政府がポストコロナに対応する「公共雇用サービスの強化策」を発表

カテゴリー:雇用・失業問題人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2021年10月

雇用労働部と関係省庁は6月18日、経済・雇用回復への対応として「公共雇用サービス強化策」を発表した。2021年1月~5月のワークネット(注1)を通じた求人数は前年同月比で46.5%増加しており、現在は雇用が回復傾向にある。これを受けて、2020年は新型コロナウイルス対策を中心に支援してきた雇用センター(注2)をはじめとする公共雇用サービスの就業支援機能の復元を目指す。経済・雇用回復を支援するための求人企業、求職者へのサービスの体系化を行い、同時にポストコロナを想定したインフラの拡充とオンラインシステムの構築を推進する計画である。以下で主な内容を紹介する。

求人企業と求職者に対するカスタム型支援の強化

今回の発表によると、2020年の公共雇用サービスを通じた就職率(2019年33.7%、2020年29.6%)は減少傾向にあった。その原因は、新型コロナウイルスによる景気低迷期の労働条件悪化とミスマッチの深化にあり、対策として積極的な雇用の発掘およびカスタム訓練の強化を行うとしている。

ワークネット利用企業の中から、強小企業(小規模だが強い競争力をもつ企業)などの良質な雇用を発掘し、集中的に支援する。ワークネット未利用の企業に関しては、採用支援が必要になると予想される業種(情報、保健医療、観光宿泊業など)から100社を「潜在的な顧客企業」に選定し、積極的に雇用を発掘する。

また、求人の労働条件、特性などを考慮して企業を類型分類し、それに応じた異なる支援を行う(2021年は6センターで実施し、2022年以降段階的に拡大)。介護サービス、警備・清掃、製造業単純労務など、どの求人でも労働条件が画一的で、簡単なマッチングが可能な求人は、「オンライン通知型」として自動的な通知サービスを提供する一方で、「大規模採用型(大企業の随時採用)」や「認知度拡散型(強小企業)」には集中支援を行い、「雇用条件改善型(劣悪な労働条件の零細企業など)」に対しては「企業採用支援パッケージ」で雇用条件改善や人材育成なども支援する。

求職者は就職可能性によって「準備ができた求職者」と「準備が必要な求職者」に分類する。「準備ができた求職者」に対しては、居住移動が容易な求職者(主に若年者)には広域での仕事を、移動が困難な求職者には地域に特化した仕事を斡旋する。「準備が必要な求職者には就業能力強化プログラムを提供し、経済的条件が厳しい場合には福祉サービスと連携するなど総合的に支援する。

さらに、地域内で「雇用危機職種」「戦略職種」を数業種選定し、新設する「特別就業支援チーム」で集中的に支援する。現在はソウル雇用センターで「旅行業特別就業支援チーム」を試験運営(2021年1月~)しており、7月から全国に設置する。主要業種の選定は「地域人的資源開発委員会(RSC)(注3)」などと連携して決定し、既存の地方自治体主体の雇用事業と連携して当該業種への支援を行う。また、業種別の協会や雇用保険のデータベースを活用して離職者、離職予定者を把握し、今後必要となる就職支援、職業訓練などの支援サービスを早期に提供する。

ポストコロナに備えた非対面・デジタル就業支援体制の構築

従来の就職支援プログラムのオンライン化に加え、ワークネット上で複数人が接続可能なチャンネルを構築し、オンラインでのカウンセリングや集団教育、面接などを推進する。

また、2021~2023年にかけて「雇用24」システムを構築し、各種請願や助成金申請の手続きがオンラインかつワンストップで完結するセンターとして機能させる予定である。オンライン申請の効率化のため、企業支援金の申請を容易に行えるよう支援要件を整備し、現在は訪問でのみ可能な失業給付の新規申請をオンラインでできるよう改善する(2021年下半期)。

全国民雇用保険に向けた雇用セーフティネットの拡充

全国民雇用保険の導入に向けて、2021年7月から、「一部の特雇(特殊形態労働従事者(注4)のうち宅配運転手や訪問販売員など12職種)」に雇用保険が適用された。これに対応して、雇用センターでは特雇を対象とした就職支援サービスの提供を開始する。2021年下半期に職種、特性に応じたカスタム型就職支援サービス提供策を設定し、2022年からは「特雇就職専担班」の運営を推進する。特雇専担班では、個人の需要や特性についての相談・診断によって①賃金労働者、②特雇、③自営業者に分類して支援を行う方針であり、引き続き特雇として就業する労働者に対しては、特化プログラムの開発、提供などを行う。

労働者と顧客を仲介するプラットフォームに関しては、運営事項の届出義務賦課制や、労務提供者保護の観点から優れたプラットフォームへのインセンティブ支援を導入予定である(2022~)。

2021年1月から実施されている失業手当と職業訓練から成る韓国型の失業扶助制度「国民就業支援制度」では、求職者の属性に特化した施設で訓練を行うために、2021年時点で連携している機関(女性就業支援機関や地方自治体雇用センター)に加えて、2022年には「中高年雇用希望センター」などに連携規模を拡大予定である。これらの連携機関に対しては、2022年から利用者の満足度や連携就職実績などに基づく評価制度「国民就業支援制度評価体系」を導入し、評価結果を運営予算やインセンティブと連動させるよう促す。

また、21年下半期には、制度の成果評価から雇用保険の死角地帯等を把握し就業脆弱階層に対する支援を拡大する計画である。

参考資料

  • 韓国雇用労働部報道資料(2021年6月18日付)「経済・雇用の回復を支援し、ポストコロナに備える『公共雇用サービス強化策』を発表」

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