2012年の有期労働者数約270万人、1996年の約2倍に

カテゴリー:非正規雇用

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  • 国別労働トピック:2013年7月

労働市場・職業研究所(IAB)から、有期労働契約の現状に関する事業所パネル調査(1996-2012)の最終集計結果が発表された。それによると、有期労働者はその数自体が増加傾向にあるだけでなく、期間満了後に無期転換する割合も4割程度に過ぎず、さらには、新規採用者に占める有期労働者数が多い産業(教育業、公務行政部門など)は無期転換率も低い傾向にあることもわかった。

新規採用者の約4割が有期
―期間満了後もその約6割が無期転換を果たせず

IABによるパネル調査の結果によると、1996年時点には約130万人に過ぎなかった有期労働者数が、2012年時には約270万人とほぼ2倍になっていることがわかった。この数は、社会保障義務のある全就労者の9.5%(1996年4.7%)、事業所の全就労者(官吏、独立自営業者、僅少就労者を含む)の7.6%(同3.7%)に相当する数である(図表1参照)。

図表1:事業所の全就労者及び社会保障義務のある就労者に占める有期労働者の割合
(1996年~2012年、%)

図表1:事業所の全就労者及び社会保障義務のある就労者に占める有期労働者の割合(1996年~2012年、%)出所: IAB-Betriebspanel

出所: IAB-Betriebspanel

そして、2012年の新規採用者に占める有期労働者の割合(図2参照)は44%であり、この数字は、2009年以降4年間、確かに漸減傾向にあるが、2004年とほぼ同じ数字である。

図表2:各上半期における全新規採用者に占める有期労働者の割合
(2001年~2012年、%)

図表2:各上半期における全新規採用者に占める有期労働者の割合(2001年~2012年、%)出所: IAB-Betriebspanel

出所: IAB-Betriebspanel

さらに、期間満了後における労働関係の帰趨をみると(図表3参照)、確かに近年、そこで雇止めとなる労働者の割合は減少傾向にある。しかし、無期への転換を果たす労働者の割合はなお4割弱にとどまっており、さらには、有期が更新される労働者の割合も3割強と低くない数字で安定的に推移している。

図表3:各上半期における有期契約期間満了後の労働関係の帰趨
(2009年~2012年、%)

図表3:各上半期における有期契約期間満了後の労働関係の帰趨(2009年~2012年、%)出所: IAB-Betriebspanel

出所: IAB-Betriebspanel

公務部門では6~7割強が有期で新規採用
―その後の無期転換もかなり難しく

以上の数値のうち、「新規採用者に占める有期労働者の割合」と「期間満了後における無期転換者の割合」とを産業別に比較すると(図表4参照)、そこには大きな差があるとともに、一定の相関関係があることもわかる。この点、IABは、「新規採用の場面における有期契約者の割合が増加するにしたがって、期間満了の場面における無期転換者の割合が減少する」という傾向がそこにあると指摘している。

図表4:各上半期における各産業ごとの有期新規採用者 及び無期転換者の割合
(2012年、%)

図表4:各上半期における各産業ごとの有期新規採用者及び無期転換者の割合(2012年、%)出所: IAB-Betriebspanel

出所: IAB-Betriebspanel

すなわち、例えば教育業、公務行政部門においては、2012年の新規採用者全体のそれぞれ76%、60%が有期契約に基づいて行われていたものであったのに対し、金融・保険サービス業におけるそれは23%であった。これとはまったく反対に、期間満了後の無期転換率は建設業、金融・保険サービス業で61%であったのに対し、教育業、公務行政部門ではそれぞれ18%、28%にしかすぎなかった、というのである。

背景に、有期労働契約法規制の「抜け穴」? 
―労働組合は「有期の濫用」と批判

以上のような産業間で差異が生じる背景について、IABは特に指摘していない。だが、法制面から見ると、教育業、公務行政部門には、ある特徴があることがわかる。すなわち、ドイツの2000年パート・有期労働契約法(TzBfG)は、有期労働契約の締結に客観的合理的な理由が存することを求め、その事由として、「教育訓練または大学課程の終了に引き続いて雇用する場合」(2号)や「試用目的で雇い入れる場合」(5号)などをいくつか例示列挙している(14条1項2文)ところ、公務部門に関してはさらに、「労働者に対する報酬が財政法上、有期就労を目的として決定される公的予算から支払われ、当該労働者がこれにしたがって就労する場合」(7号)も当該事由の1つとして挙げられているのである。

