男女賃金格差、前年より1ポイント改善
3月に発表された連邦統計局の資料によると、昨年(2019年)の男女賃金格差は20%で、前年より1ポイント改善した。最新の調査(VSE)をもとに算出したもので、男性の1時間当たりの平均賃金が22.16ユーロであったのに対して、女性は同17.72ユーロと、4.44ユーロ(前年は4.51ユーロ)少なかった。
男女賃金格差は20%
連邦統計局は毎年3月の「イコール・ペイ・デイ(Equal pay day)」に合わせて、男女賃金格差の数値を発表している。可視化することで、労働市場における男女の平等を達成しようとする試みの一環だが、ドイツでは2006年に23%だった男女賃金格差が、13年かけて2019年に20%に縮小した(図1)。
図1:ドイツの男女賃金格差の推移(2006、2010、2014~2019年)
出所:Destatis (2020)
約7割は構造的要因
この20%という数値の前提は、労働者の年齢、学歴、職歴を考慮せずに性別のみを考慮した場合である。また、格差の7割、つまり約14%は、構造的な要因によるものである。
連邦家族省(BMFSFJ)によると、この構造的要因は、複雑かつ多岐にわたるものだとした上で、以下の事例を示している;
なお、こうした構造的要因を取り除いた男女(同一の産業・同一資格・同一職務・同一労働時間)で比較した場合の賃金格差は6%で、これが残り3割の賃金格差である。
賃金透明化法による改善は示されず
ハンスベックラー財団経済社会研究所(WSI)の研究によると、特に企業内の賃金分配について、明確で透明なルールがない場合には、男女の賃金格差が起こりやすいということが明らかになっている。ドイツでは、賃金構造の透明化を促進することで、男女間の賃金格差を是正しようとする「賃金透明化法(EntgTranspG)」が2017年に成立したが、WSIの分析によると、これまでのところ同法は殆ど利用されておらず、目立った改善の動きは示されていない。その上で、「現時点で、公正で透明な賃金を得る最善の方法は、労使交渉を経て締結される“労働協約”である。労働協約の多くは、性別に関係なく、専門的経験の増加に応じて賃金と給与が自動的に増加することを規定しているからだ」と結論付けている。
注
- ミニジョブ(僅少労働)とは、雇用機会の拡大を目的として賃金平均月額が450ユーロ以下、又 一年間の労働日数が3カ月以下若しくは合計で70日以下の場合に、所得税と社会保険料の労働者負担分を免除する制度である(ただし、使用者は免除されず、税金、健康保険、年金保険の計30%の負担義務がある)。(本文へ)
- 連邦統計局によると、20~64歳の働く女性のほぼ半数(47%)がパートタイムで働いていたに対して、同時期の男性の同割合は9%のみであった(2018年)。パートタイムを選択した理由について、多くの女性は子どもの世話や介護、その他の家庭内における責任を挙げており、無給の家族の世話が女性に偏在している、と分析している。(本文へ)
参考資料
- Destatis Press release No.097 of 16 March 2020, Böckler Impuls (Ausgabe 05/2020), BMFSFJサイトほか。
参考レート
- 1ユーロ(EUR)=123.69円(2020年7月27日現在 みずほ銀行ウェブサイト)
2020年7月 ドイツの記事一覧
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