2024年の新卒者の就職支援を強化

カテゴリー:人材育成・職業能力開発若年者雇用

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  • 国別労働トピック:2023年12月

教育部は12月、来年の新規学卒者に対する26項目の就職支援措置(注1)を発表した。景気の低迷を受けて若者の失業が悪化する中で、2024年に卒業する学生の就職や起業を後押しし、就職活動に関する学校の責任を強めるほか、企業を招いて校内で求人活動を展開することなどを盛り込んでいる。

24年の新卒者数は過去最多の見通し

教育部と人力資源社会保障部は12月5日に開催した「2024年の大学新卒者の就職と起業」に関する会議において、2024年の大卒者が過去最多の1,179万人(前年比21万人増)に達するとの見通しを示した。中国では2022年に初めて1,000万人の大台を超えて、学卒者が1,076万人に達した。その後、2023年には1,158万人と再び過去最多を記録していた。

この会議では、各地の大学等に対し、学生の就職を促進するために、様々な施策を迅速に実施することが改めて提唱された。

かつてない厳しい就職環境

中国では、景気減速の影響などにより、企業の採用意欲が落ち込み、若年者の失業率が大幅に上昇している。国家統計局によると、若年層(16-24歳)の失業率は、卒業シーズンに入った今年4月には20%台を突破して20.4%となり、5月に20.8%、6月に21.3%となり、統計を遡ることができる2018年1月以降で最も高かった(図1)。その後、国家統計局は「労働力調査統計のさらなる改善と最適化が必要だ」と説明した上で、7月分から年齢別の失業率の公表を停止している。

図1:失業率の推移(2018~2023年)
画像:図1

出所:国家統計局

なお、現在も企業の採用意欲は盛り上がらず、求人の減少が相次いでいる。

景気の低迷に追加して、2021年以降に政府が行った新たな規制が、家庭教師(塾)、不動産、オンラインプラットフォーム分野にマイナスの影響を与え、リストラが続出し、特に若い従業員や高学歴者が深刻な打撃を受けたことが指摘されている。このような状況下で、新規学卒者数が年々増加し、若者の就職環境はかつてないほど厳しい状況になっている。

26項目の就職支援措置

教育部が各地の大学等に対して通知した26項目の就職支援措置の主な概要は以下の通りである。

各地域の大学は「大学学院長などによる企業訪問・就業促進特別プロジェクト」を継続的に進める。学科ごとの特性に応じて企業との関わりを強化し、多数の良質な就職口を創出することが求められている。

現地の報道(注2)によると、教育部は2022年に、初の「全国の大学学院長などによる企業訪問と雇用促進(注3)」という就職支援プロジェクトを立ち上げ、地域の平均水準を下回る就職実績を持つ大学を重点対象として、幅広い就職口や職種を開拓している。プロジェクト開始以降、2023年5月3日時点で、2,415校の大学が参加し、学長らが17.1万社の雇用先を訪れ、新たに開拓された就職先は253.1万件に達している。

さらに大学には、企業の人事担当者を校内に招聘する「企業のキャンパス招聘」を開催し、積極的に学生の就職活動を支援することが求められている。また、各学部にも小規模で専門的なキャンパス招聘の開催が求められている。

各地の大学はこのほか、就職サービスのプラットフォームである「24365(24時間365日)連携就職支援サービス(注4)」を積極的に導入・普及する必要がある。同サービスは、民間の人材紹介企業である智联招聘、BOSS直聘等の12社が提携し、オンラインで大卒者の履歴、就職意向に合わせた求人情報を提供している。このように学生の就職観を支援し、インターネットを活用した指導や専門家・企業による早期の就職を支援し、良質な雇用機会を創出する。同時に、地域のニーズを把握し、地域別の大規模な採用イベントを開催して、人材需要に的確に対応する。さらに、国が支援する産業に焦点を当てて、学校と産業を連携させ、関連産業の雇用促進を図る。

各地域政府も大学卒業生の採用を積極的に拡大・支援する。学校は、党政府機関や公共団体、国有企業などの関係機関と協力し、採用試験を早期に行い、学生が希望先に就職できるよう十分な時間を確保する。また、基層就職(注5)プロジェクトを支援し、基層就職で派遣する地域の基層医療衛生、介護サービス、ソーシャルワーク、司法補助等の雇用ポジションを拡大し、就職先を拡大する。「都市・農村コミュニティ特別計画」や「大学生村医師特別計画」などを実施することが求められている。このように、さらなる地方の優遇政策を打ち出し、多くの大卒者を中西部、東北地域、生活困難な辺境地域などに引き付け、同時に、大学生の軍への就職についても積極的に支援する(注6)

また、貧困家庭や生活保護家庭、ゼロ就職家庭、障がい者などの雇用に困難を抱える卒業生のグループに対する支援も重視する。就職ガイダンスや就職口の紹介、トレーニング、実務体験などの個別的かつ優先的なサポートを行うべきだとしている。

参考文献

  • 中国政府網、中国国家統計局、中国教育部、新華社

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