在宅勤務の活用実態に関する調査結果

カテゴリー:労働条件・就業環境多様な働き方勤労者生活・意識

韓国の記事一覧

  • 国別労働トピック:2020年11月

韓国経営者総協会と雇用労働部は2020年9月、企業における在宅勤務の活用状況に関する最新の調査結果をそれぞれ別個に発表した。韓国経営者総協会の調査では回答企業の88.4%、雇用労働部の調査では回答企業の48.8%が在宅勤務を活用していた。両調査の概要は以下のとおり。

1.韓国経営者総協会の調査

韓国経営者総協会は2020年9月13日、「社会的距離拡大戦略による売上100大企業在宅勤務状況調査」の結果を発表した。同調査は、国内売上高100大企業(2019年ベース)のうち、公企業9社を除く91社を対象に電話調査(9月7日・8日)を実施し、回答企業69社の結果をまとめたものである。

調査結果によると、事務職については、88.4%の企業が「在宅勤務を実施中」であり、2.9%は「間もなく実施予定(計画確定)」であった。「在宅勤務を実施しておらず、実施計画もない」企業は8.7%であった。生産労働者については、職務の特性上、在宅勤務を実施している企業はなかった。しかし、必要に応じて年次休暇のほかに有給休暇を付与したり、食事・休憩時間の調整、休憩室・構内食堂・通勤バスの密集度の低下等の感染症予防措置を実施中であると回答した企業があった。

事務職で在宅勤務を実施する具体的な方法は、構成員を2組または3組に分けて在宅勤務を実施する「交代編成等循環」方式(44.4%)が最も多く、次いで、健康・介護・妊娠等の理由に該当する「在宅勤務必要人材を選別したり個人が申請」する方式(27.0%)、「必須人材を除いた全社員が在宅勤務」する方式(15.9%)の順に多かった。

事務職の正常勤務と比べた在宅勤務の業務生産性を人事担当者に質問した結果は、「正常勤務に比べて90%以上」が46.8%と半数近かかった。次いで、「80~89%」が25.5%、「70~79%」が17.0%であり、「70%未満」は10.6%に過ぎなかった。これは、ITプログラムの活用や業務・成果管理システム等を通じて在宅勤務の生産性を管理している大企業を対象とする調査結果のためと推測される。

企業が実施する在宅勤務労働者の生産性低下防止策としては、コミュニケーション活性化のための協業ツールやメッセンジャー等の「ITプログラム活用の拡大」(77.6%)が最も多く、次いで、勤怠および業務進行状況を記録・管理するプロセスの導入、結果中心の成果評価体系の強化等の「業務・成果管理システムの強化」(56.9%)が多かった。

コロナ危機後の在宅勤務活用については、「新型コロナウイルス以前より在宅勤務の活用が拡大」(53.2%)、「新型コロナウイルス以前の水準に再び戻るだろう」(33.9%)と予測する回答が多かった。

2.雇用労働部の調査

雇用労働部は2020年9月24日、「在宅勤務活用実態アンケート調査結果」を発表した。同調査は、職業情報サービス提供企業のジョブプラネットに委託し、5人以上の事業所の人事担当者400人と労働者878人を対象に8月に実施された(調査対象期間:2020年7月)。

(1)企業調査の結果

企業の人事担当者を対象とする調査結果では、在宅勤務制度を運用している企業の比率は48.8%、運用していない企業の比率は51.2%であった。

企業規模別の運用比率は、「10~29人」企業が43.9%、「30~99人」が42.7%、「100~299人」が54.0%、「300人以上」が51.5%であった(表1)。

表1:企業規模および類型別在宅勤務制度の運用の有無(単位:%、事業所)
画像:表1

業種別にみると、在宅勤務制度を運用している比率が高い業種は、「金融および保険業」(66.7%)、「芸術・スポーツおよび余暇関連サービス業」(66.7%)、「教育サービス業」(62.5%)、「情報通信業」(61.5%)等であった。在宅勤務制度を運用していない比率の高い業種は、「宿泊および飲食店業」(85.7%)、「製造業」(66.0%)、「卸売および小売業」(63.8%)等であった(表2)。

表2:業種別在宅勤務制度の運用の有無(単位:%、事業所)
画像:表2
画像クリックで拡大表示

在宅勤務制度を導入している事業所における在宅勤務を活用している労働者の比率は、「10%未満」が40.0%、「50%以上」が28.7%、「10~20%未満」が12.9%、「20~30%未満」および「30~50%未満」が9.2%であった。

