2022年最低賃金改定の動き

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2022年6月

2022年に入り、最低賃金の引き上げが相次いでいる。6月現在、河南省をはじめ、福建省、湖南省、重慶市、四川省、五つの省・地域で最低賃金が引き上げられた。

最低賃金の引き上げ状況

改定の地域別状況は、河南省が2018年10月1日以来、3年2カ月ぶりに1900元から2000元へ5.3%上げた。湖南省は、2年5カ月ぶりに1700元から1930元に、13.5%引き上げている。また、重慶市、四川省の引き上げ率は、それぞれ16.7%増と18.0%増の2100元と大幅な引き上げを行った。

新型コロナウィルス感染拡大の影響で、2020年に最低賃金引上げを行った地域は、わずか三地域であつたが、2021年は「共同富裕」の指導方針の下、最低賃金の引き上げの動きが活発化し、北京市、上海市、広東省、天津市など22の地域(省・直轄市・自治区)が改定を行った。

全国で最低賃金の最も高い省・地域は上海市で2590元、次いで深セン市2360元、北京市2320元、広東省2300元の順となっている。

2021年1月1日から2022年4月1日までの改定で、最低賃金が2000元を超えた省・地域は、河南省をはじめ、上海市や北京市、広東省、深セン市、天津市、江蘇省、浙江省、湖北省、山東省、福建省、重慶市、四川省であった。

表1:最低賃金の引き上げの状況
地域 最低賃金額
(前回、元/月)
前回の実施日 最低賃金額
(変更後、元/月)
最新の実施日 引上げ率
北京 2,200 2019年7月1日 2,320 2021年8月1日 5.50%
天津 2,050 2017年7月1日 2,180 2021年7月1日 6.30%
河北 1,650 2016年7月1日 1,900 2019年11月1日 15.20%
山西 1,700 2017年10月1日 1,880 2021年10月1日 10.60%
内モンゴル 1,760 2017年8月1日 1,980 2021年12月1日 12.50%
遼寧 1,810 2019年11月1日 1,910 2021年11月1日 5.50%
吉林 1,780 2017年10月1日 1,880 2021年12月1日 5.60%
黒龍江 1,680 2017年10月1日 1,860 2021年4月1日 10.70%
上海 2,480 2019年4月1日 2,590 2021年7月1日 4.40%
江蘇 2,020 2018年8月1日 2,280 2021年8月1日 12.90%
浙江 2,010 2017年12月1日 2,280 2021年8月1日 13.40%
安徽 1,550 2018年11月1日 1,650 2021年12月3日 6.50%
福建 1,800 2020年1月1日 2,030 2022年4月1日 12.80%
江西 1,680 2018年1月1日 1,850 2021年4月1日 10.10%
山東 1,910 2018年6月1日 2,100 2021年10月1日 9.90%
河南 1,900 2018年10月1日 2,000 2022年1月1日 5.30%
湖北 1,750 2017年11月1日 2,010 2021年9月1日 14.90%
湖南 1,700 2019年10月1日 1,930 2022年4月1日 13.50%
広東 2,100 2018年7月1日 2,300 2021年12月1日 9.50%
深セン 2,200 2018年7月1日 2,360 2021年12月1日 7.30%
広西 1,680 2018年2月1日 1,810 2020年3月1日 7.70%
海南 1,670 2018年12月1日 1,830 2021年12月1日 9.60%
重慶 1,800 2019年1月1日 2,100 2022年4月1日 16.70%
四川 1,780 2018年7月1日 2,100 2022年4月1日 18.00%
貴州 1,680 2017年7月1日 1,790 2019年12月1日 6.50%
雲南 1,570 2015年9月1日 1,670 2018年5月1日 6.40%
チベット 1,650 2018年1月1日 1,850 2021年7月1日 12.10%
陝西 1,800 2019年5月1日 1,950 2021年5月1日 8.30%
甘粛 1,620 2017年6月1日 1,820 2021年9月1日 12.30%
青海 1,500 2017年5月1日 1,700 2020年1月1日 13.30%
寧夏 1,660 2017年10月1日 1,950 2021年9月1日 17.50%
新疆 1,820 2018年1月1日 1,900 2021年4月1日 4.40%

注:各・省地域の最低賃金は、都市部とそれ以外で4つのランクに分かれるが、本表は最も高いランクの金額を表記している。

中国の最低賃金制度の特徴

ところで、最低賃金に社会保険料や住宅積立金の個人負担部分が含まれているかどうかは、省・地域により異なっている。

最低賃金に、社会保険料および住宅積立金の個人負担部分が含まれていない省・地域は、北京市、上海市、安徽省などである。これらの省・地域に所在する企業は、最低賃金による給与の支払いにあたり、労働者が負担すべき社会保険料および住宅積立金を別途納付しなければならない。また、江蘇省は、最低賃金に住宅積立金最低限度額の個人負担部分が含まれていないため、企業は労働者が負担すべき住宅積立金の最低限度額を別途納付する必要がある。

他方で、最低賃金に、社会保険料および住宅積立金の個人負担部分が含まれている省・地域は、天津市、四川省、重慶市、山東省、浙江省、河北省、内モンゴル、貴州省、雲南省、新疆などである。

広西チワン族自治区、山西省、福建省では、全日制就業者の最低賃金に社会保険料と住宅積立金の個人負担部分が含まれている一方で、非全日制就業者については、社会保険料の企業と個人負担分だけが含まれ、住宅積立金は含まれていない。非全日制就業者の場合、給与はおおよそ時給によるが、労働者が給与の一定割合を社会保険の「個人養老金口座」に入金し、企業は「基本養老保険統一運営基金口座」に拠出する。

このほか最低賃金に社会保険料のみが含まれている省・地域は、江西省、湖南省、寧夏回族自治区である。

なお、他の省・地域については、最低賃金に社会保険料などを含むかどうかの関連規定と関連政策解釈は明記されていない。

参考資料

  • 各省・地域の人的資源・社会保障部サイト

参考レート

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