韓国労働研究院(KLI)が2015年の雇用展望を公表

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韓国労働研究院(KLI)が2014年10月末までの統計を基にとりまとめた、2015年の雇用展望の概要を紹介する。

2014年の労働市場について

KLIによる2014年の労働市場の評価は次のとおりである。2014年1月から10月までの間の就業者の増加数は、前年同期比で554,000人であった。年齢別の内訳では、10代(15~19歳)では24,000人の増加、20代では59,000人の増加、30代では19,000人の減少、40代では45,000人の増加、50代では246,000人の増加、60歳以上で199,000人の増加が見られた。

年齢別に見ると、一部の層に増加が集中していることがわかる。すなわち、15歳から29歳の青年層では、人口の減少にもかかわらず、83,000人増加している。また、50歳以上の年齢層では、近年の傾向でもあるが、増加が大きく、特に50代では人口増加数を超える水準となっている。

また、20代ではこの年代の人口減少という要因もあるが、それでも増加を示している。40代でも、人口減少下にありながら、就業者数は伸びている。一方、30代では人口減少の影響を大きく受け、就業者数も減少となった。以上のように、2014年の就業者数の増加は、10代(15~19歳)と50代、60代の特定の年齢層に押し上げられたと言える。

就業率を見ると、全ての年齢層で増加し、10代(15~19歳)は7.8%(男女別では、男性6.9%、女性8.7% 以下同じ)、20代は57.4%(55.8%、59.0%)、30代は73.8%(90.9%、56.2%)、40代は79.0%(92.7%、65.1%)、50代は74.2%(87.5%、60.8%)、60歳以上は39.1%(51.5%、29.5%)、全体では60.2%(71.4%、49.6%)となった。

近年の就業者数の増加推移(前年同期比)を雇用形態別に見ると、図表のとおりである。

図表:雇用形態別就業者の推移 
(単位:人、概数)
  2011年 2012年 2013年 2014年
全体 406,000 461,000 348,000 554,000
賃金労働者 443,000 322,000 451,000 560,000
うち常用労働者(注1) 591,000 434,000 605,000 461,000
うち臨時労働者 -90,000 18,000 -116,000 140,000
うち日雇い -59,000 -129,000 -38,000 -41,000
非賃金労働者 -36,000 139,000 -103,000 -7,000

出所:韓国労働研究院『月刊労働レビュー(2014年12月号)』を基に作成。

次に、2014年1月から10月までの間の就業者の増加554,000人を産業別に見てみると、建設業では34,000人の増加、製造業では150,000人の増加、サービス業では445,000人の増加であり、農林漁業では64,000人の減少、電気・ガス等では10,000人の減少、公務部門では増減なし、であった。就業者の増加はサービス業に大きく依存していることがわかる。

サービス業の中でも、特に増加幅が大きい業種が、卸小売業(133,000人)、宿泊及び飲食店(133,000人)、保健・社会福祉等(136,000人)であり、これらの業種を中心に、サービス業全体の就業者数を押し上げた。

また、企業規模別に見た場合、従業員数300人以上の大規模事業体では120,000人の増加(前年同期比、以下同じ)に対し、従業員数300人未満の中小規模事業体では434,000人の増加となり、全体の増加者数554,000人をけん引した。前述のとおり、卸小売業、宿泊及び飲食店、保健・社会福祉の各分野が中小規模事業体によって担われていることによるものである。

2015年の雇用展望

韓国を取りまく世界の経済情勢を見れば、今後も良好な成長を続けていくと思われるアメリカ、一方で成長がさほど見込めないヨーロッパ、そして構造改革に取り組もうとする中国、こうした環境にあって、韓国の経済成長にとっては、輸出に比べ、内需部門が寄与していく程度が必然的に高まっていくと予想される。

韓国銀行は2014年10月の時点で、2015年の韓国の経済成長率を3.9%と推定した。成長を阻害する要因として考えられることは、対外的には、ユーロ地域の景気回復の遅れと地政学的なリスク等であり、国内的には、財政改革の不安、家計負債の問題等である。

2014年の一年間を通してみれば、雇用者数は50万人以上の規模での増加であるが、例年に比べ、常用労働者の増加幅は鈍化し(図表参照)、臨時労働者の拡大、非賃金労働者の減少、と特徴づけることができる。特に、臨時労働者の拡大は、40歳以上の年齢層において、卸小売業をはじめとした各種サービス業で増加幅を拡大させている。

2015年もその傾向が続くのかは不透明であるが、2015年の上半期中に、常用労働者の大幅な増加を見込むことは難しいと思われる。韓国銀行による2015年の推定経済成長率(上半期3.7%、下半期4.1%)を前提とした場合、2015年の雇用展望は、上半期の就業者数の増加は402,000人で、失業率は2014年より0.1ポイント下がり3.4%、就業率は0.4ポイント上がり60.6%と予想される。

  1. 韓国の「常用労働者」「臨時労働者」「日雇い」の詳細については、労働政策研究・研修機構主催第3回北東アジア労働フォーラム「非典型雇用問題の現状と課題」(日中韓ワークショップ)におけるイ・インジェ氏(韓国労働研究院)の『韓国における多様な雇用形態の定義と非典型雇用の概念(PDF:29KB)』及びナム・ジェリャン氏(同)『韓国における非典型労働の実態(PDF:54KB)』を参照。(本文へ

参考資料

  • 韓国労働研究院(KLI)「労働レビュー」2014年12月号

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