導入から10年目を迎えた雇用許可制の近況
2014年8月13日は、韓国が非専門人材の外国人労働者を受入れる「雇用許可制(EPS: Employment Permit System)」を導入してからちょうど10年目の日となった。10周年を迎えた雇用許可制について、韓国政府の評価と今後の改善議論を紹介する。
雇用許可制10年の評価
雇用許可制とは、韓国での就労を望む外国人労働者(非専門人材)に、就労ビザを与え、慢性的な労働者不足に苦しむ中小企業に、労働者を供給し易くしようとする制度である(注1)。韓国と覚書を締結した、フィリピン、モンゴル、スリランカ、ベトナム、タイ、インドネシア、ウズベキスタン、パキスタン、カンボジア、中国、バングラデシュ、ミャンマー、キルギス、ネパール、東ティモールの15カ国から労働者を受入れている。
雇用許可制の導入以前は、外国人労働者の不法滞在率は80%にも上っていたが、それが16.3%にまで下がったこと、送出し国側の汚職や不正の防止にも効果があったこと(注2)、等から、雇用労働部は、導入から10年目を迎え、雇用許可制に一定の評価を与えている。更に、ILOから、外国人労働者導入の好事例として挙げられたこと、国連の公共行政賞の大賞を受賞したことも、雇用許可制による10年間の功績の結果と見ている。しかしながら、雇用許可制には、例えば、退職金の助成や仕事の選択の自由の付与(注3)等の点で、様々な見方もある。
今後の改善に向けて
雇用労働部による今後の改善に向けた議論の中には、短期的な政策としては、外国人労働者の質の向上、事業規模や分野に応じた外国人労働者の配分、また、地方企業において、韓国人労働者の雇用を促進していくこと、等が含まれている。一方、長期的な改善計画としては、スキルレベルや仕事の類型に基づき、外国人労働者を分類していくように制度を改め、受入れ人数と配置方法を決定していくことも含まれている。
深刻化する高齢化と労働力不足に悩む韓国が、解決に向けた中長期的な取組みを模索する中で、雇用労働部は、外国人労働者の最大限の活用を重要視している。
雇用労働部のイ・ギグォン長官は、送出し各国の在韓大使との会見で、雇用許可制の今後の改善内容について説明し、韓国との協力関係をいっそう強化していくため、在韓外国人労働者の法的保護に力を入れていくことを約束した。
注
- 雇用許可制の詳細については、JILPT資料シリーズ№114『諸外国における高度人材を中心とした外国人労働者受入れ政策』の第2部第7章を参照。
- 雇用許可制が導入される以前の「研修就業制」では、研修生(外国人労働者)は送出し国側の機関に、莫大な賄賂を支払っているケースがあった。その費用を賄ったうえで更に稼ぎを得て帰国するとなると、研修就業制の規定である3年間の研修・実習期間では短すぎ、その結果、オーバーステイとなり、不法滞在者は増え続けた。
- 雇用許可制での就労には、業種や事業所の規模による制限が設けられているうえ、韓国系外国人以外の外国人は、事業主の責に帰すべき事由による場合などを除き、最初の勤め先を変更することはできない。すなわち、職場の移動の自由が保障されていない。最初の勤務先から離脱することは、就労ビザを失うことになり、そのため、劣悪な労働条件にも甘んじなければならない外国人労働者が現実として存在することを指摘する声もある。
参考資料
- JIPT資料シリーズ№114『諸外国における高度人材を中心とした外国人労働者受入れ政策』
- 労使発展財団ウェブサイト
2014年10月 韓国の記事一覧
- 2014年上半期の労働市場の概要
- 導入から10年目を迎えた雇用許可制の近況
関連情報
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