50年後のガストアルバイター 
―WSI調査

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2014年12月

1964年に100万人目のガストアルバイター(外国人労働者)がドイツに入国してから50年が経過した。ドイツへ移住し、そのまま残留した外国人労働者は現在どのような社会状況にあるのか。WSI(ハンスベックラー財団経済社会研究所)の調査によると、大半が低い額の年金を受給しながら、高い貧困リスクを抱えていることが明らかになった。

想定外の残留

「ガストアルバイター(Gastarbeiter)」と呼ばれる外国人労働者は、第二次世界大戦後、労働力不足を補うためにドイツが二国間協定(外国人労働者募集協定)を締結して受入れてきた。最初にイタリア(1955年)、その後、スペイン、ギリシャ(ともに1960年)、トルコ(1961年)、モロッコ(1963年)、ポルトガル(1964年)、チュニジア(1965年)、ユーゴスラビア(1968年)と順次協定を締結した(注1)

「ガスト(客)」という呼び名の通り、彼らは「労働契約満了後に帰国する」と当初は考えられていた。しかし、予想に反して多くの者が残留し、ドイツ在住の外国人は、1961年から1967年までの間に68.6万人から180万人へと増加した。その間の1964年9月10日には100万人目のガストアルバイターが入国し、大規模な祝賀行事やメディアイベントが開催された。

ガストアルバイターの内訳を見ると、1960年代初頭はイタリア人の割合が最も多かったが、1970年代初頭からはユーゴスラビア人、そして最終的にはトルコ人が最多となった。彼らの多くは、専用のバラックから住宅等へ転居し、家族を呼び寄せたり、現地で結婚したりしてドイツで暮らすようになった。企業側も、せっかく技能を習得した外国人労働者を辞めさせてまで、新たな求人手続きや新規従業員に対する職業訓練の追加費用負担をしようとしなかった。そのため、時間の経過とともに彼らの滞在は長期化し、人数も増え、受入れに伴う諸問題などが浮上するようになった。このような状況下で1973年11月、石油危機が契機となって協定による外国人労働者の募集が停止された。募集停止後、ドイツの外国人数は、1970年代末までほぼ一定で推移した(注2)。この間に当時のEC(欧州共同体)加盟国出身者は、労働許可の取得が不要になった。また、1975年からはドイツ国外にいる外国人の子に支給される子ども手当が、国内で暮らす場合よりも低く設定されたため、外国人労働者が家族をドイツに呼び寄せる動きが加速した。

変化した労働と所得

1960年代にドイツに移住したガストアルバイターの多くは、入国翌日には建設現場や工場のベルトコンベヤーに配置されて働いた。大半は若い男性で、短期間に稼ぎ、その後は本国に戻るという希望を抱いてドイツに来た者ばかりだった。従って、彼らの労働力率は当時のドイツ平均を上回り、失業率は平均を大幅に下回っていた。1960年から70年初頭にかけては、多くが鉄・金属製造業、鉱業、化学産業など、大企業が多勢を占める産業で働いていた(1972年時点で、外国人労働者の41%が従業員数500人以上の大企業で働いていたが、そのような大企業で働く者はドイツの総雇用数においては約4分の1のみだった)。所得面を見ると、1972年には、70%強が単純(未熟練)労働者で、この状況が、外国人労働者が低賃金層に占める数が過度に多い一因となった。平均時給は、ドイツ人労働者の平均を下回っていたが、特別手当が支給される危険な仕事等を引き受けることでそれを補填していた。また、「短期間で可能な限り稼ぐ」という目標から、多くの者は超過勤務をいとわず、外国人男性の月労働時間は、36%が200時間を超え、さらに20%は220時間を超えていた。こうした長時間にわたる超過勤務の結果、外国人労働者の平均総月額賃金は1972年にはドイツ人とほぼ拮抗していた。

ところがこの状況は、募集停止後の景気停滞期に大きく様変わりする。外国人の就業可能人口に対する社会保険加入義務のある就業者割合は、1972年の83.7%から1979年には65.2%へと激減し、外国人の失業率がドイツ人の水準を上回るようになった。他方、超過勤務等が減少し、外国人の低い時給は、月額総賃金におけるドイツ人との格差にも反映されるようになった(前述の通り1972年には36%が月200時間強の労働を行っていたが、この割合は1980年までに14%へ低下し、さらに1985年には8%にまで低下した)。

協定によってドイツに移住し、残留した者の多くは、ドイツ人が嫌がる仕事(石炭採掘やゴミ収集等)を引き受け、それによって、多くのドイツ人は社会的な昇進が可能になった。しかし、これはドイツ社会と一線を画する外国人の下層階級を生み出すことになった。

