独立労働者(インディペンデント・ワーカー)が世界で増加

カテゴリー:多様な働き方

アメリカの記事一覧

  • 国別労働トピック:2017年2月

生産年齢人口のうち、雇われずに働く独立労働者(インディペンデント・ワーカー)の占める割合が米国で約27%だったことを、コンサルタント企業マッキンゼー社が報告した。

独立労働者とは誰のことか?

報告書は独立労働者(インディペンデント・ワーカー)を次のように定義する。

  • 高い自律性
  • 仕事や課題ごとの報酬の支払い
  • 労働者と顧客との短期間の関係

こうした働き方をする労働者は、米国およびEU15か国の生産年齢人口の20から30%おり、最大で1億6200万に達するとする。米国では生産年齢人口の約27%で5400から6800万人いる。この割合は、スペインの約31%(700~1200万人)、フランスの約30%(900~2100万人)、スウェーデンの約28%(100~200万人)に次ぐ4番目の高さとなっており、英国の約26%(600~1400万人)、ドイツの約25%(700~1300万人)が続く。人数だけをみれば米国が圧倒的である。

米国の独立労働者の内訳は、25歳以下の若年者が23%、女性が51%、世帯年収2万5000ドル以下の者が21%、65歳以上の高齢者が8%だった。スペインは世帯年収が低い者が39%という特徴があるが、その他の国では女性が45%から57%を占めており、女性に多い働き方であることがわかる。

必要性に駆られる労働者は1900万人

報告書は、独立労働者として働く人を次の四象限に分けて分析している。

  主たる収入 補足的収入
自発的選択(Preferred Choice) フリーエージェント(Free Agents) カジュアルな稼ぎ手(Cusual Earner)
必要な選択(Necessary Choice) いやいやながらの労働者(Reluctants) 財政難(Financially Strapped)

「自発的選択」で、主たる収入としている人をフリーエージェントと呼び、配管工や指圧師といった個人事業主。自発的選択で補足的収入を得る「カジュアルな稼ぎ手」で趣味的な創作者や講演家。必要に迫られて主たる収入とする「いやいやながらの労働者(リラクタント)」で、パーマネントで働きたいが短期間の臨時的な仕事をしている者。必要に迫られて補足的収入としている「財政難」でたとえば週末にペンキ屋をしているビル清掃人。

米国は、「カジュアルな稼ぎ手」をしている割合がもっとも高く、40%で2700万人。「フリーエージェント」が32%で2200万人で続く。「財政難」と「リラクタント」はそれぞれ14%と低く見える。だが、「必要な選択」としてまとめれば28%、1900万人とけして低い数字ではない。

調査では、従来型の雇われて働く場合との仕事上の満足度の比較を報告している。「自発的な選択」では全般的に従来型の働き方よりも満足度が高くなる。一方で、「必要な選択」の場合は、独立性や雰囲気、柔軟な時間や場所といった項目で従来型の働き方よりも満足度が高まるものの、収入の安定や収入の水準といった生活に直結する項目で満足度が低くなった。

4% ―米国・EUでシェアリング・エコノミーで働く労働

報告書では、インターネットを媒介にして労働者と顧客をつなぐ、いわゆるシェアリング・エコノミーについても触れている。ウーバーやリフト、Airbnbといったデジタルプラットフォームで働く労働者の数は急増中であるものの、米国とEU15か国の生産年齢人口全体の4%、独立労働者の15%にすぎないと指摘する。なお、労働者の数は2400万人とけして少なくはない。そのうち、労働力を提供する労働者が6%で900万人、商品を売る労働者が63%で2100万人、資産を貸す労働者が36%で800万人となっている。

独立労働の拡大に向けて必要なこと

報告は、独立労働が経済発展や失業の緩和や労働力参加、需要喚起や生産性向上に資する一方で、政策立案者には正確な統計データの収集、従来型の働き方をする労働者と比較した場合の収入や手当、安定における格差の縮小を求めている。独立労働者には、自らの働き方を企業と同じようにとらえるとともに、差別化できるスキルをみにつけることが必要だとした。そのうえで、新しい市場やツールを創り出すことや、企業においては外部の才能を活用するためのデジタル技術を考慮する必要性を指摘した。

米国は2005年以降、独立労働者の正確な数を把握するための調査を実施しておらず、2017年に実施する予定となっている調査が待たれている。

(調査部海外情報担当 山崎 憲)

参考

  • McKinsey&Company, (2016) "Independent Work Choice, Necessity, And The Gig Economy", Executive Summary, McKinsey Global Institute.

参考レート

2017年2月 アメリカの記事一覧

関連情報