雇用継続を目的とした雇用維持支援金の支援内容を大幅に拡充

カテゴリー:雇用・失業問題人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2020年5月

新型コロナウイルスの感染拡大により、日本の雇用調整助成金にあたる雇用維持支援金の申請件数が急増している。雇用労働部は、支給要件の緩和、観光関連業種等の特別雇用支援業種への指定、支援水準の引き上げ、関連予算の大幅増額などの対策を順次講じている。

観光関連業種等を特別雇用支援業種に指定

「雇用維持支援金」は、景気の変動や産業構造の変化により雇用調整が避けられなくなった事業主が、労働者に対し、休業、休職、訓練、配置転換などの雇用維持措置を講ずる場合、政府が支援金を支給する制度である。支援額は、事業主が支給した休業・休職手当の3分の2(大企業の場合は2分の1)、訓練の場合は事業主が支給した賃金の4分の3(大企業の場合は3分の2)となっている。

雇用維持支援金の申請には、生産量・売り上げが15%以上減少した場合や在庫量が50%増加した場合などの要件がある。雇用労働部は2020年1月29日から、この要件を満たしていない場合でも、「新型コロナウイルスの影響で雇用調整が避けられない事業主」として認定・支援するよう要件を緩和し、雇用維持支援金の関連予算を351億ウォンから1,004億ウォンに拡大した。

雇用維持支援金の申請件数は、2020年1月29日から2月28日の1カ月間で2,220件(労働者3万1,109人)に上った。新型コロナウイルスの感染拡大で経営難に陥る企業が増加し、2019年通年の申請件数(1,514件、3万1,064人)を上回った。

雇用労働部は2020年1月28日、雇用維持支援金の支援水準を中小企業等優先支援対象企業(産業別に、常時使用する労働者数が100~500名以下の企業及び中小企業基本法上の一定の要件を満たす企業)は現行の3分の2を4分の3に、大企業は2分の1を3分の2に引き上げると発表した。この増額された支援水準は2020年2月1日から7月31日までの6カ月間一時的に適用され、今後、新型コロナウイルスの影響による雇用状況などを綿密に監視しつつ、適用期間を延長するかどうか検討するとしている。

雇用労働部は3月16日、旅行業、ホテルなどの観光宿泊業、貸切バス・航空会社などの観光運送業、公演業など、4つの観光関連業種を「特別雇用支援業種」に指定し、事業所の規模にかかわらず、9月15日までの6カ月間支援を強化することとした。これにより、指定された業種の事業所が休業・休職手当を支給する場合、手当の90%(1日当たり上限7万ウォン)まで雇用維持支援金を受給できるようになった。さらに4月28日、上記4業種に加えて、航空機取扱業、免税店、展示・国際会議業、空港バスの4業種を特別雇用支援業種に追加指定した。

特別雇用支援業種に指定された企業に対しては、雇用保険、労災保険、健康保険の保険料と障害者雇用負担金の納付期限も6カ月間延長される。これらの事業所の従業員ややむを得ない事情で退職した元従業員は、「国民の明日の学びカード」(職業訓練費を支援する目的で雇用労働部が発行するカード)の訓練費が5年間300万ウォンから400万ウォンに引き上げられる。これらの従業員等は中位所得の100%以下の者のみが参加できる「就職成功パッケージ」にも、所得額に関わりなく参加することができ、求職促進手当受給者の場合、条件を満たしていれば訓練延長手当が支給される。雇用労働部はこのような支援を受ける労働者が1万4,000事業所の17万人に達すると見込んでいる。

全業種に期間限定で90%の雇用維持支援金を支給

雇用労働部は2020年3月25日、新型コロナウイルスで被害を受けた企業が積極的に雇用を維持するよう、3カ月間(4月〜6月)の期間限定で雇用維持支援金の支援水準を全ての業種に対して最大90%まで引き上げる方針を示した。

今回の対策は、これまで雇用維持支援金の要件緩和や支援水準の引き上げを行ったにもかかわらず、依然として休業手当の自己負担(25%)に困難を感じている零細・中小企業等の現場の意見を積極的に反映した措置とのことである。本措置を通じて、中小企業等優先支援対象企業の場合、特別雇用支援業種と同じ割合(90%)まで支援水準を引き上げる。これにより、支援対象企業の休業・休職手当の自己負担割合は、現在の25%から10%まで低下する。

この増額された雇用維持支援金は、2020年4月1日から6月30日までの3カ月間、実際に雇用維持措置(休業・休職)を実施し、休業・休職手当を支給した事業主に対して5月から支給される(表1)。そのため、事業主は雇用維持措置の実施日までに雇用維持措置計画書を雇用労働部官署に提出し、それに基づき実際の雇用維持措置を実施して休業・休職手当を支給した後、雇用維持支援金の支給を申請しなければならない。4月1日以前から継続的に雇用維持措置を実施している場合も、1カ月でも支援期間(3カ月間)に含まれる期間がある場合は、当該期間に対して増額された支援金を支給する。

表1:一般業種の休業・休職手当に対する雇用維持支援金の支援比率(2020年)
雇用維持措置期間 1月1日~1月31日 2月1日~3月31日 4月1日~6月30日 7月1日~7月31日
優先支援対象企業 67%(2/3) 75%(3/4) 90%(9/10) 75%(3/4)
大規模企業 50%(1/2) 67%(2/3) 67%(2/3) 67%(2/3)

出所:雇用労働部報道資料(2020年4月1日付)

雇用労働部は雇用維持支援金の支援水準を迅速に引き上げるよう、雇用保険法の改正、雇用保険基金運用計画の変更に必要な手続きを早急に進める計画である。

雇用維持支援金の申請事業所数は2020年3月27日現在、22,360カ所であり、前年の支援事業所数1,514カ所と比べて15倍に増加した(表2)。

表2:雇用維持支援金の申請状況(2020年3月27日現在、事業所数)
合計
(カ所)
規模別分類 主な業種別分類
10人
未満
100人
未満
100~
299
300人
以上
製造業 卸売業 宿泊
飲食
事業施設
管理業
(旅行業)
教育 その他
22,360 17,397 4,660 218 85 2,465 3,785 2,878 3,788 3,369 6,075

出所:雇用労働部報道資料(2020年4月1日付)

雇用労働部は、雇用維持支援金の申請が大幅に増加したこと、支援水準が制度施行後初めて90%まで上昇したことなどを考慮し、関連予算を従来の1,004億ウォンから5,004億ウォンに増額(4000億ウォン増)する予定である。

参考

  • 雇用労働部発表資料「史上初、すべての業種に雇用維持支援金最大90%サポート」(2020年3月25日付)
  • 雇用労働部発表資料「雇用維持支援金支援水準を事業主が支給した休業(休職)手当の90%まで保障する根拠の整備」(2020年4月1日付)
  • ハンギョレ新聞日本語版「韓国政府、大韓航空など旅行業種に休業手当90%まで支援(2020年3月17日付)

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