公開選抜制度で公務員の昇進に変化

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2013年5月

中央政府の公務員の昇進に関して、一部に適用する「公開選抜制度」は2010年に開始され、以降、参加機関、公募職位、選抜者の数とも増えている。従来は「党委員会の推薦」を基本としていたが、筆記・面接の試験を重視する制度を導入し、選抜の透明性を担保するのが目的だ。

幅広く募集、透明化した選抜制度を実施

公務員の昇進について、中国公務員法43条は「任職予定の職務に要求される政治思想の素質・業務能力・文化程度・任職経歴などの条件および資格を備えなければならない。」「飛び級は認めない。ただし品行方正、能力に秀でている、勤務状況が特に優秀な者あるいは特殊な職務の場合については、1階級の飛び級昇進も認められうる。」と定めている(「昇進」とは、付表の例えば「19-27級」から「18-26級」の上位への移動を指す)。44条は、次のように昇進手続きも規定している。

  1. 当該組織の共産党委員会と人事部が民主的推薦により、考察対象者を確定する
  2. 当該組織の人事部門は考察の手はずを整えて、任職提案を提出して、必要があれば一定範囲で提案について論議する。
  3. 管理権限に基づいて討論し、昇進の可否を決定する。
  4. 規定に基づき任職の手続きを履行する。

政府は2009年に「2010~2020年における公務員の人事制度改革の深化に関する計画綱領」を発表した。綱領は、2015年度までに、局級以下(8-13級以下)の昇進の場合には、少なくとも全体3分の1を競争的選抜者が占めなければならない、と定めた。従来の昇進制度の基本は「党委員会と人事部の推薦」を基本としており、選考基準も不明確で、透明性が欠けているとの考えに基づくものだ。

この綱領に基づき、一部の昇進に限り、公開選抜制度を適用することとし、中央政府は2010年に制度をスタートさせた。この制度では、省レベル以下の公務員が、中央政府が公募する職位に申し込むことができる。飛び級も認められる。

制度は次のような仕組みになっている(図表1)。資格審査の合格者(大卒以上の学歴や2年以上の基礎機関での経験が必要)には筆記試験と面接試験が課せられている。筆記試験は論文とケースメソッド分析で構成されており、合わせて3時間程度で、職位によってその内容が異なる。面接試験は「才徳兼備」を大きな判断目安としている。双方の試験で、選抜ポストの2倍の合格者を選ぶ。その後、身体検査を経て、選考委員が会議で検討し、合格発表し、1週間の期限の後に、問題が生じなければ、就任手続きとなる。

図表1:公開選抜のプロセス

図表1:公開選抜のプロセス『2012年中国中央機関公務員公開選抜公告』、『公務員公開選抜弁法(試行),2013年1月』より

出所:『2012年中国中央機関公務員公開選抜公告』、『公務員公開選抜弁法(試行),2013年1月』

順調に拡大する「公開選抜制度」

開始以降、毎年、参加機関、公募職位、選抜者数の数はいずれも増加しつづけ、公募職位のランクも上位に広がっている(図表2)。直近の12年には、175の職位を公募し、9435人が応募した結果、132人が選ばれた。13年1月には、「公務員選抜方法(試行)」が改めて定められて、この制度の長期的継続が保障されることになった。

こうした動きは中央政府だけでなく、各地方政府にも拡がりつつある。北京市は2010年より公務員公開選抜(北京市のような省レベル政府の場合は、市・県・郷の各レベルの政府からの選抜が対象)を実施しており、過去3回で計278名が選抜された。その他、天津市・山西省・黒竜江省・陝西省なども「公務員公開選抜方法」を制定している。

図表2:中央政府公務員公開選抜状況
2010 2011 2012
予定職位数 30 84 175
参加機関数 11 27 44
最高職位 副処長 処長
  • 出所:公務員局
  • 注:職位の種類については、下部の付表を参照

期待される公開・公平・客観性、そして政策決定の民主性

公開選抜制度は公開性、公平性、客観性を基本原則としている。公開での競争により優れた人材を選抜する。選抜プロセスの透明化により公平性を確認する。推薦によらずテストで決めることで、客観性が担保される。こうして選ばれた人材は誰もが納得する上、公務員の積極性も高めることができる。中国人事科学研究院の呉江曾院長は、公務員公開選抜制度について、「公務員選抜制度の社会的信用を高めるために、公開選抜は最適な方法だ。この方法によって、政府の政策決定における民主性も高まるだろう」と評している。

付表:公務員制度における公務員の構成
国家行政機関 行政級別 中央政府 省レベル政府
(自治区・直轄市)
市レベル
政府
県レベル
政府
郷レベル
政府
級別   指導職務 指導職務 指導職務 指導職務 指導職務
    非指導職務 非指導職務 非指導職務 非指導職務 非指導職務
1級 正国家級 国務院総理        
2-4級 副国家級 国務院副総理・国務委員        
4-8級 正省部級 部長 省長・自治区政府主席・市長      
6-10級 副省部級 副部長・局長 副省長・副自治区政府主席・副市長      
8-13級 正庁局級 司長 庁長・局長 市長    
巡視員 巡視員      
10-15級 副庁局級 副司長 副庁長・副局長 副市長    
副巡視員 副巡視員      
12-18級 正県処級 処長 処長 局長 県長  
調研員 調研員 調研員    
14-20級 副県処級 副処長 副処長 副局長 副県長  
副調研員 副調研員 副調研員    
16-22級 正郷科級     処長 局長 郷長
主任科員 主任科員 主任科員 主任科員  
17-24級 副郷科級     副処長 副局長 副郷長
副主任科員 副主任科員 副主任科員 副主任科員  
18-26級 科員級          
科員 科員 科員 科員 科員
19-27級 辮事員級          
辮事員 辮事員 辮事員 辮事員 辮事員
  • 出所:中国公務員法
  1. 6-10級以上は全て指導職務に該当。8-13級以下は上段が指導職務、下段が非指導職務。
  2. 中国公務員では指導職務の行政等級は、おおまかに国家級、省部級、庁局級、県処級、郷科級に分かれている。普通は、8-13級で正局級といわれ、10-15級で副局級といわれる。局長と呼ばれていても、局級とは限らない。
  3. 中央政府6-10級の局長は、中国国務院各部・委員会管理の国家局の局長である。

参考資料

  • 中国公務員網、人民網、人民日報

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