COVID-19で悪化した若年者の雇用危機対策

カテゴリー:若年者雇用人材育成・職業能力開発

韓国の記事一覧

  • 国別労働トピック:2021年6月

政府は 3月3日、COVID-19で悪化した若年者の雇用環境を改善するため「若年者雇用活性化対策」を発表した。3月25日に可決された2021年度第一次補正予算でも若年者の雇用支援予算を増額し、雇用創出や就業支援、職業訓練を通じた就業能力の強化等の対策を行う。また、4月1日には2021年の若年者政策施行計画を発表した。以下で主な内容を紹介する。

雇用創出

民間企業向けの対策として、中小・中堅企業がオンラインコンテンツの企画、アプリ開発やAIなどのビッグデータ活用、企業内のアナログ文書の電子化などのIT関連職に未就業若年者を採用する場合、一人当たり支給賃金の90%(月最大180万ウォン)+間接労務費10万ウォンを支援する「デジタル雇用事業」の対象人員を当初予算の5万人から補正予算で11万人に拡大する。

中小企業が6カ月以上の労働契約で失業者を採用する場合、人件費を月最大100万ウォン(最長6カ月)支援する「特別雇用促進奨励金」の対象人員を4万人増員し、そのうち2万人は若年者を優先的に支援する。

若年者雇用親和型研究開発(R&D)3種パッケージ(2018~2022年)の延長を検討する。このパッケージは、政府の研究開発に参加する企業に対し、①政府支援金4~5億ウォンあたり若年者1人採用の義務化、②若年者新規採用時に2年間支給する人件費の半額程度をR&D課題終了時に企業が政府に納付する技術料から控除、③若年者新規採用時に、企業がR&D参加時に負担するマッチング資金から人件費を控除、等の支援を行う制度である。

常用労働者の半数以上が若年者であるか、最近1年以内に若年者1人以上を雇用した零細事業主1万6000人に対して「若年者雇用特別資金」を支援し、貸付以降1年間若年者を継続雇用した場合に2年目から金利を優遇する。

若年者の創業支援を通じて雇用領域の拡大をめざす。スタートアップ企業の経営安定化を目的とした成長段階別支援を強化する。「若年者専用創業資金」を通じて、年間1600億ウォン、2021年から2025年までの合計で約8000億ウォンの融資支援を行う。非対面分野の有望創業企業の発掘に力を入れ、システム半導体、環境等の分野の創業も促進する。

公共機関では、定員の3%以上に34歳以下の未就業者を採用するよう義務化した「若年者雇用義務制」の期限を、当初の2021年から2023年まで延長する。また、「公共分野体験型雇用」の対象人員2万2000人中4200人を第1四半期内に採用することを目指しており、さらにオンライン教育を補助するチューター、教育施設の消毒、検温を行う学校防疫人員など、生活防疫やデジタル・グリーンの分野でも公共機関での直接雇用を創出する予定である。

若年者ネイルチェウム共済を改善し、2021年に10万人を新規支援する。新規採用された満15~34歳の若年者が1つの企業(年間売上高平均3000憶ウォン未満)に連続して勤務しながら2年間で300万ウォン(毎月12万5000ウォン)を積み立てた場合、政府(就業支援金600万ウォン)と企業(採用維持支援金300万ウォン、実際は政府から全額支給される)からも合同で積み立てられ、2年後に合計で1200万ウォンの貯蓄が可能となる制度である。

COVID-19の影響による休業、休職の増加を考慮して、納付を停止できる期間を6カ月から1年に延長した。また、原則として一度加入すると再加入することができないが、企業事由による休職、企業の支援金申請の遅延、職場内のセクハラなどによって退社した場合、再就職時に再加入が可能となる期間を6カ月から1年に延長する。

コロナ危機克服のための職業訓練の強化

若年者の人材育成に力を入れ、成長産業の職業訓練の機会を提供する。補正予算で、デジタル・新技術分野の中核人材を育成する実務中心のプログラム「K-Digital Training」において、新技術分野のスタートアップ企業が直接設計する「個別デジタル訓練」を新設し、若年者3000人を支援する。加えて、文科系のデジタル分野非専攻若年者に対してデジタル分野の基礎力の開発を支援する「K-Digital Credit」の対象人員を2万人増員し、6万人を支援する。政府が推進する国家発展戦略であるグリーンニューディールの中心となる低炭素・グリーン分野の企業が参加する訓練を500人規模のモデル事業として実施する。

職業訓練の参加機会を拡充するため、COVID-19の影響を受けた航空・観光分野に従事する若年者、関連学科卒業・卒業予定者に対して、地域や産業別にカスタムされた地域主導型の「訪問個別訓練」を提供する。また、若年者に人気の訓練課程を広く提供するためフルリモートの訓練を導入するほか、サムスン電子が若年者対象のソフトウェア教育の提供と就業支援を行うサムスンSSAFYなど、人気企業が主導する訓練を拡大するため民間企業との協力を強化する。

カスタムメード就業支援制度

国民就業支援制度(韓国型失業扶助制度)は、独自の就業支援と合わせて低所得者は月50万ウォン(最長6カ月)の求職促進手当が受給できる制度である。若年者(18~34歳)は中位所得の120%以下が支援対象となる。補正予算によって支援対象の若年者を5万人増員し、計15万人に拡大する。国民就業支援制度参加者を対象とする仕事経験プログラム(インターン型)の支援人員も補正予算で1.4万人増員し計2万人とする。

COVID-19の影響で増加した求職断念若年者(注1)に対しては、「若年者挑戦支援事業」を補正予算で新設した。地域の自治体の若者センターを活用し2~3カ月の就業力強化プログラムを提供する制度で、2021年はモデル事業として20前後の若者センターを選定し5000人規模で実施予定である。

関連インフラの強化

政府と大学、地方自治体が共同で学生に対して教育プログラムや就業博覧会、進路・就業相談を提供する大学雇用センター事業を改編し、新たに大学雇用プラスセンターを設置する(注2)(現時点では全国に大型9校、小型7校)。大学雇用プラスセンターでは、大学内の進路・雇用支援の機能をワンストップで提供するため、在学生に加えて卒業後2年以内の未就業若年者も支援対象に含め、雇用発掘などの就業支援および専門コンサルタントによる相談を強化する。小型施設が設置大学の学生を中心に支援するのに対して、大型センターではさらに地域の未就業若年者も支援対象とし、公共雇用サービスとの連携を深め地域の若年者雇用サービスの拠点として機能する。

情報プラットフォームとして、「オンライン若年者センター」のホームページ上で中央および地方自治体の若年者支援政策情報、相談などの雇用サービスを統合して統合して提供し、オンラインでの個別相談や、オフラインでの集団訪問就業相談を常時実施する。

参考資料

  • 韓国雇用労働部発表資料「2021年雇用労働部所管補正予算の主な内容」(2021年3月25日付)
  • 韓国雇用労働部発表資料「若年者雇用活性化対策」の発表(2021年3月4日付)

参考レート

関連情報