13年の大卒就職、過去最高の厳しさに

カテゴリー:地域雇用

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  • 国別労働トピック:2013年5月

2013年の新規大学卒業者の就職市場は厳しい状況にある。卒業者数が過去最高を記録したことに加え、国有企業での採用減少、公務員試験制度改革、そして民間企業での採用減などの諸要因が重なり、「過去最も厳しい年になる」との声もある。政府も対策は実施しているものの、大学生の増加は今後も見込まれることから、その雇用先の確保が重要な課題となっている。

国有企業採用減や公務員試験改革など響く

現地の大手労働市場調査会社の調査によると、13年卒業の大学生の13年1月時点での内定率は38%で、前年同期比で8%下回った。その他の調査でも、軒並み前年同期比を下回る値が観察されている。昨年も大卒者にとっては比較的に就職難であったと言われていたが、それをさらに下回る本年の状況について、現地報道は「過去最も厳しい年になる」、「『海投』(履歴書を大量に送付する行為)しても、就職できない者が多数いる」と伝えている。

大卒者の就職率が低調な背景には、国有企業での採用減少、大学生の人数増加、公務員試験制度改革、欧州を中心とする低調な海外経済の影響を受けた民間企業での採用減など諸要因が重なっている。

国有企業は求職者を大量に雇用する貴重な雇用先ではあるが、昨今の国内外の経済の不透明さを踏まえて、軒並み採用を抑制している。山西省のある国有企業の場合、昨年は700人の大学卒業者を募集したが、今年は500人に削減した。

また大学生の人数増加も大きな要因となっている。大学生数はここ数年ウナギ上りに増加しており、13年の大学卒業者数は過去最高の約700万人に達する見込みだ(表)。その分、求職中の学生には厳しい状況となっている。

表:大学卒業者数の推移(単位:万人)

表:大学卒業者数の推移(単位:万人)2001-2013年

  • 出所:教育部
  • 注:2013年は予測値

公務員採用試験の制度改革も影響している。従来は、多くの公務員の職種で大学卒業後すぐの就職が可能であったが、制度改革により、多くの職種で2年以上の社会人経験や西部地域・農村地域でのボランティア経験が必要となった。そのため、大学卒業直後の者が公務員に就職することは、ごく一部の研究職などを除き、ほぼ不可能となった。その結果として、代わりに民間企業への就職希望者が増加している。

さらには欧州地域での経済停滞により、輸出産業を中心に業績が低迷する状況にあり、これが求人減少に拍車をかけている。仮に求人があったとしても、慢性的なインフレにも関わらず、給与水準が前年入社者の当時の給与水準と差異がないような状況も、散見されつつある。

西部地域派遣など政府対策、効果は不十分

政府はこうした事態に対して、起業支援や主に西部地域の農村への若年者派遣により、失業の是正に取り組んでいる。

起業支援では特にITやバイオのような付加価値が高く、今後の発展が見込まれる産業を中心に、若年者に対してオフィスの斡旋、融資資金の一部援助、減税措置などを実施している。

西部地域への若年者派遣では、大都市の大学を卒業した学生を西部地域に1~3年程度派遣することで、大都市では得がたい経験を積んでもらうとともに、政府が重点発展地域と位置づける西部地域の発展を促そうとしている。

農村部への派遣では、当該地域の学校に教師として派遣することで、若年者に経験を積ませるとともに、農村部での教育レベルの向上を目指している。西部地域、農村部に派遣された若年者は活動中、補助金が政府より支給される。派遣期間を終了した若年者は、その後公務員試験や大学院の入学試験において、加点などの恩恵を受けることが出来る。しかしながら、こうした経験は企業においては、必ずしも高く評価されているわけではない。そのため、政府のいくつかの対策も、直近の失業問題の改善にはある程度寄与しているものの、民間企業における雇用創出という根本的な解決策という点では、現時点では効果的な対策を十分には打ち出せずにいる。

すぐ辞職する「閃辞族」増える

現在、労働市場には1990年代生まれが続々と参入しつつあるが、彼らの意識にはかつての若年層とは異なる傾向が見られる。70年代生まれの者達は、就職に際して一般的に、「高収入・手厚い福利厚生」を重視する傾向にあった。しかし78年の改革開放、79年の一人っ子政策開始後に生まれた80年代、90年代生まれの場合、その育った家庭環境、体験した経済成長が彼らの考え方に影響を与えている。とりわけ、中国がWTOに加盟して毎年のように二桁成長を達成した時期に多感な時代を送った90年代生まれは、就職に際して「キャリアアップできる環境、自由度の高い就労、お互いを尊重する関係」を重視する傾向にあると言われている。

そんな90年代生まれは、たとえ無事に就職できたとしても『閃辞族』(閃くような早さで辞職する若年者)としてすぐに転職したり、あるいは大学卒業後に国外に活路を求め、日本を含む海外ですぐに働き出す者も多い。

参考資料

  • 教育部、新華社通信、大連晩報

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