この点、緑の党のブリギッテ・ポットマール氏は、「毎年、夏になると、教員の失業者数が急増する。これは、各州による休暇期間中の従業員コスト削減策の結果に他ならない。各州は高資格労働力を季節労働者と同様に取り扱い、長期にわたって不安定な状況に置いているのであり、新規学卒者の目には魅力のない職場と映るに違いないだろう」と指摘している。

さらに、統一サービス労組(ver.di)のオノ・ダネンベルク氏は、2000年パート・有期労働契約法によって導入された規制緩和策(新規採用者や新設企業などに対する締結事由規制の不適用)についても言及している。すなわち、「社会民主党=緑の党連立政権が有期規制を緩めて以降、多かれ少なかれ、有期でしか雇入れない方向へとシステマティックに移行してきたのは、確かに公務部門である。しかし、“有期の濫用”という問題は、公務部門に限ったことではない。民間部門にも存在する」として、締結事由規制の再強化を主張しているのである。

有期学卒者の賃金は、無期学卒者より平均19%(最大38%)低いとの調査結果も

上記IABのパネル調査と同様の調査は、労使団体系の調査研究機関でも行われている。ハンス・ベックラー財団経済社会研究所(WSI)の協約政策研究員であるラインハルト・ビスピンク氏が所長を務める賃金データバンク(Lohnspiegel)が実施した、学位取得者対象のオンライン・アンケート調査によると、学位取得者のうち、職業経験1年未満の者のおよそ34%が有期契約での就労に従事しているということである。もっとも、その割合は職業経験を経るごとに減少し、職業経験2年以上3年未満ではおよそ18%になる、ということである(職業経験3年未満の者全体では25%)。

また、これを産業別でみると、ここでも大きな差があり(グラフB参照)。学位取得後に就労を開始した職業経験3年未満の者のうち、期間の定めをもって就労している者の割合が高いのは、「大学その他の教育機関」(81%)、「その他成人向け教育・訓練機関」(72%)、「病院」(60%)、「公務行政/社会保障機関」(54%)など、他方、割合が低いのは、「自動車製造業」(6%)、「化学産業」(11%)、そして「エネルギー供給業」(12%)や「企業向けサービス業」(16%)などである、ということである。

図表5:産業別にみる職業経験3年以内の学位取得者のうち(%)

図表5:産業別にみる職業経験3年以内の学位取得者のうち有期で労働する者の割合及び収入格差(%)出所:WSI-Lohnspiegel-Datenbank

出所:WSI-Lohnspiegel-Datenbank

さらに、同アンケート調査は、雇用保障の面だけでなく、収入の面でも、有期労働者は明らかな劣位に置かれている、と結論づけており、有期契約で就労を開始した学位取得者の平均月例賃金はおよそ2940ユーロと、無期契約で就労を開始した学位取得者の平均月例賃金3640ユーロより19%も低い、としている。そして、ここでも産業間の差異は非常に大きく、賃金格差が大いのは、例えば「小売業」(38%)、「エネルギー供給業」(24%)、「企業向けサービス業」(22%)などであり、他方、マイナスの値が小さいのは、「公務行政/社会保障期間」(9%)、「その他社会福祉業」(6%)、そして「病院」(4%)などであったとしている(図表5参照)。

参考資料

  1. Frankfurter Allgemeine, Der Staat drangt sein Personal in Zeitvertrage, 29. 05. 2013リンク先を新しいウィンドウでひらく
  2. Hans Bockler Stiftung, Hochschulabsolvent/innen: Bis zu 80 Prozent befristet beschaftigt, 24. 01. 2013リンク先を新しいウィンドウでひらく
  3. ders., Akademiker: m ersten Job haufig ohne Sicherheit, Bockler Impuls 01/2013リンク先を新しいウィンドウでひらく
  4. IAB, Befristete Beschaftigung ? Aktuelle Zahlen aus dem IAB-Betriebspanel 2012 (PDF:1.9MB)リンク先を新しいウィンドウでひらく

参考資料

  1. 労働政策研究報告書 No. L-1 (2004年)「ドイツ、フランスの有期労働契約法制 調査研究報告書
  2. 海外労働情報 2010年5月「ドイツの非正規雇用
  3. ビジネス・レーバー・トレンド「特集 非正規・有期雇用(PDF:958.4KB)」(2010年6月号、2頁以下)

参考

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