2020年の最低賃金引上げ額の決定
 ―月額190USドルへ4.4%の引上げ

カテゴリー:労働法・働くルール労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2019年12月

2020年1月1日から適用される最低賃金が、月額190USドル(以下、ドル)に決まった。現行額182ドルから4.4%の引上げとなる(注1)

最賃委員会答申の額に首相が3ドル上乗せ

カンボジアの最低賃金の改定は、毎年、政労使三者の代表からなる全国最低賃金委員会で審議され、その審議結果が労働・職業訓練大臣に対して答申の上で、首相によって決定される。今回の改定では当初、使用者側の主要な代表である縫製業協会(GMAC)が会員企業の6割以上が引上げの余裕がないとする現状を踏まえて182ドルの据え置きを要求する一方、労働組合側はインフレ率等カンボジアの社会経済状況を踏まえて199ドルへの引上げを要求していた。審議を経て、使用者側が186ドル、労組側が195ドル、政府は187ドルを提案し(注2)、9月20日に投票が行われた。その結果、政府案187ドルが多数を得て、労働・職業訓練大臣に答申された。そこにフン・セン首相が3ドル上乗せし、最終的に190ドルとすることに決定した。委員会の答申額に上乗せする政治的な判断は、2016年の改定から恒例となっており、昨年までは毎年5ドル上乗せされていたが、今回は経営者側の要請に応じるかたちで3ドルの上乗せに留まった(注3)

2006年以降、低調な引上げ率

1997年に創設された最低賃金は、当初、3年から7年に1回の引上げだった。13年の改定からは毎年、引き上げられるようになっており、2015年までの引き上げで最賃額が急激に上昇した(図表参照)。その幅は2013年31.1%、2014年、2015年に20%台後半だった。2016年の改定の審議で、客観的基準(注4)が用いられてから、10%前後の引上げになり、2019年7.1%、今回は4.4%と落ち着きを見せている。政労使にとって妥当性の高い決定方式が定着しつつあると言える。

図表:最賃額と引上げ割合の推移(1997年~2020年)
画像:図表

出所:政府発表資料より作成

対ベトナム比で割高との指摘も

カンボジアの近年の最賃水準は周辺諸国と比較して高すぎるとの指摘もある(注5)。実際、ベトナムの2020年引上げ予定の各地域の最賃(7月発表)で、最も高い第1地域(ハノイやホーチミンなど)は442万ドン(約190.5USドル)と、今回発表されたカンボジアの最賃とほぼ同水準だった。第1地域以外はカンボジアよりも名目的には低い(注6)。ただし、諸手当や社会保険料がカンボジアよりも高く、単純に比較することはできない。周辺国と比較して労働生産性に見合っているのかどうかが、今後のカンボジアの最賃引上げの鍵となる。

(ウェブサイト最終閲覧日:2019年12月16日)

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