若者雇用エージェンシー、職業移行にプラスの効果
―IAB報告

カテゴリー:職業相談・職業情報・職業適性若年者雇用

ドイツの記事一覧

  • 国別労働トピック:2016年12月

ドイツ労働市場・職業研究所(IAB)は、各地で導入が進む若者雇用エージェンシー(JBA)の効果に関する分析結果を初めて公表した。それによると、総じて若者雇用エージェンシーは、若者の学校から職業への円滑な移行にプラスの効果があることが明らかになった。

各地で導入が進むJBA

若者雇用エージェンシー(Jugendberufsagenturen, JBA)は、2010年に 連邦雇用エージェンシーと連邦労働社会省が共同で推進したイニシアチブ「若者と職業のためのワークアライアンス(Arbeitsbündnisse Jugend und Beruf)」に端を発し、近年各地で導入が進んでいる。2013年11月末に締結された現政権の連立協定にもJBAの導入促進が盛り込まれている。2015年7月末時点で、雇用エージェンシー(AA)が関与するJBAは、国内で計218カ所に達している(注1)

運営主体は三者

若者雇用エージェンシー(JBA)は、25歳以下の若者を対象に、学校から職業への移行支援をしている。運営主体は、「雇用エージェンシー(AA)」、「ジョブセンター(Jobcenter)」、「自治体の青少年局(Jugendamt)」の三者である。

「雇用エージェンシー(AA)」は、国内に156カ所あり、労使拠出の保険料が財源の失業手当Ⅰに基づく給付業務や職業紹介、相談支援などを行っている。他方、「ジョブセンター」は、租税が財源の失業手当Ⅱに基づく給付業務や求職者支援を行っており、主に長期失業者やその家族を支援対象としている。ジョブセンターはAAと地方自治体との共同運営が303カ所、認可された地方自治体の単独運営が105カ所ある(2015年)。また、「青少年局」は、都市(Stadt)と郡(Landkreis)に各々設置されており、日本の地方自治体における児童福祉課に相当する業務等を担っている。

総じて効果あり、と暫定的に評価

ドイツ労働市場・職業研究所(IAB)は今回の分析に際して、雇用エージェンシー(AA)の提供データを元に独自計算を行い、若者雇用エージェンシー(JBA)が存在するAAの管轄区と、存在しない同管轄区を比較した。

その結果、総じてJBAが存在する管轄区の方が、存在しない管轄区よりも企業で数年間にわたり実習を行う職業訓練ポスト(注2)へ移行できた若者の割合が高いことが判明した。

ただ、その効果は、旧西ドイツ地域や都市部では顕著だったが、旧東ドイツや農村部では、JBAの有無による有意な移行率の相違は見られなかった。

なお、IABは、今回の分析について、「導入初期の3年間という短期間に対する分析で、あくまで暫定的なものである。信頼に足る長期的な分析結果が出るのは、正確な情報を含む長期間の時系列データが得られた場合に限る」との条件を付している。特に2013年から2014年にかけての導入調査は、2015年調査ほど厳密なものとはなっていない、としている。

学校との連携強化が鍵に

ドイツ労働市場・職業研究所(IAB)によると、若者の職業訓練ポストへの移行率が高かった地域では、雇用エージェンシー(AA)、ジョブセンター、青少年局の三者が、「若者雇用エージェンシー(JBA)」が導入される以前から、多かれ少なかれ密接に協力しあっていた。そのため、JBAが従来と異なる効果の高い活動を実際にいつ開始したのかは、厳密に確認できていない。

また、今回の分析では、AA、ジョブセンター、青少年局の三者に加えて、「学校」が重要な協力相手であることが明らかになった。これまで学校を卒業して社会に出る時に円滑な移行ができず、支援対象から外れて見失ってしまった若者も多かった。学校との連携強化を通じて、今後はこうした若者を見失わないようにすることも、JBAの大切の役割の一つとなり得るとIABでは見ている。

参考資料

  • IAB Jugendberufsagenturen und die Vermittlung von jungen Erwachsenen in Ausbildung und Arbeit(15/2016)、JILPT(2015)資料シリーズNo.150 ほか

関連情報