外国人就業者の現況
―非就労資格による就業者の増加について、韓国雇用情報院(KEIS)がレポート

カテゴリー:外国人労働者

韓国の記事一覧

  • 国別労働トピック:2016年6月

韓国に在留する外国人就業者の現況について、韓国雇用情報院(KEIS)がレポートを公表した。近年、外国人就業者は増加傾向を示しているが、中でも、『在外同胞(F-4)(注1)』『永住者(F-5)』といった在留資格者が増加し、これにともない、彼らのように就労資格を所持せずに就業する外国人が増加しているとKEISは指摘する。KEISは、彼らのような就労資格を所持しない外国人就業者を《非就労資格外国人》と呼び、就労資格を所持して就業する《就労資格外国人》の動向にも増して、今後はこの《非就労資格外国人》の分析が重要になっていくことを指摘している。以下、KEISのレポートの概要を紹介する。

国内在留外国人の現況

韓国における外国人就業者は、就労資格を所持する就業者と、就労資格を所持せずに就業する者に分類することができる。外国人に付与される就労資格には、高度人材に付与される『専門職人材(E-1~E-7)』、非専門職人材が対象とされ、雇用許可制(注2)の制度下に置かれる『一般雇用許可(E-9)』と『訪問就業(H-2)』、その他、『船員就業(E-10)』『短期就業(C-4)』等がある。これらの就労資格による就業が《就労資格外国人》である。一方、『留学生(D-2)』『在外同胞(F-4) 』『永住者(F-5)』『結婚移民者(F-6)』等による在留資格の場合、就労資格を所持せずに就労することが一定の条件下で可能であり、これら就業者が《非就労資格外国人》ということになる。

本レポートでは、統計庁の「外国人雇用調査」に基づき、《非就労資格外国人》が増加している点に注目した分析を行っている。統計庁の「外国人雇用調査」によれば、2015年5月現在、国内に常住する15歳以上の外国人は137万3000人で、前年比で11万8000人増加した。このうち、就業者数は93万8000人で、前年比で8万6000人の増加である。全就業者比で見ると、外国人就業者の割合は3.6%(前年比0.3ポイント増)となる。

また、外国人の就業率は68.3%と高く、前年比でも0.4ポイント上昇している(図表1)。

図表1:国内在留外国人の経済活動状態現況
(単位:人、%)
  2012年6月 2013年5月 2014年5月 2015年5月
外国人 全体 外国人 全体 外国人 全体 外国人 全体
就業者
(就業率)
791
(71.0)
25,117
(60.4)
760
(67.5)
25,398
(60.4)
852
(67.9)
25,810
(60.8)
938
(68.3)
26,189
(60.9)
失業者 33 822 33 797 44 951 48 1,022
非経済活動人口 290 15,622 333 15,853 360 15,691 387 15,764
全体 1,114 41,561 1,126 42,047 1,256 42,453 1,373 42,975
  • 出所:韓国雇用情報院(KEIS)の資料を基に作成。

更に、就労資格の有無別に見ると、就労資格外国人の就業率は90.8%と90%を上回り、非就労資格外国人でも就業率は50.8%と50%を上回っている(図表2)。

図表2:国内在留外国人の就業率現況
(単位:千人、%)
  2012年6月 2013年5月 2014年5月 2015年5月
就労資格 91.9 90.2 90.9 90.8
非就労資格 48.9 48.8 49.5 50.8
全体 71.0 67.5 67.9 68.3

国内に常住する外国人の増加とともに、その経済活動も活発になっていく中、最近の特徴は非就労資格外国人の増加である。特に『在外同胞』『永住者』の資格者を中心とした増加、中でも、『在外同胞』の資格による就業者数の増加が著しいとKEISは指摘する。雇用許可制の制度下で、『非専門人材』と『訪問就業』の資格所持者が厳密に管理されているのに対し、『在外同胞』や『永住者』といった非就労資格外国人による就業者の増加が今後、外国人労働市場にどのような変化を与えていくのかに注視していく必要がある。

近年の在留資格別に見た外国人就業者の現況については図表3のとおりである。

図表3:在留資格別に見た外国人就業者の現況
(単位:千人、%)
  2012年6月 2013年5月 2014年5月 2015年5月
人数 割合 人数 割合 増減 人数 割合 増減 人数 割合 増減
全体 791 100.0 760 100.0 -31 852 100.0 92 938 100.0 86
  就業資格 527 66.6 459 60.4 -68 506 59.3 47 454 58.1 39
非専門就業(E-9) 238 30.1 226 29.7 -13 247 28.9 21 264 28.1 17
訪問就業(H-2) 241 30.5 186 24.4 -56 212 24.8 26 234 25.0 23
専門職人材(E-1~E-7) 47 6.0 48 6.3 1 47 5.6   47 5.0 -1
  非就業資格 265 33.4 301 39.6 36 346 40.7 46 393 41.9 47
留学生(D-2) 13 1.6 11 1.4 -2 8 0.9 -3 10 1.1 2
在外同胞(F-4) 99 12.5 124 16.3 25 148 17.4 24 180 19.2 31
永住者(F-5) 47 6.0 58 7.7 11 72 8.4 13 83 8.8 11
結婚移民者(F-6) 60 7.6 58 7.6 -2 61 7.2 3 61 6.5 -1
その他 45 5.7 50 6.6 5 58 6.8 8 60 6.4 2
  • 出所:韓国雇用情報院(KEIS)の資料を基に作成。

