「絶対的低所得層」前年度から90万人増
―物価上昇を下回る所得増が原因

カテゴリー:勤労者生活・意識

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  • 国別労働トピック:2013年7月

雇用年金省は6月、2011年度の低所得者世帯人口を分析した統計報告書を発表した。低所得層分布と所得格差を3つの指標を使って分析しており、このうち、基準年の小売物価指数で調整した実質ベースの所得水準に基づく「絶対的低所者層」が、前年度から90万人増えた。今年度から本格化した各種の給付削減策の影響により、低所得層は今後さらに拡大すると予想されている。

「相対的低所得層」の比率は横ばい

雇用年金省が毎年公表している「平均未満所得世帯統計」(Household Below Average Income)の報告書は、各年度の名目ベースの所得水準に基づく「相対的低所得層」(平均所得額の60%未満の層)、基準年の小売物価指数で調整した実質ベースの所得水準に基づく「絶対的低所得層」(2010年度を基準とした平均所得額の60%未満の層)および所得分配の偏りに関するジニ係数の3つの主要指標などにより、低所得層と所得格差の推移をみている注1。このうち、相対的低所得層は980万人、人口全体に占める比率は16%で、所得水準の全般的な低迷により前年度から横ばいで推移しており、ジニ係数も同様に前年から横ばいとなった。一方、絶対的低所得層は1080万人で前年度から90万人増、比率も17%と1ポイント増加した。うち500万人以上は就労世帯(フルまたはパートタイム就労者が一人以上居る世帯)に属しており、就労者の居ない高齢者世帯(約200万人)や就労年齢世帯(失業・非労働力など、約300万人)を上回っている。また、前年度からの90万人の増加のうち、就労年齢層が60万人、児童が30万人を占め、高齢者についてはほぼ横ばいとなっている。

絶対的低所得層の増加は、長期的な景気拡大に支えられて継続的に物価上昇率を上回ってきた平均所得の伸びが、ここ2年間で急速に縮小したことによるものだ。所得増加率が物価上昇率を下回った結果、実質ベースの週平均所得額は2010年度から減少に転じ、2011年度には前年から3%減の427ポンド注2と、2001年度の水準まで低下した。このため、2010年度基準の低所得ラインを下回る層が増加することとなった。報告書は所得低下の要因として、不況以降の賃上げ抑制や、経済再編によって前職より低賃金の仕事に転職した層が増加したこと、また社会保障給付の引き下げを挙げている。

所得階層別の所得構成をみると、最も所得が高い上位20%では平均で8割以上が給与所得であるのに対して、下位20%では給与所得は4割弱、5割以上を社会保障給付が占めている。シンクタンクのIFSは、不況期以降2011-12年までは全体的な所得低下の影響から所得格差が縮小したが、今後は各種の給付削減策注3の実施により、低所得層の所得低下が予想されることから、所得格差は再び拡大し、2015年までには不況前の水準に戻るとみている。

相対的・絶対的低所得層の推移(%)

図:相対的・絶対的低所得層の推移(%)1994年~2011年

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