「女性サミット」
―女性の権利の向上を目指してホワイトハウスが開催

カテゴリー:労働法・働くルール

アメリカの記事一覧

  • 国別労働トピック:2016年9月

ホワイトハウスは、初めての試みとして「女性サミット(United State of Women Summit)」を6月14日に開催した。オバマ大統領は2009年3月の大統領令により、「女性と少女の協議会(Council on Women and Girls)」をホワイトハウスに設置したが、「女性サミット」はその活動の成果を広く周知するためのものとなった。

「女性と少女の協議会」

大統領令13506で示された「女性と少女の協議会(Council on Women and Girls)」の目的は、人種の違いや障害の有無を問わず、女性と少女の生活の向上にむけてインパクトを与えるとともに、連邦政府が行う施策を提案することにある。

これは、次のような現状認識に基づいている。

  • 大学や大学院といった高学歴の女性が増え、企業の役員を含めた働く現場への進出が多く見られるようになるなかで、依然として存在する男女間の賃金格差や科学、技術、工学、数学といった分野において少数にとどまる。
  • 多くの女性が健康保険に加入していない。
  • 世界規模で女性や少女に対する暴力が存在している。
  • 教育機会が男性と比較して与えられていない。
  • 経済危機のなかで女性が男性よりも深刻な影響を受けている。

そのうえで、大統領令は、家族休暇や男女間の賃金格差を解消することで、地域コミュニティ、経済、そして未来において、家庭に良い影響をもたらすとした。

協議会は、各省庁の長官を常任委員として、大統領に必要な施策を提案することになる。

「女性サミット」

「女性サミット」は、7年に及ぶ「女性と少女の協議会」の活動を受けて、成果を広く社会に周知するために開催された。主催はホワイトハウスである。

「女性の合衆国;The United State of Women」を標語に、経済権限の付与(Economic Empowerment)、健康(Health & Wellness)、教育機会(Educational Opportunity)、女性に対する暴力(Violence Against Women)、企業とイノベーション(Entrepreneurship & Innovation)、リーダーシップと市民参加(Leadership & Civic Engagement)の六つの項目に関し、さまざまな組織の代表者によるスピーチが行われた。

サミットではオバマ大統領も演説し、就任後の2009年に最初に調印した「レッドベター公正賃金法(The Lilly Ledbetter Fair Pay Act of 2009)」をとりあげて、男女間の格差を解消するためのたゆまぬ進歩の必要性を強調した。同法は、差別が生じてから180日以内に訴え出なければならなかった規定を、最後の賃金が支払われてから180日以内へと変更するものである。これは、法律の名前にもなったリリー・レッドベター氏の長年の努力に基づいている。

「労働組合がカギ」―ペレス労働長官

サミットでは、ペレス労働長官がスピーチにたち、「統計的にみても労働組合が女性の権利向上において重要な役割を演じてきた」と発言した。労働組合に組織されている女性は、組織されていない女性に対して13%ほど賃金が高く、健康保険に加入している割合も高い。

関連して、複数の労働組合代表からは、職場における授乳場所の確保や子育てにおける柔軟な働き方などの導入が、労働組合の交渉の成果であるとする報告が行われた。

サミットにあわせて、雇用機会均等委員会(The Equal Employment Opportunity Commission)は「男女同一賃金について知るべきこと」「連邦法に基づく妊娠した労働者の法的権利」「職場での妊娠に関する制限と規制」と題する三つの文書を公開した。

「女性サミット」は、女性の権利向上の運動に関する情報を継続的に発信するウェブサイトTHE UNITED SATES OF WOMAN新しいウィンドウへと活動が引き継がれていくことになる。

(国際研究部 山崎 憲)

参考

  • Dorrian, Patrick (2016) EEOC Issues Documents on Equal Pay, Pregnancy Bias, Daily Labor Report, June. 14.
  • Penn, Ben (2016) DOL Calls Unions Key to Women's Prosperity, Daily Labor Report, June. 15.
  • Siddiqui, Sabrina (2016) Obama sets tone at United State of Women and renews call for equality, the guardian, June. 15.

2016年9月 アメリカの記事一覧

関連情報