在宅勤務の実施範囲は、「全社員対象」(46.7%)、「特定職務に限定」(28.2%)、「特定の労働者に限定」(20.0%)の順に多かった。

在宅勤務を実施していない理由(複数回答)は、「人事労務管理の難しさ」(45.9%)、「事業主または経営陣の反対」(35.1%)、「インフラ構築等費用負担」(34.2%)、「在宅勤務が可能な職務がない」(31.2%)、「導入方法・手続き・規定が分からない」(11.2%)、「労働者または労働組合の反対」(2.4%)の順に多かった。

在宅勤務の業務効率性については、「非常に上がった」(7.2%)と「上がった」(59.5%)を合せた「上がった」という評価が66.7%、「それほど上がっていない」(29.2%)と「全く上がっていない」(4.1%)を合わせた「上がっていない」という評価が33.3%であった。

在宅勤務の肯定的効果(複数回答)としては、「感染症危機対処能力の強化」(71.8%)、「労働者の職務満足度の増加」(58.5%)、「業務効率性の増加」(23.1%)、「事務空間等の費用削減」(11.3%)、「人材の流出防止および人材の迎え入れ」(6.7%)の順に回答比率が高かった。

在宅勤務実施上の困難(複数回答)については、「コミュニケーションの困難」(62.6%)「在宅勤務の困難、職務とのバランスの問題」(44.1%)、「成果管理・評価の困難」(40.0%)、「企業情報流出の恐れ」(14.9%)、「在宅勤務のためのインフラ費用の負担」(9.0%)の順に回答比率が高かった。

新型コロナウイルス終息以降の在宅勤務の継続実施については、「一部労働者に限り実施」(26.2%)、「全社的活用」(25.6%)、「新型コロナウイルス終息時に中断」(12.3%)「議論中であり未定」(35.9%)という結果であった。

在宅勤務活性化のために必要な政府の政策(複数回答)としては、「インフラ構築等の費用の支援」(42.5%)、「社会的雰囲気づくりの拡大」(38.8%)、「労働法ガイドラインの整備」(35.5%)、「在宅勤務活用インセンティブ(政府補償、金融優遇等)」(34.3%)、「人事労務コンサルティングの支援」(19.5%)、「先導企業の優秀事例の発掘・伝播」(14.0%)の順に回答比率が高かった。

(2)労働者調査の結果

労働者を対象とする調査の結果では、在宅勤務の経験については、「ある」が34.1%、「ない」が65.9%であった。

在宅勤務を活用した経験のある労働者の週当たり活用回数は1日が21.1%、2日が16.1%、3日が14.0%、5日以上15.1%、4日が1.3%であった。

在宅勤務経験のある労働者の満足度は、「だいたい満足」(60.5%)、「非常に満足」(30.8%)、「少し満足」(6.7%)、「非常に不満足」(2.0%)の順であった。

在宅勤務の業務効率性については、「非常に上がった」(20.4%)、「少し上がった」(53.5%)を合わせた「上がった」という評価が73.9%、「あまり上がらなかった」(24.4%)、「全く上がらなかった」(1.7%)を合わせた「上がらなかった」という評価が26.1%であった。

在宅勤務の肯定的効果(複数回答)については、「通勤のストレス解消」(86.0%)、「余暇時間の確保による生活の質向上」(36.5%)、「仕事・家庭の両立への寄与」(27.8%)、「業務集中度の向上」(27.8%)、「経歴断絶の予防」(5.0%)の順に回答比率が高かった。

在宅勤務活性化のために必要な企業の措置(複数回答)としては、「自由な制度活用の雰囲気づくり」(64.2%)、「ITインフラの構築および改善」(47.3%)、「役割と責任の明確化」(32.3%)、「管理職が率先して制度を活用」(22.3%)、「体系的な成果管理システムの整備」(19.6%)の順に回答比率が高かった。

在宅勤務活性化のために必要な政府の政策(複数回答)としては、「労働法ガイドラインの整備」(48.9%)、「インフラ構築等の費用支援」(44.2%)、「社会的雰囲気づくり」(41.3%)、「在宅勤務活用のインセンティブ(政府補償、金融優遇等)」(31.5%)、「先導企業の優秀事例の発掘・伝播」(12.4%)、「人事労務コンサルティングの支援」(9.2%)の順に回答比率が高かった。

参考

  • 韓国経営者総協会報道資料(2020年9月11日付)「社会的距離拡大戦略による売上100大企業在宅勤務状況調査」の結果発表
  • 雇用労働部報道資料(2020年9月24日付)「在宅勤務の業務効率と職務満足ともに高く現れる」

参考レート

2020年11月 韓国の記事一覧

関連情報