移民と出生率の高さの関係について

カテゴリー:外国人労働者統計

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  • 国別労働トピック:2020年3月

2017年のフランスの期間合計特殊出生率(注1)(以下、出生率)は1.88であり、平均が1.59のEU加盟国の中で最も高い水準にある。出生率の高さが移民によって支えられているという指摘がある(注2)一方で、国立人口調査研究所(Ined)の研究結果(注3)によると、非移民がフランスの出生率の高さを支えているとの指摘がある(注4)

移民も非移民の高い出生率

国勢調査(Recensement de la France)によると、2017年の新生児76万人の母親の18.8%、14.3万人が移民であった。2009年には16.0%で、移民を母親とするフランス生まれの子どもの割合は大きくなっている。

国勢調査によると、2009年の出生率は非移民が1.91、移民が2.77、全体では2.00であった。したがって、移民の出生率が全体の出生率を0.09ポイント押し上げたことになる(図表参照)。同年に誕生した子供の母親のうち、出産可能な年齢の女性に占める移民の比率は10.6%に対して移民女性は16.0%であり、移民は非移民よりも母親になる割合が高い。2014年、非移民の出生率は1.88、移民は2.75、全体では1.99であったので、移民が0.11ポイント引き上げ、これは移民の女性の母親の占める比率と出産可能な年齢の女性に占める移民の比率が共に上昇(それぞれ17.8%、11.7%)したためである。

表:出生率の移民・非移民間の違い
画像:表

2017年には、非移民の出生率は1.77、移民は2.60、全体で1.88、移民女性によって、出生率が0.11ポイント押し上げられたことになる。

移民の出生率が非移民に比べて高いが、2009年、2014年、2017年の数値を見る限り、全体の出生率を0.09~0.11ポイント押し上げているに過ぎない。その分を差し引いても、フランスはヨーロッパで高い水準である。この傾向は第二次世界大戦後75年間続いている。これは家族支援政策の影響が大きい。

出身国による移民の出生率の違い

移民の出生率は出身国により大きく異なっている。2014年のアルジェリア・チュニジア・モロッコのマグレブ諸国出身者は3.5前後、マグレブ諸国以外のアフリカやトルコ出身者は3.0前後、それ以外の国・地域の出身者では2.0前後である。

出身国による差は減少傾向にある。例えば、1931年から1935年に生まれたマグレブ諸国からの移民の出生率は5.0近くであったのに対し、1961年から1965年に生まれたマグレブ諸国からの移民の出生率は2.8程度まで2ポイント強下がった。同様に、ヨーロッパ諸国からの移民は2.9程度から2.0程度まで低下した。その差は約2ポイントから0.8ポイントまで縮まっている。

欧州諸国間の相違

ヨーロッパ諸国の半数以上は、フランスと同様、移民が出生率をある程度押し上げている(注5)。だが、オランダやアイスランド、デンマークのように例外もある。オランダは移民が多い国だが、出生率に移民と非移民との間で大きな違いは見られない。アイスランドやデンマークは、移民が国全体の出生率を引き下げている。また、中東欧の旧バルト3国やポーランド、チェコ、ルーマニア、ブルガリアなどのヨーロッパの4分の1に当たる国々は、移民が多くないために、国全体の出生率に影響を及ぼしていない。

(ウェブサイト最終閲覧:2019年9月24日)

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