企業における男女平等指数の公表と労働条件の男女間格差の是正

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2019年9月

職場における労働条件の男女間格差を是正するため、2018年9月、男女平等指数を公表することが企業に義務づけられた。基準値を下回る場合、3年以内に是正することが求められる。

男女間の賃金格差がない企業は僅か6%

同一労働・同一賃金の原則は46年前に義務化された。しかし、労働省による約4万社を対象とした調査結果によると、従業員数50人以上で賃金の男女格差がない企業は僅か6%(注1)と、必ずしも順守されているわけではない。同一労働で比較すると女性の賃金は男性より9%低い。同一労働でない場合も含めると25%低い。

男女間格差を数値化し公表義務

こうした現状を受けて、賃金以外の昇進や昇給等を含めた労働条件の男女間格差を是正する対策、「賃金の男女間格差などを解消する行動プラン」が、2018年5月に策定された。2018年9月には、具体的な施策を盛り込んだ法律「職業の将来・前途を選択する自由のための法」(注2)が制定され、従業員数250人以上の企業では、賃金や昇進・昇給など5項目(従業員数250人未満の企業では4項目)の指標から算出された「男女平等指数」を公表することが義務づけられた(注3)。その指数は、①賃金格差(40点)、②昇給した者の男女比率(20点)、③昇進の男女比率(15点)、④出産・育児休暇からの復帰時の昇給の有無(15点)、⑤報酬上位10位に占める女性の割合(10点)の5項目で採点される。

①の賃金格差は比較可能なポストで同年齢の男女間の賃金のうち、基本給、能力給、現物支給の手当を対象とするが、夜間勤務手当、超過勤務手当、退職金などは対象から除く。④の出産・育児休暇からの復帰時の昇給の有無は、2006年に産休の期間の昇給が企業に義務づけられた(労働法典L1225-26条、男女の平等な賃金に関する法律(注4))。しかし、例えば3児の子を持つ女性とそうでない女性を、同じポストで比較すると、子を持つ女性の賃金が10%低いという調査結果がある(注3参照)ように本質的な解決に至っていない。「男女平等指数」にはこうした現状が反映している。

基準数値を下回った場合、3年以内に是正措置

この指数を公表する時期は、従業員規模別に猶予期間が設けられており、1000人以上は2019年3月1日まで、250人以上1000人未満は2019年9月1日まで、50以上249人未満は 2020年3月1日までと従業員規模が大きいほど厳格になっている。

指数で必要な点数は75点以上であり、それを下回った場合には3年以内に是正措置を講じなければならない。是正できなければ、現金給与総額の最大1%に相当する制裁金を科される可能性がある。前述の労働省調査では、9割を超える企業に男女間の賃金格差があることから、ほとんどの企業が何らかの形で対応を迫られる。

従業員規模1000人以上の大企業の半数が未公表

2019年3月1日づけで公表が義務づけられた従業員数 1000人以上の対象企業の約1400社うち、半数の約700社しか指数を公表していない(注5)。未公表企業に対する罰則の規定はないものの、速やかな公表が政府から求められることになる。

公表された企業のうち高得点を獲得したのは、フードサービスを中心とする多角経営のソデクソ・イジエーヌ&プロプルテ(100点)、保険のCNPとMAIF(共に99点)、英アパレルチェーンのプリマーク(99点)、製薬のサノフィ・アベンティス・フランス(98点)、タイヤ大手のミシュラン(94点)、通信大手のオレンジ(94点)、ラポスト(94点)と大手通販サイト・ラルドゥート(84点)などだった。

一方で、75点に満たない企業は、ボロレ・ロジスティクス(69点)、情報処理のアトス(71点)、国営ラジオ・フランス、GRDF(エンジー傘下)、アルセロールミタル(共に73点)などだった。

(ウェブサイト最終閲覧:2019年9月3日)

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