国有企業役員の業績評価基準を明示

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国務院(政府)の国有資産監督管理委員会(国資委)は2016年12月15日に、「中央管理企業責任者経営業績考課弁法」(以下:「弁法」)を公布した。中央政府が監督・管理する国有企業(中央管理企業)を「ビジネス(商業)類」「公益類」などに分け、各責任者(役員)それぞれの任務に適した業績評価基準を示している。基準をA~Dの4段階に区分することや、業績を反映する「任期激励給」(インセンティブ給)の水準は年収の30%を超えないようにすること、二年連続でD評価を受けると、その責任者は交代になることなども盛り込んでいる。

役員の給与水準見直し

弁法の対象になるのは、中央(政府)が管理する国有企業111社(注1)の董事長(取締役会会長)、党委員会書記、総経理(社長)らの役員層である。これらは石油、鉄鋼、通信など中国を代表する大企業で、産業構造の転換、経営の効率化を進めようとする現政権の方針のもと、事業の統合を含む大胆な変革を求められている。

人事管理面の改革としては、2015年1月に「中央管理企業責任者の給与制度改革方案」(以下:「給与改革方案」)を施行し、主要責任者の高額給与の見直しに着手した。主要責任者と一般職員との平均賃金の格差は、2010年には13.39倍に達しており、制度改革によって10倍を超えないようにする考えが示されている。

なお、国資委は2016年12月29日、中央が管理するすべての国有企業の経営責任者の年収(2015年度、税引前)を初めて公表した。それによると、最高は120万元(約2000万円)で、多くは50~80万元(約835~1336万円)程度となっている。

給与制度見直しの主な内容は、主要責任者の給与を「基本年給」「業績年給」「任期激励給(インセンティブ給)」に再編し、業績に基づく部分が占める割合を増やすものである。業績を評価する具体的な方法・基準については、2013年2月に公布された「中央管理企業責任者経営業績考課暫定弁法」(以下:「暫定弁法」)があった。今回の「弁法」は「給与改革方案」の内容を反映して「暫定弁法」を修正したものだ。これにより中央管理企業の主要責任者の業績評価、給与制度の見直しが本格的にスタートしたことになる。

企業の種類で三区分

「弁法」は、中央管理企業を「ビジネス(商業)類(競争領域)」「ビジネス(商業)類(国家安全保障や主要プロジェクトに関する領域)」「公益類」の三つに区分し 、それぞれの機能に適した業績評価基準を示している(注2)(表1)。

表1:中央管理企業幹部の業績評価基準
分類項目 主な業績評価基準
ビジネス(商業)類 競争領域 経済的利益、投下資本利益率、市場競争力、社会的責任
国家安全保障・主要プロジェクトに関する領域 国家戦略・安全保障・国民経済への奉仕、展望・戦略、(プロジェクトの)完成状況
公益類 公共サービス提供の保障、品質、運営効率
(各類共通) 経営の性質、発展段階、管理上の制約、産業の機能

「商業類(競争領域)」は、市場競争が進んだ状態にある業界や分野の企業で、自動車などの製造業や航空運輸などの業種が該当するとみられる。そこでは「経済的利益」「投下資本利益率」「市場競争力」「社会的責任」などが業績評価の基準になる。

「商業類(国家安全保障や主要プロジェクトに関する領域)」に当たるのは、国家の安全や国民経済にとって重要な任務、または国家的に重大なプロジェクトを担う分野の企業になる。評価のものさしになるのは「国家戦略、安全保障、国民経済への奉仕」「展望、戦略」「(プロジェクトの)完成状況」などだ。

「公益類」は電力やガスといったインフラを提供する業種などにあたり、公共サービス提供の保障、品質、運営効率などが評価基準になる。

以上に加え、各分類に共通する評価基準も設けている。それは「経営の性質」「発展段階」「管理上の制約」「産業の機能」である。

4段階で評価

主要責任者の給与を構成する三つの要素のうち、「基本年給」は各年度に決まって支給されるものである。「業績年給」は基本年給を基数として、年度ごとの経営業績評価の結果を組み合わせて計算して決まる。「任期激励給(インセンティブ給)」は任期中の経営業績評価の結果に基づく額とするが、年収の30%を超えない。

個々の評価は国資委が行う。評価結果は4段階(A~D)にランクづける(注3)。二年連続でDの判定を受けた場合、特別な事情がないかぎり、その責任者は変更される。

参考資料

  • 国務院国有資産監督管理委員会ウェブサイト、人民網

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