「コロナ禍」で失業保険申請件数が急増

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2020年4月

連邦労働省が4月23日に発表した同月第2週(12~18日)の新規失業保険申請件数(季節調整値、速報値)は442万7,000件で、前週の523万7,000件より81万件減少したものの、記録的な高水準が続いている。

申請件数は3月後半から急増

この統計は、労働者が離職後、新たに失業保険の申請を登録した件数を週ごとに算出するもの。失業率などの雇用統計は月ごとの発表であることから、雇用情勢の推移をより早くとらえられる経済指標として注目されている。

件数は、新型コロナウイルス蔓延の影響による雇用情勢の悪化を反映し、2020年3月第3週(3月15~21日)に330万7,000件と、1967年の統計開始以降で最も多い水準を記録。2015年3月以降は20万件台で推移していたが、この1週間で10倍以上に跳ね上がった。

さらに、その翌週(3月22~28日)及び翌々週(3月29日~4月4日)は600万件台へと倍増し、記録的な高水準となっていた。3月第3週から4月第3週の5週間で、2,645万3,000件(3月第3週から5週間の累計)もの申請が行われたことになる(図1)。

リーマン・ショック前後の状況をみると、2008年7月第2週まで30万件台だったのが、翌週に40万件を超え、同年11月第2週に50万件、09年1月最終週に60万件をそれぞれ突破するという推移をたどった。「コロナ禍」での件数増加は、この時の規模、スピードをはるかにしのぐ。

図1:新規失業保険申請件数の推移(季節調整値)
図1:画像

出所:連邦労働省ウェブサイト

失業率は4月以降大幅悪化へ

連邦労働省が4月3日に発表した3月の失業率(季節調整値、速報値)は4.4%で、前月の3.5%から0.9ポイント上昇。この上昇幅は、1974年12月から1975年1月以来の大きさだった(1948年の統計開始以降。当時は7.2%から8.1%へと悪化)。連邦労働省はこの失業率(4.4%)は、「3月8~14日の状況を集計したもので、3月後半に全米各地で実施されたロックダウン(企業や学校閉鎖)以前の期間を対象とした調査である点に注意が必要」として、4月以降は失業率が大幅に悪化する可能性を指摘している。

なお、リーマン・ショック後、2009年平均の失業率は9.3%で、2007年の4.6%、2008年の5.8%から上昇したものだった。今回の上昇は当時を大きく上回るものと懸念されている。

失業保険の仕組みと現在の特例措置

米国の失業保険料は連邦失業税と州失業税とを財源とし、事業主のみが負担する。一部の州を除き被用者の負担はない。

課税対象は、暦年の各四半期における賃金支払い総額が1,500ドル以上、または1人以上の労働者を暦年で20週以上雇用している事業主である。連邦失業税の税率は年間支払賃金額の6.0%で、州失業税率は州ごとに異なる。

失業者の受給要件も州による違いはあるが、一般的には、事業主都合で解雇され、就労可能な求職者を対象にしている。ただし、懲戒解雇者や自発的離職者(セクハラ被害、病気、配偶者の転勤を理由とする場合は除く)は対象にならない。給付水準も州によって差はあるが、ほぼ課税前所得(平均週給)の50%である。給付期間の上限は26週間とする州が多い。雇用情勢が一定の水準以上悪化した州では、「延長給付」として、13週間または20週間の給付が追加される。

現在は、新型コロナウイルスの蔓延に伴う雇用情勢の悪化への対応策として、週600ドルを追加給付し、給付期間を13週間延長するなどの特別措置がとられている。従来は適用外の自営業者、ギグワーカーも暫定的に対象とする措置も実施。この財源は連邦が100%負担し、各州の失業保険関連法に基づき、給付の条件が定められている。

※脱稿後の4月30日に連邦労働省が発表した4月第4週(4月19~25日)の新規失業保険申請件数(季節調整値、速報値)は383万9,000件で、前週の444万2,000件(同改定値)から60万3,000件減少した。3月第3週以降、6週間の累計は3,030万7,000件となっている。

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