デジタル社会で求められる「スキル」とは
―OECDスキルアウトルック2019のポイント

カテゴリ−:人材育成・職業能力開発雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2020年1月

経済協力機構(OECD)は2019年5月、スキルに関するOECD諸国の現状と課題、提言をまとめた報告書『スキルアウトルック』2019年版を公表した。最新のデジタル技術の恩恵を十分に受けるには、人々のスキルレベルを向上させることが重要であるとして、スキル関連政策を中心とした包括的な政策の実施を各国に呼びかけている。

デジタル化に対応したスキルと求められる政策

デジタル化の影響を受けて仕事のあり方は変容しつつある。仕事の自動化により低技能職種が消失するリスクがある一方、デジタル化は新たな雇用機会も生み出す可能性がある。今後の創出・増加が見込まれる新たな仕事は、主に高度で非定型業務という特徴があるが、そういった仕事に円滑に移行・対応できるように、労働者は必要なスキルを身につけていかなければならない。

労働市場の変化から取り残されないようにするためには、生涯を通じてスキルの習得・向上に努めることが必要だ。人々が生涯にわたって学習機会を得られる環境を整え、変化するニーズに絶えず適応させていく積極的な対応が各国に求められる。

OECDはデジタル化に向けて様々な分野の政策を連携させる包括的なアプローチが必要とした上で、スキル関連政策はその柱であるべきと主張し、デジタル化を人々にとってより良いものとする重要な要素として注目している。

教育現場におけるデジタル化

デジタル化の影響は教育現場にも及ぶ。学校教育において最新デジタル技術を活用することは、学生が将来必要となるスキルを習得していく上で役立つだけでなく、効率的な教授法を促進することで、より行き届いた教育の実施を可能にする。OECDは各国に対し、カリキュラムや教育方針へのデジタル技術の取入れについて再検討するように呼びかけている。

また、教育現場でのデジタル技術の効果的な利用のためには、教師自身が必要なスキルを備えていなくてはならない。教育現場を変化するニーズに適応させていくには、教師のための質の高い職業訓練・教育システムを開発することも重要だ。

デジタル社会への日本の適応状況

OECDの分析によると、職場におけるICT強度(メールやオフィスソフト、プログラミングなどのICTの使用状況を指標化したもの)について、日本はイギリスやアメリカなど欧米各国に比べてやや遅れを取っている(図1)。教育現場についても同様で、授業におけるICT活用はそれほど進んでいない(図2)。一方、職務遂行のためにICT関連研修が必要だと感じている教員の割合は、調査に参加したOECD諸国の中で日本がトップであった(図3)。日本の学生や就労世代の認知能力やデジタルスキルの水準が比較的高いことも踏まえ、OECDはデジタル社会への適応に向けた日本の「潜在力」の高さを評価している。

図1:職場におけるICT強度
図1:画像

注:PIAAC2012より算出。

図2:授業で頻繁にICTを活用する教師の割合
図2:画像

注:TALIS2013より算出。

注:イギリスはイングランドのみ地域単位で参加、ドイツは不参加、アメリカは実施率が基準を満たさなかったため除外。

図3:ICT関連研修の必要性を感じている教師の割合
図3:画像

注:PIAAC2012より算出。

参考

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