マクロン大統領による労働法改革が始動
―企業の競争力を強化めざす

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  • 国別労働トピック:2017年8月

5月7日の大統領選挙の決選投票で、政治運動「アン・マルシュ(前進)!」を率いるマクロン氏が、国民戦線のル・ペン氏を降して当選した(注1)。5月14日、大統領に正式に就任し、翌日にはフィリップ下院議員を首相に指名。17日には組閣し、新しい労働大臣にはフランス貿易投資庁のペニコー代表が任命された。

新労働大臣にペニコー・ビジネスフランス代表を起用

新労働大臣(Ministre du Travail)には、フランス貿易投資庁(ビジネスフランス)の代表であるミュリエル・ペニコー氏が任命された。ペニコー新大臣は、食品大手・ダノンの人材育成部長や複合企業体「グループ・ダッソー」のソフトウェア会社・ダッソーシステムの役員のほか、シラク大統領の時代、ドビルパン内閣の下で国立労働雇用職業訓練研修所(INTEFP)所長等を歴任した人物である(注2)

前政権マクロン法を更に推進

マクロン大統領は就任早々、山積する課題に直面する。まず取り組むべき政策の一つとして労働法典改革が挙がっている。企業の競争力強化を促進するための諸改革をさらに進めていく考えを示しており、今夏には労使との具体的な協議を開始する予定である。

マクロン大統領は、ヴァルス内閣で経済・産業・デジタル相を務めた2015年8月、「経済成長・活性化および経済的機会均等法(通称、マクロン法)を成立させている。この法律は、5回に制限されていた商店の日曜営業日の緩和や長距離バス路線の自由化など広範囲にわたる規制緩和を盛り込んだ法律である。

前政権下では労働法改革による規制緩和もすすめられた。零細企業の労使対話や個別企業単位で労働条件の決定を促進する改革であった。マクロン大統領はこうした労働法改革の路線を引き続き行う方針を示している。

前法案では断念した解雇賠償金の上限設定も法案化検討

今回の労働法典改革は以下の項目が検討課題になる。(1)企業単位の労使合意で決定できる案件を増やすことによる柔軟度の向上、(2)不当解雇の際に企業が支払う賠償金額の上限設定、(3)失業保険制度の改正(失業手当給付の対象者の拡大と不正受給検査の強化)(注3)。(1)は昨年成立したエルコムリ法で行われた改革をさらに進める内容となるが、(2)は反対の声が大きく法案審議の過程で削除された項目である。

使用者側が評価する一方で、労組側とは対立する点も

マクロン大統領は、今夏に労使との協議を進めて、夏休み明けには施行というスケジュールを考えている。しかし労組側は、夏休み明けの施行では十分な議論ができないため、早急に改革を進めることには強く反対している(注4)

特に不当解雇の際の賠償金の上限設定について、主要労組のCGTは強く反対する姿勢を見せており、協議の進め方如何では改革が早い段階で頓挫する懸念がぬぐえない。CGTは法定最低賃金(SMIC)の引き上げを主要な要求事項に掲げており、この点でも大統領の方針と対立する。

一方で経営者側は、大統領が選挙期間中から「就労条件の過酷さに基づいて早期退職を認めるアカウント制の中断」を約束したことを高く評価している(注5)。この制度は、レプサメン法によって導入された「労働者の権利のための口座制度」であり、17年1月から実施されたものである。

労働法典改革に国民の4割以上が賛成

国民は労働法典改革に概ね賛成している。5月29日に公表された労働法典改革に関するアンケート調査によると、国民の44%が改正に賛成。だが、「不当解雇の際の賠償金への上限設定」には56%が反対している(注6)

(ウェブサイト最終閲覧日:2017年7月28日)

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