小規模企業に対する助成金支給「連帯基金」の終了

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2021年9月

ロックダウンが実施された影響で売上が大幅に減少した零細企業や独立自営業者などに対して、国及び地方圏が拠出する連帯基金からの助成金が2020年3月から給付されている。給付条件は10月の再ロックダウン時に緩和され、給付対象が拡大した。3度目のロックダウン解除によって2021年6月以降、助成額を引き下げ、7月、8月にはさらに段階的に減額し、9月末で終了する予定である。

売上減少の小企業に対する経済支援の拡充

2020年3月に最初のロックダウンが実施された際、小規模企業を対象とする経済的支援が始まった(注1)。従業員数10人以下の小規模企業や独立自営業者を対象として、年間売上が100万ユーロ未満かつ課税対象利益が6万ユーロ未満で営業禁止となった業種、あるいは2020年3月の売り上げが前年同月比で50%以上減少した場合に、1500ユーロを上限として助成金が支給されることになった(3月分として)。同様に、4月も営業禁止の企業や前年4月の売上または前年の月額平均売上と比べて50%以上落ち込んだ企業に対して、上限で1500ユーロが支給された。さらに4月15日以降、非常に困難な状況にある企業には、審査の上で、2000ユーロから5000ユーロの追加助成金が支給されることになった。その後、再ロックダウンに伴い、2020年11月には助成金額が、それまでの上限1500ユーロから1万ユーロまで引き上げられ、支給対象となる従業員規模は10人以下から50人以下に拡大された。

業種や事業別、影響の大きさ別の給付条件

2021年5月までの期間の助成金は、業種などによって給付条件や給付額が異なるかたちで実施されている。①2021年5月まで全期間営業禁止となった業種(カフェ・レストランなど)、②一部期間が営業禁止となった業種(衣料品販売など)、③営業可能であったがロックダウンの影響を直接受けた業種(ホテル、飲料品販売業、テーマパークなど)、④影響を受けた業種の取引先(漁業やビール製造業、チーズ製造業、食品や衣料品の卸売業など)に区分されている。①に対しては、売上減少額(上限1万ユーロ)、あるいは従前売上の20%(上限20万ユーロ)のいずれか高い方が支給され、②の場合、同月の売上が従前売上より20%以上50%未満減少した場合に、売上減少額 (上限1500ユーロ)、同50%以上減少した場合に、売上減少額(上限1万ユーロ)あるいは従前売上の20%(上限20万ユーロ)の高い方、③の場合、売上減少額(上限1万ユーロ)あるいは、従前売上の15%(上限20万ユーロ)の高い方、④の場合、売上減少額の80%相当額(上限1万ユーロ)あるいは従前売上の15%(上限20万ユーロ)の高い方が支給された。

2021年の6月以降は、新たな感染再拡大などがない限り、防疫措置が段階的に解除されるため、連帯基金からの助成金制度は徐々に縮小されることになった。6月には売上減少額の40%を支援するかたちに変更され、7月には30%、8月には20%に引き下げられ、8月分の申請で受付を終了し、9月末で基金は閉鎖する予定である(注2)

助成縮小に対する中小企業経営者の反応

2021年5月以降、感染拡大防止措置の緩和が進み、多くの経済活動が再開されている。連帯基金からの助成金制度の縮小に対する大きな反発は、現在のところ、特に見られない。フランス中部のアンドレ県の中小企業経営者連盟(CPME)代表によると、支援が突然なくなり企業の事業活動が困難な状態にならないよう、段階的な縮小は、良い妥協案であるという認識を示している(注3)。テラスに席がないため、6月9日まで再開しないことを決定したワインバー経営者は、営業再開できれば顧客が戻ってきて、助成金が必要なくなるだろう見込んでおり、楽観的な見方をしている。多くの企業経営者は、経済活動が再開し、客足の回復により、連帯基金の支援も必要となくなると考えている。しかし、今後、一部の企業は20年春以降に実施した緊急融資(政府保証の融資)の返済が始まるため、これからも企業の経営状態を注意深く見続ける必要があるとの見方もある。CPMEは中小企業の融資返済に関して支援する準備をすすめている。

(ウェブサイト最終閲覧:2021年9月13日)

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