雇用労働部の2020年の主要政策課題を発表

カテゴリー:地域雇用若年者雇用高齢者雇用人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2020年4月

雇用労働部は2019年12月23日、「2020年経済政策の方向、雇用労働部の主要課題」を発表した。2020年に取り組むべき10の主要政策課題を挙げている。その概要は以下のとおり。

1.雇用セーフティーネットからの脱落を解消するための国民就業支援制度の実施

雇用保険の恩恵を受けられない労働弱者の就業を支援するため、「国民就業支援制度」(韓国型失業扶助制度)を実施する(2020年下半期、法制定後に推進)。密着相談を通じたカスタムメード就職支援サービスを提供するとともに、低所得層、零細自営業者等に対しては求職期間中の生活安定のための支援を行う。

中位所得の50%(18~34歳は120%)以下の求職者に対し、最長6カ月間、月50万ウォンの求職促進手当を支給する。また、中位所得の100%(18~34歳は所得制限なし)以下の求職者に対し、進路相談、職業訓練、創業支援、求職活動支援等の就業支援サービスを提供する(表1)。

表1:国民就業支援制度 対象者別支援事項
対象 支援事項
中位所得の50%以下の求職者
(18~34歳の場合、中位所得の120%以下の求職者)
求職促進手当(月50万ウォン、最長6カ月)
中位所得の100%以下の求職者
(18~34歳の場合、所得は無関係)
求職支援サービス
(進路相談、職業訓練、求職活動の支援等)

出所:雇用労働部発表資料「2020年経済政策の方向、雇用労働部の主要課題」(2019年12月23日)

2.個人生涯最適型能力開発支援のための「国民の明日の学びカード」の導入

個人の生涯に渡る最適型能力開発及び訓練からの脱落防止のため、「国民の明日の学びカード」を導入する(2020年1月~)。

労働者の自律的な能力開発を支援することを目的に、個人の職業訓練履歴と訓練費用を包括的に管理する職業能力開発アカウント制(「明日の学びカード」)が2008年から段階的に導入された。

現行の「明日の学びカード」の支援対象を、短時間労働者(週36時間未満)、年間売上1億5,000万ウォン未満の特殊形態労働従事者(経済的には事業者に従属的な地位にあるが業務遂行においては自律性を有する労働者)・自営業者、低所得(月300万ウォン未満)の大規模企業労働者等に拡大する(表2)。失業者・在職者に区分されていた「明日の学びカード」を「国民の明日の学びカード」に統合することにより、労働弱者の訓練参加が拡大するものと予想されている。

表2:国民の明日の学びカード改編の主な内容
区分 現行 改変
支援対象 失業者
在職者(中小企業・非正規中心)
職業訓練を希望する国民
(公務員、私立学校教職員、在学生等を除く)
有効期間 失業者1年、在職者3年 5年(5年後再発行申請可能)
支援内容 200~300万ウォン 300~500万ウォン
自己負担 失業者訓練:平均25%
在職者訓練:0~20%(一部40%)
30~40%レベル
(所得水準・供給過剰職種差別化)

出所:雇用労働部発表資料「2020年経済政策の方向、雇用労働部の主要課題」(2019年12月23日)

3.企業と現場の需要に対応する最適型職業訓練の強化

現場の需要に基づいた人材を養成するため、産業界・企業が直接参加する「最適型現場人材養成事業」を実施する。

大企業のインフラを活用して、中小企業に対し、将来有望分野の最適型訓練を提供する事業を拡大する(2020年、1,800人)。

就職率等の訓練成果が優秀な民間訓練機関を選別して、企業最適型訓練課程を設計・運用するよう改善する(2020年、9,000人)。

産業界の需要を直接反映した若年層の最適型訓練を新設する (2020年、3,000人)。

4.地域が中心となる雇用安定先行対応パッケージの支援

急激な雇用減少が予想される地域が主導的に中期雇用事業を計画・推進し、雇用危機に先行的に対応できるよう、「雇用安定先行対応パッケージ」(公募方式で選定、最大5年間、年間30~200億ウォンを支援)を新設する。

