情報通信ツールの職務上の利用と就労状況
 ―労働省報告書

カテゴリー:労働条件・就業環境

フランスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2019年3月

労働省の調査・研究・統計推進局(DARES)が発表した情報通信ツールの仕事における利用と就労状況に関する報告書によると、フランスでは1990年代末以降、雇用労働者が仕事をする上で情報通信ツールを利用する割合が一貫して増加しているが、携帯性のあるツールか否か、接続可能なのか否かで、異なった特徴があることがわかった。

最近15年で情報通信ツールの職務上の活用が15ポイント増加

報告書によれば、仕事をする上で、情報通信ツール(パソコンやデジタル端末、電子メール、社内通信システムなど)を活用する雇用労働者の比率は、1998年には50.9%、2005年には59.6%であったが、2013年時点で71.1%まで増加している。15年間で20ポイント以上上昇したことになる。職業階級別にみてみると、上級管理職や高度な知的労働に従事する者において活用割合が最も高く、98.8%を占める。この割合は98年には85.0%、05年には93.5%だった。その他、中間職(上級管理職と一般職・現場労働者の間の職業階級)では、92.4%(98年には、70.9%、05年には81.8%)、一般事務職では64.0%(同、51.4%、53.5%)、現場労働者では34.8%(同、19.6%、26.2%)だった。いずれの職業階級でも職務で情報通信ツールを利用する者の比率は高まってきている。

上級管理職が携帯可能・接続可能な機器を活用

仕事で活用する情報通信ツールを「接続の可否」および「携帯性の有無」により区分すると以下のとおりである。「ネットワーク通信に接続可能」かつ「携帯可能」な情報ツールを利用する雇用労働者の割合は16.9%である一方、「勤務場所が固定」された職場で「通信接続可能」な情報機器を利用する者は45.8%、通信に接続しない情報機器を利用する者の割合は6.5%、職務上全く情報通信機器を利用しないのは30.9%だった。

「ネットワーク通信に接続可能」かつ「携帯可能」な情報ツールを利用する労働者の特徴は、上級管理職、職務上の責任が重く精神的な重圧がある、就労時間が長い、超過勤務が常態化している、就労時間外に自宅で就労することも多い、というものであり、私生活が犠牲になることや、勤務時間中に通信接続可能な端末でメールを受信することで仕事を中断されるなど、ストレスを感じることも少なくない。その反面、仕事の進め方や就労時間に関して、自己裁量の度合いが高かったり、仕事にやりがいを見いだすことも多い。

熟練の一般事務職が携帯性のない機器を利用

勤務場所が固定された職場でネットワーク通信に接続可能ではあるが、携帯が難しい情報通信ツールを活用する雇用労働者を、1日当たりの利用時間で区分すると、3時間以下には看護師や軍関係者、警察、消防隊員、製造業の組み立てラインが多く、7時間以上には熟練した一般事務職や中間職(注1)に多かった。携帯が難しいことから、私生活と仕事の区分は守られているものの、ネットワークにつながっていることから、予期しない業務により通常業務の中断を余儀なくされることや、一度に多くの仕事をこなさなければならないことがあり、プレッシャーを感じている者も少なくない。7時間以上、仕事で通信機器を利用している者の中には、ツールに依存し過ぎていると感じる場合も多い。一方、難しい場面に直面した場合、ネットワーク上で上司や同僚からの支援があるため、孤独を感じることは少ないという特徴がある。

非熟練労働者が非接続の情報機器を利用

ネットワーク通信に接続していない情報機器を利用する者は、25歳以下の若年層、非熟練の一般事務職、現場労働者が多いという特徴が見られた。職業としては、肉体労働者、皮革・縫製の非熟練労働者、小売り商店のレジ担当、美容師が該当する。自己裁量がなく、細分化された業務を担当している、1日当たりの就労時間が一定ではなく、他の労働者とほとんど関わりがない、仕事に対する重圧が小さく、超過勤務もほとんどないため、私生活に影響することも小さい。

参考資料

  • MAUROUX, Amélie, « Quels liens entre les usages professionnels des outils numériques et les conditions de travail ? », Dares Analyses, 2018-029, Dares du Ministère du travail, juin 2018.

(ウェブサイト最終閲覧:2019年2月22日)

関連情報