非就労資格外国人の特性

就労資格外国人と非就労資格外国人のどちらの場合も就業先の中心は、鉱工業であるが、就労資格外国人の就業先が鉱工業の一極に集中しているのに対し、非就労資格外国人は、卸小売業、飲食・宿泊業等のサービス業で働く割合が比較的高くなっている点が特徴的である。非就労資格外国人の中でも、とりわけ『在外同胞』がサービス業に就く割合が年々増加している(2012年14.6%→2015年25.1%)(図表4)。

図表4:産業別在外同胞(F-4)外国人就業者の現況 (単位:千人、%)
  2012年6月 2013年5月 2014年5月 2015年5月
農林漁業 3(2.7) 2(1.5) 3(1.9) 3(1.9)
鉱工業 44(44.0) 54(43.9) 53(35.5) 54(30.3)
建設業 5(4.8) 5(3.8) 16(10.7) 17(9.3)
卸小売、飲食、宿泊 14(14.6) 19(15.5) 30(20.2) 45(25.1)
電気、運輸、通信、金融 5(5.0) 5(4.1) 5(3.2) 5(2.7)
事業、個人、公共サービス 29(28.9) 39(31.3) 42(28.5) 56(31.0)
全体 99(100.0) 124(100.0) 148(100.0) 180(100.0)
  • 出所:韓国雇用情報院(KEIS)の資料を基に作成。

外国人が働く事業所規模との関連を見ると、サービス業に従事する外国人は、主として従業員5人未満の零細な事業所で働いており、鉱工業に従事する外国人が勤務する事業所はそれに比べると従業員規模が大きいという特色も表れている(図表5)。

図表5:産業及び規模別非就労資格外国人就業者の現況
(単位:%)
  1~4人 5~9人 10~29人 30~449人 50~299人 300以上 全体
農林漁業 57.7 21.8 18.5 2.0 0.0 0.0 100.0
鉱工業 7.6 12.0 27.6 13.8 31.0 7.9 100.0
建設業 12.5 35.8 29.4 14.8 6.1 1.4 100.0
卸小売、飲食、宿泊 55.6 26.3 10.1 3.1 3.3 1.6 100.0
電気、運輸、通信、金融 14.6 4.1 26.3 5.4 37.5 12.2 100.0
事業、個人、公共サービス 35.7 15.6 19.7 9.5 12.4 7.2 100.0
全体 31.0 19.1 20.5 9.1 15.1 5.2 100.0
  • 出所:韓国雇用情報院(KEIS)の資料を基に作成。

技能水準との関連で見ると、就労資格外国人は技能水準が低い職種に就く傾向があるが、非就労資格外国人はそれに比べると比較的技能水準が高い職種に就く傾向が見られる。例えば、2015年のデータでは、就労資格外国人は、機械操作、組立て、その他単純作業等の職種に就いている割合が80%以上であるのに対し、非就労資格外国人の場合、これらの職種に就く割合が最も高いものの、50%台に留まっており、比較的学歴も高い20代、30代の若い年齢層では、管理者・専門家の職種に従事する割合が20%台に上っている。また、40代、50代、60代と年齢層が上がるほど、技能水準の低い職種に就く割合が高まっていくという特色も見ることができる(図表6)。

図表6:年齢別《非就労資格外国人》就業者の職種分布
(単位:%)
  20代以下 30代 40代 50代 60代 全体
管理者、専門家等 20.3 22.2 16.9 13.7 8.5 17.0
事務従事者 11.2 14.6 4.3 3.5 1.6 7.5
サービス、販売従事者 22.5 16.8 21.2 15.2 17.7 18.7
農林漁業熟練従事者 3.1 2.5 2.7 2.0 4.2 2.8
機械操作、組立て従事者等 23.8 25.2 31.2 28.1 18.2 28.9
単純労務従事者等 19.2 18.6 23.6 37.4 49.8 28.1
全体 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
  • 出所:韓国雇用情報院(KEIS)の資料を基に作成。

次に賃金水準との関係を見てみる。2015年のデータでは、就労資格外国人も非就労資格外国人も、月平均賃金は100万~300万ウォン未満の水準である(図表7)。しかし、図表7が示すように、非就労資格外国人の場合、300万ウォン以上の割合と100万ウォン未満の割合が就労資格外国人に比べて大きいことがわかる。これは、非就労資格外国人の間に賃金格差が存在することを示唆している。

図表7:2015年就労資格別外国人就業者の賃金水準
(単位:%)
月間賃金水準 就労資格外国人 非就労資格外国人
300万ウォン以上 4.0 13.5
200万ウォン以上、300万ウォン未満 39.2 26.8
100万ウォン以上、200万ウォン未満 55.0 50.1
100万ウォン未満 1.8 9.6
  • 出所:韓国雇用情報院(KEIS)の資料を基に作成。

非就労資格外国人の増加と国内雇用への影響

以上のようにKEISは、統計庁の「外国人雇用調査」のデータを用いて、外国人就業者の現況について分析を行った結果、今後、国内に在留する外国人の増加とともに、国内労働市場において外国人が占める規模が拡大していく中、就労資格外国人の場合、雇用許可制という制度によって、その規模が一定水準内で維持されていく一方で、非就労資格外国人による就業者が今後、増大していくという見方をしている。そして、非就労資格外国人による就業者の増大は、韓国人の雇用に影響を及ぼしうる業種、職種に拡大し ていく可能性に注目し、今後は雇用許可制の制度外の外国人就業者に対する継続的なモニタリングと管理の必要性をKEISは指摘している。

参考資料

  • 「雇用動向ブリーフ(2016年2月)」韓国雇用情報院(KEIS)
  • ソウル市公式ホームページ

参考レート

関連情報

GET Adobe Acrobat Reader新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Acrobat Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。