ハラスメント禁止に関する新たな条約
―ILO、拘束力のある条約制定を目指す
5月28日から6月8日にかけて、スイス・ジュネーブで、ILO年次総会が開催された。日本を含む187の加盟国の政府、使用者、労働者の代表が出席し、労働をめぐる様々な事項に関する議論と検討が行われた。その中で特に注目を集めたのは、「職場における暴力と嫌がらせ(ハラスメント)」に関する新たな基準設定に向けた討議である。
「職場における暴力とハラスメント」に関する新基準の採択に向けて
セクハラやパワハラなど、職場における暴力やハラスメントは、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」を目指すILOの任務の根幹に係わる重要な問題だが、これを直接取り上げた基準は現在のところ存在していない。ILOは、こうした問題の解決に取り組むため、新たな基準の採択を目指す2回の討議手続きのうちの第1次討議を行った。
討議では、2本の報告書が提示された。1本は、『仕事の世界における男女に対する暴力とハラスメントに終止符を打つ(報告書1)』と題する、加盟国の職場におけるハラスメントの現状と分析を行ったものである。もう1本は、上述の報告書に関する基準設定について、加盟国政労使の見解を記した報告書となっている。
日本に関しては、2012年の企業4580社に対する調査で、労働者の45.2%がパワーハラスメントにあったと回答している(Lerouge and Naito, 2016)ことや、非正規労働者の場合、職場におけるハラスメントのリスクが高いという調査結果(Tsuno et al.,2015)などを取り上げている。このほか、「過労死」という概念を説明し、2015年7月24日に閣議決定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の概要などを紹介している。
討議の結果、パワハラやセクハラを告発する「#MeToo」運動が世界各国に広がる中、各国のハラスメント対策の後押しをするため、今後、拘束力のある条約を目指す方針で一致した。
資料出所
- ILO 08 June 2018(Summary of the work of the Committees of the 107th International Labour Conference), Ending violence and harassment against women and men in the world of work(Report V(1) / Report V(2), ILO駐日事務所 サイト(第107回ILO総会)ほか。
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