青年雇用問題の改善には、労働市場の二重構造の緩和が必要
韓国では青年の雇用問題が深刻な状況にあり、2017年の青年(15~29歳)の失業率は9.8%と、全体の失業率(3.7%)より6.1%ポイントも高くなっている。
韓国労働研究院(KLI)のレポート(注1)に基づき、韓国の青年雇用の現状と対応策について紹介する。
青年雇用の現状
韓国の青年(15~29歳)の雇用率は、2013年以降増加傾向にあり、2017年は42.1%(前年比0.4%ポイント増)であった(図1)。
全体雇用率と青年雇用率との格差は、2013年に19.8%ポイントあったが、2017年は18.7%ポイントに縮小した。
高校在学年齢の15~19歳の雇用率は、2009年以降増加傾向にあり、2017年は8.4%(前年比0.4%ポイント増)であった。20代の雇用率は最近減少傾向にあり、2017年は20~24歳が45.3%、25~29歳が68.7%で双方とも前年比0.8%ポイント減少した。
図1:青年(15~29歳)の雇用率の推移 (単位:%)
出所:韓国統計庁「経済活動人口調査」
青年(15~29歳)の雇用者数は、2013年以降、増加傾向にあったが、2017年は前年比1万2000人減の390万7000人であった。これは、20~24歳の雇用者数が前年比4万7000人減少したためであり、その他の年齢層の雇用者数は増加した。
最近、青年の雇用者数が減少したにもかかわらず、雇用率が増加したのは、青年の生産年齢人口が減少したからである。2017年の青年の生産年齢人口は、前年比7万7000人減少した。15~19歳及び20~24歳の人口が減少した一方、25~29歳の人口は増加した。
青年(15~29歳)の失業率は、2012年以降、増加傾向を示しており、2017年は9.8%であった(図2)。年齢別では、20~24歳の失業率が10.6%と最も高く、25~29歳の失業率は最も顕著な増加傾向を示している。
図2:青年(15~29歳)の失業率の推移 (単位:%)
出所:韓国統計庁「経済活動人口調査」
大学生の就職状況
韓国の4年生大学以上の青年が大学卒業に要する平均期間は61カ月である。男女別では、男性74カ月、女性52カ月と、男性が女性より22カ月も長い(図3)。
図3:大学卒業までの平均所要期間 (単位:月)
出所:韓国統計庁「経済活動人口調査」
2017年の青年大卒者のうち、休学を経験した割合は43.3%で、平均休学期間は27カ月である(表1)。男女別にみると、休学経験者の割合は男性77.8%、女性19.9%、平均休学期間は男性31カ月、女性16カ月となっている。これらの性別格差は兵役義務によるところが大きいが、それに加えて、資格試験の準備、授業料(生活費)の調達のための休学が女性よりも男性に多い。
青年大卒者 | 休学経験がある | 就学経験がない | 平均休学期間 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
兵役義務休学期間 | 就業及び資格試験の準備 | 語学研修及びインターンなどの現場経験 | 学費(生活費の用意) | その他 | ||||
全体 | 2,993 | 30.2 | 13.0 | 6.0 | 4.7 | 1.9 | 56.7 | 27 |
男性 | 1,209 | 74.8 | 13.6 | 5.6 | 6.8 | 1.3 | 22.2 | 31 |
女性 | 1,783 | 0.0 | 12.7 | 6.3 | 3.4 | 2.4 | 80.1 | 16 |
出所:韓国統計庁「経済活動人口調査青年層の付加調査」5月資料
就職に関する青年の厳しい状況は卒業後も持続している。卒業後、青年が最初の仕事に就職するまでの平均所要期間は12カ月で前年より1カ月増加した(図4)。男女別では、男性14カ月、女性10カ月となっている。
図4:卒業後、最初の仕事に就職するまでの平均所要期間 (単位:月)
出所:韓国統計庁「経済活動人口調査青年層の付加調査」5月資料
厳しい就職難を乗り越えて就職した青年の最初の仕事における平均勤続期間は19カ月に過ぎない(図5)。青年が最初の仕事を辞めた理由をみると、「労働条件に不満足」が51.0%(前年比2.4%ポイント増)で最も多い。
図5:最初の仕事の勤続期間 (単位:月)
出所:韓国統計庁「経済活動人口調査」5月資料
青年の最初の仕事の平均賃金をみると、100万~150万ウォン未満が37.5%、150万~200万ウォン未満が29.6%と、低賃金の仕事が67.1%を占めている。
最初の仕事の労働形態(2017年)は、契約期間1年以下の仕事が21.5%(前年比1.4%減)、時間制形態の仕事が16.1%となっている。
青年雇用問題の対応策
韓国雇用情報院の中長期人材需給見通しによると、2023年の若年層の生産年齢人口は805万9000人、経済活動人口は436万3000人にそれぞれ減少し、経済活動参加率は54.1%、雇用率は49.1%の水準と予想されている。
韓国労働研究院(KLI)のレポートによると、韓国の青年雇用問題の核心は、大卒以上の高学歴青年の就職難にあり、中小企業への就職忌避など人材需給ミスマッチに起因する就職難の割合が高い。これは労働市場の二重構造の深化により、内部労働市場と外部労働市場の労働条件格差が解消されていないためである。韓国の青年が大企業や公共企業の雇用に引き寄せられる現実をみると、労働市場の格差を解消することなしに、青年の雇用状況を改善することは難しい。
KLIは、青年の雇用問題を改善するための対策として、①大企業と中小企業の労働条件格差の解消(企業の賃金分布公示制の導入、賃金格差解消のための業界別・地域別の対話促進)、②青年層の労働市場への早期参入促進(卒後後、早期就職する青年に対する税制優遇措置の導入)、③労働時間の短縮を通じた雇用創出力の向上(長時間労働の是正、時間選択制雇用の活性化)、④新しい職業の開発による雇用創出(諸外国にあって韓国には存在しない新職業の創出)―などを提言している。
注
- キム・ユビン(2018)「青年雇用の現況及び対応方策」『Monthly Labor Review』3月号、韓国労働研究院(本文へ)
参考レート
- 100韓国ウォン(KRW)=10.01円(2018年12月11日現在 みずほ銀行ウェブサイト)
関連情報
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:掲載年月からさがす > 2018年 > 12月
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:国別にさがす > 韓国の記事一覧
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:カテゴリー別にさがす > 雇用・失業問題、若年者雇用、労働条件・就業環境
- 海外労働情報 > 国別基礎情報 > 韓国
- 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書:国別にさがす > 韓国
- 海外労働情報 > 海外リンク:国別にさがす > 韓国