法定最低賃金(SMIC)引上げ
 ―新型コロナウイルス感染拡大の最中での引上げ議論

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2021年3月

フランスの法定最低賃金(SMIC)が2021年1月から時給10.25ユーロに引上げられた(注1)。CGTやFOといった労働組合は、コロナ禍で影響を受けた低賃金労働者を支援するために政府裁量による上乗せを求めていたが、物価と平均賃金の上昇分のみの引き上げに留まった。

物価と賃金の上昇分のみの低水準の引き上げ

SMICの引き上げ額は、毎年、物価と平均賃金の上昇率に基づいて決まるが、政府の政治的判断によって上乗せされる場合もある。専門家委員会から提出される報告書を参考に、政労使の協議を経て決定される。12月1日に提出された同報告書では、コロナ禍の経済情勢を踏まえて、政府による上乗せを行わないように勧告していた。

2019年11月から2020年11月の間の物価は下落したため、今回の引き上げには加えず、2019年9月から2020年9月までの間の平均賃金上昇率に基づく引上げ率を決定し、2021年1月から時給10.25ユーロに引上げられることになった。前年の10.15ユーロから0.99%の増額である(注2)。今回の改定で政府裁量による上乗せはなく、低い水準の引き上げとなった。図表1は2001年以降の最賃額と引上げ率の推移を示したものである(注3)

図表1:最賃水準と引き上げ額の推移
画像:図表1

出所:労働省ウェブサイト(La revalorisation du Smic au 1er janvier 2020, publié le15.12.20)などより作成。

専門家委員会は雇用確保が優先されるべきとの見解

専門家委員会の報告書によると、コロナ禍で労働市場の状況や大部分の企業の財務状態は相当悪化しており、今後も不確定な要素が多く経済・雇用情勢の早期回復は非常に難しいという判断のもと、雇用確保が優先されるべきで購買力の過度な引き上げは優先事項ではないと結論付けている。物価と平均賃金の上昇分以上に引き上げれば、企業にとってコロナ感染拡大による打撃に追い打ちをかけ人件費の増加に繋がり、結果として低賃金労働者の失業につながる懸念があるとしている。その上で、今回の引き上げ率を0.99%程度と試算し、前回2020年1月の1.20%増よりも低いが、物価上昇が実質的にマイナスであるため、購買力は向上することになるとの見解を示した(注4)

労働組合側(CGTとFO)の反応

労働総同盟(CGT)と労働者の力(FO)は、物価および平均賃金の上昇分だけでなく、政府裁量による上乗せを求めていた。SMIC水準で就労する労働者は清掃員やレジ係員、配達員などテレワークが不可能な者が多く、女性や若年者、低学歴者などが占める割合が大きい。派遣や有期雇用契約などの不安定な雇用が多数を占めている上に、ロックダウン期間に就労を続けた者が多い実情を踏まえて、政府裁量による上乗せが必要だとしている。

特にCGTは自動改定(物価スライドと賃金スライドによる改定)に留まることは受け入れられず、1800ユーロまでの引き上げを求めている(注5)。FOは賃金分布の中位値の80%、月額手取りで1480ユーロまで、現行水準の21.4%増を主張している(注6)。フランス民主労働同盟(CFDT)は、SMICだけでなく、低賃金労働者の労働条件や地位向上の見通しなど幅広く取り扱うべきであると主張している(注7)

影響率

SMICの改定に伴って賃金が引き上げられる労働者の割合については、通常、引き上げ時から約11カ月後に公表されている。2021年2月現在、公表されている数値は2020年1月1日の引き上げ時のものである。2020年1月1日時点においてSMIC水準で就労していたのは、雇用労働者の13.0%であり、人数では225万人だった(注8)。1987年以降の推移を示したのが図表2である(注9)

図表2:影響率の推移
画像:図表2

出所:Christine PINEL (2020)および Yves JAUNEAU (2009)より作成。

2020年1月1日時点においてSMIC水準で就労していた雇用労働者を従業員規模別にみた場合、10人未満の小規模事業所では27.3%、10人以上では9.8%、その中でも500人以上の事業所では6.1%となっており、規模が大きいほど最賃引き上げの影響率が小さくなる。雇用形態別では、フルタイムの影響率が9.0%であるのに対して、パートタイムは30.0%と、パートタイム労働者の影響率が大きい。

業種別みるとフルタイムとパートタイムを合わせた全体に関して、製造業が5.9%、建設業が10.0%であるが、サービス業の中で医療・福祉サービスが22.0%、ホテル・レストランが38.8%と高くなっている。パートタイムについて見てみると、製造業が17.5%、建設業が24.9%、サービス業の中で医療・福祉サービスが36.5%、ホテル・レストランが63.4%と高くなっている。

(ウェブサイト最終閲覧:2021年3月17日)

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