コロナ感染者の爆発的な感染拡大に対する大企業の取り組み

カテゴリー:雇用・失業問題労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2021年5月

インドでは2021年3月下旬から新型コロナウイルス感染が急拡大し、4月6日には1日の新規感染者数が10万人を超え、4月30日には40万人を超えた。企業の感染拡大防止のための取り組みとして、ワクチン接種をした従業員以外は出勤を禁止し休暇を取得するよう促したり、ワクチン接種が開始されるまで操業の一時停止を決定する企業もある。ワクチン接種は3月までは中央政府による規制の下にあったが、4月初旬に緩和が決定され、州政府の裁量が取り入れられたほか、民間企業による従業員のワクチン接種が可能になった。

ワクチン接種者以外は出勤を禁止

従業員が9000人を超える世界最大の鉄道車両メーカーのインテグラル・コーチ・ファクトリーは4月12日、感染の急増を抑えるために、45歳以上の従業員についてワクチン接種を受けた場合のみ出勤を認め、接種を受けていない従業員は休暇を取得させる措置をとった(注1)。同社は詳細な標準手順書を定めており、従業員の陽性が確認された場合、職場を48時間閉鎖し徹底的な消毒を実施するなどの感染拡大防止策を行っている。

感染拡大防止のための操業停止

国内有数の二輪車メーカーであるヒーロー・モトコープは、感染拡大予防措置として、正規・非正規従業員合計約3万人が就業する6つの製造工場全てを4月22日から5月1日までの間のうち4日間、操業停止にすることを発表した。各工場が期間をずらして閉鎖するため、需要を満たす生産能力を維持できるとしている(注2)

ウッタル・プラデーシュ州の大手電力変圧器メーカーであるカノハルエレクトリカルも4月26日から3日間、工場閉鎖を決定した。同社は、工場閉鎖の期間に感染の連鎖を断ち切り、従業員の健康と衛生状況を把握できるとしており、操業再開後は、従業員を交代で就業させ、重要ではない作業を延期する措置をとる。そのほか、インド中小企業連盟に加盟する企業数社も感染防止を目的として自主的に事業所を閉鎖することを発表した。

全従業員を対象とするワクチン接種

4月初旬に中央政府が定めるワクチン接種ガイドラインが緩和され、州政府が優先的にワクチン接種対象者を決定することができるようになった。従来、ワクチン接種は中央政府の監理下にあり、対象者を医療従事者、エッセンシャルワーカーおよび45歳以上の者としていたが、接種対象者を18歳以上に拡大し、国内で製造されたワクチンの半分が中央政府に、残りの半分は州政府および一般市場向けに供給されることになった。この緩和によって企業は、工場閉鎖せずに事業の継続性を確保できると期待を寄せている(注3)

規制緩和の結果、リライアンスインダストリーズ(石油化学を中心とする事業を手がけるインド最大のコングロマリット)は4月23日、関連する企業グループ全体で約20万人の全従業員およびその家族を対象として、5月1日から予防接種を行うことを決定した。家族分も含めて全ての費用を企業が負担する(注4)

インド最大の自動車メーカー・マルチスズキも、5月1日から数カ月の間に全ての正規・非正規従業員に予防接種を行うことを決定した。同社ではデリー近郊のグルガオンとマネサールの2つの製造工場において、約16000人の正規従業員と17000人以上の契約労働者や見習いなどの非正規従業員が就労している(注3参照)。

工場を操業停止して医療部門へ協力

マルチスズキは、医療用の酸素不足を受けて、自動車生産の工程で使用する工業用の酸素を医療用に転用するため、5月1日から9日間、インド国内の全工場の操業を停止することを決定した(注5)。これは当初、6月に予定していたメンテナンスのための操業停止日程の前倒しであり、年間の生産日数に影響は出ない見込みである。

(ウェブサイト最終閲覧:2021年5月24日)

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