 12.9 14.6 16.4 18.8 19.1 21.0 24.1 25.3 28.5 28.4 29.2 32.2 33.8
ザクセン 26.9 31.0 33.0 36.0 38.5 41.1 44.7 47.5 49.1 51.9 53.5 54.8 54.7
ザクセン=アンハルト 17.6 17.9 20.1 22.2 23.2 25.9 28.6 31.7 35.1 36.8 38.8 40.1 40.5
シュレースヴィヒ=ホルシュタイン 18.4 19.9 22.0 24.0 24.7 27.0 29.4 30.8 33.4 34.6 36.5 37.9 37.8
テューリンゲン 25.0 28.4 29.4 32.1 34.6 37.0 40.6 43.3 45.2 47.6 49.1 50.2 49.6
ドイツ全土 21.2 24.0 25.9 28.0 30.0 32.6 34.8 36.9 38.8 40.4 42.1 43.5 43.7

出所:Statistisches Bundesamt(2023新しいウィンドウ).

「両親手当」、「両親手当プラス」の導入

ドイツは2007年に「両親手当(注2)」を導入し、それ以前は3%に過ぎなかった父親の両親手当受給率が、2008年には21.2%に上昇した。その後も伸び続け、今回は43.7%(2020年)に達した。

「両親手当」は、片方の親だけが受給する場合は最大12カ月間支給される。もう一方の親も受給する場合はさらに2カ月延長され、最大14カ月間支給される。追加の2カ月分は「パートナー月」と呼ばれ、もう1人の親が育児休業を取得しなければ受給権は消滅してしまう。ドイツでは、この受給期間を最大の14カ月間にしようとして「パートナー月」の2カ月だけ父親が育児休業を取得して両親手当を受給するケースが多い。

2015年には、制度の柔軟性をさらに高めた「両親手当プラス」が導入された。従来は、両親手当受給期間中に早期に職場復帰をして時短勤務をした場合、そこで得た収入の分だけ両親手当の受給額が減る仕組みだった。「両親手当プラス」は、時短勤務で得た収入を減らすことなく手当を受給できる仕組みを整え、早期の復職を希望する親を支援している。新制度ではパートナー月を含めて受給月額を半額にすると最長28カ月まで受給期間を延長できる。さらに、母親と父親双方の育児と仕事への関与を促すため、両親が同時に4カ月間、週24~32時間の幅で働くと、パートナーシップボーナスとしてさらに4カ月が追加される。

2016年生まれの子から手当受給率の算出方法を変更

連邦統計局によると、親の育休取得率(両親手当受給率)の算出方法は、2016年生まれの子から算出方法を変更している。

両親手当の導入以降、父親の手当受給率の上昇は、常に注目の的となっていた。他方、母親の手当受給率は、2014年に生まれた子供までは96%前後で安定的に推移していたが、それが2015年生まれで初めて95%に下がり、2016年生まれではさらに93%まで下落した。さらに、この2年間の出生年における父親の受給率の上昇は、予想よりもかなり弱いものだった。

同時期のドイツ社会の大きな変化としては、2015年前後に大量の移民や難民がドイツに入国し、彼らの間で出生数が急増したことが挙げられる。出生統計には、両親の法的な在留資格は記録されておらず、出生統計上は、両親手当を受給できない人々の間で出生が急増したため、従来の計算方法に歪みが生じていることが明らかになった。

それまでは対象期間に生まれた子供全体に占める母親または父親が両親手当を受けている子供の割合を算出するために、出生統計と両親統計の両方のデータが利用されてきた。しかし、2014年や2015年の現象について、統計手法や算出方法の検討を重ねた結果、新しい算出方法では、出生統計を参考値として用いず、該当する出生期間に生まれたすべての子どもではなく、実際に親が両親手当の支給対象になる子どものみを分母として、両親統計のみを活用することとなった。両親統計では、対象となる子供各人に識別番号が付されており、ここから、この子どものために両親手当を受給した人が1人以上いるかどうか、また多胎児かどうかを判断することができる、と連邦統計局は説明している。

なお、過去の算出方法と新しい算出方法による数値の差は、図表2の通りである。特に、母親の受給率が異なることがわかる。

図表2:父親の受給率の相違 (単位:%)
画像:図表2

図表3:母親の受給率の相違 (単位:%)
画像:図表3

図表2-3出所:Statistisches Bundesamt(2020新しいウィンドウ).

参考資料

参考レート

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