主導的対応として、広域市と基礎自治体による連合体(コンソーシアム)を通じて、地域の産業政策と連携して地域雇用問題を最適型で解決できるよう支援する。中央省庁は最小限のガイドラインのみを提示し、審査・選定過程で提供するコンサルティングの結果に基づき自治体と協約を締結する。

先行的対応として、現行の雇用危機地域の指定要件を緩和し、雇用危機前段階の地域に対して支援を行う。

パッケージ支援として、仕事創出、職業訓練、雇用サービス、労働条件・雇用環境の改善等をパッケージで設計する。

5.求職若年層及び若年層採用企業の持続的支援

若年層と中小企業のミスマッチを解消するため、「若年層3大中心事業」を通じて持続的に支援する。

成長可能性の高い分野の中小企業が若者3人を正規雇用として採用した場合、1名分の賃金(上限2,000万ウォン)を支援する「若年層追加雇用奨励金」の対象者を2019年の20万人から2020年は29万人に拡大し、最低雇用維持義務期間の設定等を行う。

若年労働者の資産形成と長期勤続を促進する目的で、中小・中堅企業に新規就業した満15歳以上34歳以下の若者が2年間勤続して300万ウォンを積み立てると、政府が900万ウォン、企業が400万ウォンをともに積み立て、合計1,600万ウォンを用意する「若年層の明日を満たす共済」の対象者を2019年の25万人から2020年は34万2,000人に拡大する。また、2020年から加入できる賃金の上限を月額500万ウォンから月額350万ウォンに引き下げる。

雇用保険未加入の若者の就業を促進することを目的とした「若年層求職活動支援金」は、2020年下半期から「国民就業支援制度」に統合し、雇用サービスを充実させる(ただし、新型コロナウイルスの感染拡大による雇用情勢の悪化に伴い、一時的に再導入される予定)。

6.育児休業制度等の改善による女性が働きやすい環境の整備

育児休業制度に関し、夫婦同時に育児休業を取得できるよう改善する(2020年2月実施)。また、現行は給与の25%を復職6カ月後に支払っているが、労働者が非自発的な理由で復職後6カ月以前に退社した場合も給付金を支給する。片親労働者に対して育児休業開始から3カ月間、賃金の100%(上限額250万ウォン)の育児休業給付金を支払う(2020年上半期実施予定)。

育児休業を付与したり、代替人材を採用した事業主に対する支援金の事後支給方式を、休業期間中に50%支給するよう改善する(2020年上半期実施予定)。また、中小企業に対する代替人材支援金を2019年の月額60万ウォンから2020年は月額80万ウォンに引き上げる。

7.新中年就業支援の強化及び高齢者継続雇用の支援

新中年とは、自己研鑽して豊かな人生を送るために努力し、若々しく生きようとする中年を指す。

40代に対しては、ポリテク大学の40代以上の中高年失業者を対象とする特化訓練の機会を拡大する。「第四次産業革命を先導する人材養成事業」の訓練機関選定審査において、40代に対する訓練実績に加点を付与する。雇用労働部傘下の公共職業紹介機関である雇用センター内に40代を対象とする集団相談プログラムを新設する。雇用労働部が指定する再就職斡旋機関の「中高年仕事希望センター」において中高年担当コンサルタントを増員する。製造業生産職及びサービス職従事者の最適型生涯経歴設計サービスを拡大する。40代の雇用実態に関する現場中心の総合分析を通じて、需要・供給の側面でマッチングを考慮した40代向け雇用対策を整備する(2020年第1四半期)。

50~60代に対しては、「新中年経歴型地域職場事業」(地方自治体が地域社会に必要な社会サービス関連業務に新中年を採用した場合、人件費を支援)を2019年の2,500人から2020年は5,000人に拡大する。新中年適合職務の雇用奨励金を2019年の5,000人から2020年6,000人に拡大する。一定規模以上の企業を対象に再就職支援サービスの提供を義務化する(2020年5月)。60歳以上の高齢者の雇用支援金を四半期当たり27万ウォンから30万ウォンに拡大する。高齢者継続雇用奨励金(月額30万ウォン)を新設する。就業支援プログラムに参加した満65歳以上の高齢者と1年以上労働契約した場合、雇用促進奨励金を支給する。

