資料シリーズ No.114
諸外国における高度人材を中心とした外国人労働者受入れ政策
―デンマーク、フランス、ドイツ、イギリス、EU、アメリカ、韓国、シンガポール比較調査―
概要
研究の目的
わが国でも、高度外国人材受入れの議論が進む中で、本調査では、欧米主要先進国及びアジア諸国を対象に、各国政府の外国人労働者受入れのスタンスが近年どのように変化してきたのかを明らかにすることを主な目的とした。また、わが国が高度外国人材を受入れる際の優遇措置として議論が予想される、当該人材が帯同する親族及び家事使用人に対する受入れ制度についても留意した厚生労働省からの要請調査。
研究の方法
文献調査、及び現地調査
主な事実発見
- 欧州では、グローバル化による市場競争が激化する中で、高齢化による労働力供給不足への懸念が高まり、90年代後半頃から移民政策に変化が現れ始めた。2000年代からこの動きは顕著になり、「望まれる移民」としての高度人材を優遇する一方で、「望まれない移民」である不法労働者を排除し、併せて域外からの新規単純労働力の移入を抑制し、かつ「望まれない移民」を「望まれる移民」につくりかえることを主要な政策とした、いわゆる「選択的移民政策」が生まれた。
- 背景には、EU第5次拡大による東欧諸国の加盟で、労働力供給、特に中・未熟練労働市場の供給力が飛躍的に増大したことがある。結果的に欧州主要国は、中・未熟練労働市場を域外からの労働者に頼ることなく東欧諸国からの労働者に置き換えていった。
- 高度人材向けには、EU経済圏としての競争力を強化するという目的から、EUとしての統一的アプローチを開始、域外高度人材の域内での移動を自由にするEUブルーカードを導入した。現在、イギリス、アイルランド、デンマークの3カ国を除く24カ国が、共通の枠組みで同制度の推進に向けた作業を行っている。
- 他方、欧州では過去に受入れた外国人労働者らの子孫がその規模を次第に拡大させ、社会における一定のグループ層を成すようになった。彼らの多くは貧困であり、教育水準が低く、よって就労機会が限定的であるという共通の傾向を持つ。これらのグループの社会適合性を高め、経済に貢献させることを目的に、現在欧州主要各国は、多くの国費を投じ社会統合政策を実施している。
- グローバル化の進展に伴う市場競争の激化という状況は世界共通のもので、その影響から、アメリカやアジアの国々もまた、高度外国人材の囲い込み(或いは途上国においては流出防止)戦略を講じつつある。特に少子高齢化の進展の速度が速い国においては、この政策の優先度は高いものとなっている。
図表1 ヨーロッパ諸国における高齢者比率、2010-2040年
注:高齢者比率は、15-64歳の人口に対する65歳以上の人口比
出所:OECD(Europop2008 convergence scenario:http://epp.eurostat.ec.europa.eu/tgm/table.do?tab=table&init=1&plugin=1&language=en&pcode=tsdde511).
図表2 欧州諸国における「選択的移民政策」導入プロセス
※リンク先で拡大しない場合はもう一度クリックしてください。
出所:「第2部<各論>諸外国における外国人労働者受入れ政策―高度人材受入れを中心に」より
政策的インプリケーション
調査の結果、具体的な受入れ方法は異なるが、いずれの国も高度人材の受入れを積極的に推進しつつ、それぞれの経済・雇用、及び政治情勢に応じて、受入れの規制や緩和等を併せて行っていることが明らかになった。
政策への貢献
今後の外国人労働者の受入れ政策のあり方を議論する際の基礎資料として貢献すると考える。
本文
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- 表紙・まえがき・執筆者・目次 (PDF:261MB)
- 第1部 <序章> 選択的移民政策という選択 (PDF:562MB)
- 第2部<各論> 諸外国における外国人労働者受入れ政策 ―高度人材受入れを中心に (PDF:8.7MB)
(第2部分割版)
研究の区分
課題研究(要請)
研究期間
平成24年度
執筆担当者
- 天瀬光二
- 国際研究部次長
- 大島秀之
- 国際研究部主任調査員
- 樋口英夫
- 国際研究部主任調査員補佐
- 北澤 謙
- 国際研究部主任調査員補佐
- 飯田恵子
- 国際研究部主任調査員補佐
- 岩田敏英
- 国際研究部調査員
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