男女賃金格差、前年より1ポイント改善

カテゴリー:労働条件・就業環境

ドイツの記事一覧

  • 国別労働トピック:2020年7月

3月に発表された連邦統計局の資料によると、昨年(2019年)の男女賃金格差は20%で、前年より1ポイント改善した。最新の調査(VSE)をもとに算出したもので、男性の1時間当たりの平均賃金が22.16ユーロであったのに対して、女性は同17.72ユーロと、4.44ユーロ(前年は4.51ユーロ)少なかった。

男女賃金格差は20%

連邦統計局は毎年3月の「イコール・ペイ・デイ(Equal pay day)」に合わせて、男女賃金格差の数値を発表している。可視化することで、労働市場における男女の平等を達成しようとする試みの一環だが、ドイツでは2006年に23%だった男女賃金格差が、13年かけて2019年に20%に縮小した(図1)。

図1:ドイツの男女賃金格差の推移(2006、2010、2014~2019年)
図1:画像

出所:Destatis (2020)

約7割は構造的要因

この20%という数値の前提は、労働者の年齢、学歴、職歴を考慮せずに性別のみを考慮した場合である。また、格差の7割、つまり約14%は、構造的な要因によるものである。

連邦家族省(BMFSFJ)によると、この構造的要因は、複雑かつ多岐にわたるものだとした上で、以下の事例を示している;

  1. 清掃、介護、保育、小売りなどの低賃金職種に女性が多い、
  2. 育児・介護等の家族責任を理由としたキャリアの断絶が多い、
  3. 女性が再就職する場合、フルタイムではなく、パートタイムやミニジョブ(注1)を選択することが多い、
  4. 多くの女性がパートタイム(注2)で働き、乏しい昇進機会・女性管理職の少なさにつながっている、
  5. 社会的固定概念(女性という理由のみで雑用をさせる、程度の低い業務をさせる等)が依然として職務評価や賃金格差に影響しており、男女の「間接差別」につながっている。

なお、こうした構造的要因を取り除いた男女(同一の産業・同一資格・同一職務・同一労働時間)で比較した場合の賃金格差は6%で、これが残り3割の賃金格差である。

賃金透明化法による改善は示されず

ハンスベックラー財団経済社会研究所(WSI)の研究によると、特に企業内の賃金分配について、明確で透明なルールがない場合には、男女の賃金格差が起こりやすいということが明らかになっている。ドイツでは、賃金構造の透明化を促進することで、男女間の賃金格差を是正しようとする「賃金透明化法(EntgTranspG)」が2017年に成立したが、WSIの分析によると、これまでのところ同法は殆ど利用されておらず、目立った改善の動きは示されていない。その上で、「現時点で、公正で透明な賃金を得る最善の方法は、労使交渉を経て締結される“労働協約”である。労働協約の多くは、性別に関係なく、専門的経験の増加に応じて賃金と給与が自動的に増加することを規定しているからだ」と結論付けている。

参考資料

  • Destatis Press release No.097 of 16 March 2020, Böckler Impuls (Ausgabe 05/2020), BMFSFJサイトほか。

参考レート

2020年7月 ドイツの記事一覧

関連情報