このような経緯で主に利益を得たのは、一部の企業である。企業から見れば、ガストアルバイターは生産を拡大し、賃金上昇を緩和し、低い時給で高い利益と経済成長の維持に貢献してくれる存在だった。もっともこれにより採算性のない事業が継続し、労働力を節減する機械への投資がおろそかになった面もある。そして、遅れながらもようやく構造変化が始まると、今度は外国人労働者のポストが過剰になった。最終的に外国人の低収入と失業増加は、現在の低い年金受給額と高い貧困リスク(注3)に姿を変えた。

低い年金、高い貧困リスク

図表1は公的老齢年金の平均受給月額を、国籍や男女別に示したものである。ドイツと社会保障協定を締結した国から追加的な年金所得を得ている者は除外する。なお、ここで留意したいのは、これは公的老齢年金の受給額であって、個人の総収入ではない点である(公的年金のほかに、例えば企業年金やその他の収入によっても補足されている可能性はある)。

図表1:公的老齢年金の平均受給月額(ユーロ、2012年)
図表1:公的老齢年金の平均受給月額

  • 出所:Sonderauswertung der Deutschen Rentenversicherung Bund.

図表1から、協定国から移住した外国人の年金受給者は、ドイツ人よりも低額の年金を受給していることが分かる。ガストアルバイターの中で最多を占めるトルコ人は、男女ともに特に受給額が低いが、彼らは無資格や低資格者が多く、低賃金と高失業率で特徴付けられる。

さらに図表2を見ると、65歳以上の協定国出身外国人は、明らかにドイツ人と比較して貧困リスクが高い。この調査からも、トルコ人高齢者が突出して高い貧困リスクを抱えていることが分かる。トルコ人に次いで人数が多いユーゴスラビア人高齢者の貧困リスク率は37%と控えめな数値に見えるが、それでもドイツ人と比較すると相当に高い。

図表2:65歳以上の貧困リスク率、2012年 (%)
  合計 男性 女性
ドイツ人 12.5 9.8 14.5
協定国出身外国人 41.8 39.5 45.2
そのうちユーゴスラビア人 37.0 32.7 43.3
そのうちトルコ人 54.7 53.9 55.6
  • 出所: Mikrozensus.

当時の移住政策がもたらしたもの

ドイツでは当時、ガストアルバイターの受入れは、一種の開発援助政策として理解された。協定国側は、労働者の送り出しによる自国の労働市場の負担軽減、ドイツからの技術やノウハウの移転、外貨の獲得などに期待を寄せていた。また、ドイツの使用者にとっては生産と利潤の確保をもたらし、ドイツ人労働者にとっては昇進を容易にし、ガストアルバイター自身にとっては短期間で稼ぎ、成功者として帰国できる政策だと思われた。さらに帰国を前提とした時限的な政策である点でも、関係者の考えは一致していた。

確かに、この政策が意図した通りの利益を得た者もいるが、実際のところ、残留してドイツ社会の一員になったガストアルバイターの現状を見ると、彼らの多くは高齢者になっても社会の底辺に高い割合で属していることを示している。WSIは報告の中で、「移住政策を経済政策上の目的で利用しようとする者は、前提となった経済問題が忘れ去られた後も、政策の影響が当事者や社会で存在し続けていることを熟慮すべきである」と結論付けている。

新たな移住ブーム

現在ドイツは、EU拡大のもとで域内における新たな移住の波を迎えている。OECDはこの動きについて、「短期間でこのような移住の急増は稀であり、明らかにドイツへの移住ブームが起きている」と指摘している(図表3)。移住者には、かつての協定国であるイタリア、スペイン、ギリシャなどの南欧諸国のほか、ポーランド、ブルガリア、ルーマニアが多い。

図表3:EU域内の国/地域からドイツへの流入推移(2010~2013)
図表3:EU域内の国/地域からのドイツへの流入推移(2010~2013)

  • 出所: OECD (2014)

近年、EU域内からドイツへ移住した者の大半は職があり、2007年以前の移住者より高い技能を有している。かつて受入れた外国人労働者の状況とかなり相違があるものの、受入れをめぐる議論の大半は、外国人労働者が及ぼす現在の経済的な利益と不利益に集中している。多くの場合、外国人の受入れは、「外国人、熟練労働者/未熟練労働者不足への対応策」、あるいは「年金制度の将来的な資金調達問題への対応策」と解釈される。他方では、「EU域内移住者の増加は、域内市場の深化に向けた動き」と見なし、「国際収支の均衡への寄与、結果としてユーロの安定化への寄与」という点に着目する見方もある。いずれの立場も中心にあるのは経済システムに対する外国人労働者の機能であり、外国人労働者自身にとっての中長期的な影響についてはあまり論じられていない。その点で、今回のWSI報告は、新たな視点を提供するものと言えるだろう。

参考資料

参考レート

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