8.週52時間労働制の定着及び労働時間短縮の拡大

従業員50~299人の事業所における週52時間労働制定着のため、①1年の啓発期間付与、②特別延長労働(特別な事情がある場合、雇用労働部長官の認可と労働者の同意を得て、使用者が労働者に特別延長労働をさせることを許容する制度)の認可事由を通常でない業務量の大幅増加等にも拡大(表3)、③人材採用の支援強化及び外国人雇用限度の一時的拡大、④業種別特性を勘案した支援策推進――等の暫定的補完対策を実施する。

労働時間短縮のための新規採用人件費・労務費の支援、既存在職者に対する賃金保全及び生産性向上の支援等を行う。仕事づくり支援(2020年、661億ウォン、1.4万人)、職場革新支援(2020年、236億ウォン、2,200件)、労働時間短縮定着支援(2020年新規、46億ウォン、500カ所)等の事業を実施する。

弾力的労働時間制(変形労働時間制)の単位期間の延長等、週52時間制を補完する立法を継続して推進する。

表3:特別延長労働認可事由の拡大
認可事由 備考
人命の保護及び安全の確保のために必要な場合 救急患者の救助・治療、交通事故後、2次事故予防のための道路収拾等
施設・設備の突然の障害・故障等、突発的な状況の発生によりそれを収拾するために緊急な対処が必要な場合 突然の機械の故障、大学等の合格者発表の誤謬収拾、バス運行中、突然の交通渋滞により避けられない残業等
通常でない業務量の大幅な増加が発生し、短期間内にそれを処理しなければ事業に重大な支障や損害がもたらされる場合 元請けの突然の注文による差し迫った納期日、大量リコール事態、悪天候によって遅れた工期の補完、締切りが差し迫った会計処理業務等
「素材・部品専門企業等の育成に関する特別措置法」第2条第1号及び第1号の2による素材・部品と素材・部品生産設備の研究開発及びその他の研究開発を行う場合であって、雇用労働部長官が国家競争力の強化及び国民経済の発展のために必要と認める場合 素材・部品・装備特別法改正案上の「特化先導企業」が「中核戦略技術」を開発するために必要な場合、輸出規制等により迅速な国産化が必要な研究開発等

出所:雇用労働部発表資料「50~299人週52時間制定着のための補完対策」を基に作成。

9.職務・能力中心の賃金体系改編の持続的推進

職務・能力中心の人事管理体系、賃金体系を普及させるための支援を行う。職種レベルで職務の相対的価値を判断するための職務評価ツールが開発された8つの業種(保健医療・IT等)のうち、職務中心の賃金体系希望企業(業種別に2~3社)を対象に6カ月間の専門コンサルティングを提供する(2020年、4億ウォン)。

市場賃金情報を拡充するため、企業規模・産業及び職種・経歴等による多様な市場賃金情報を分析・提供するなど、賃金職務情報システムを改善する。産業・業種別の特徴を反映した職務評価ツールを開発・普及させる。

年功賃金制から職務・能力中心の賃金体系に改編するため、職務評価等を通じた年功賃金制の緩和、生産性向上と賃金連係等の方策を検討し、社会的対話(経済社会労働委員会)を通じたコンセンサス拡大に努める。

10.特殊形態労働従事者等、新しい就業形態の労働者に対するセーフティーネットの強化

労災保険の特例を適用する特殊形態労働従事者の職種について、2020年は訪問サービス従事者、貨物ドライバー、2021年は介護・育児サービス従事者、IT業種等への拡大を検討する。

ハイリスク・低所得職種(クィックサービス(バイク便)、宅配運転手等)に従事する特殊形態労働従事者本人と事業主に対して、一時的に労災保険料の軽減措置を実施する。1年間は、特殊形態労働従事者本人の保険料負担を80~100%、事業主の保険料負担を60~80%、それぞれ軽減する。

公正な契約慣行を形成するため、クィックサービス・代行運転手、貸付・クレジットカード会員募集人、ソフトウェア開発者、ウェブトーン作者等の職種別標準契約書を導入し、その普及に努める。

参考

参考レート

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