パートタイム労働者が雇用労働者全体の18.7%
―3割以上が非自発的就労

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2013年4月

フランス政府の発表(2013年1月23日)によると、2011年時点で雇用労働者の18.7%に相当する420万人がパートタイム労働者であった。約8割が女性であり、9割がサービス業で就労している。また、フルタイムの職が見つからないために、非自発的にパートタイム就労する者が3割以上という結果が明らかになった。

90年代後半から18%微増

フランスでパートタイムとは、法定労働時間を下回る労働時間か、労働協約(注1)で定められた所定内労働時間を下回る労働時間、事業所における通常の労働時間を下回る労働時間である。2011年時点で(以下、特筆しない限り2011年のデータ)420万人の雇用労働者がパートタイムで就労していた。雇用労働者の18.7%に相当する。1980年代初頭には10%を下回っていたが、その後上昇し1990年代後半には18%を超えた。1999年から2002年には35時間労働制の導入もあり、パート労働者の比率は若干低下したものの、それ以降は微増傾向をたどっている(図表参照)。

図表:パート労働者比率の推移(1982年~2011年)

図表:パート労働者比率の推移(1982年~2011年)90年代後半から18%微増

  • 出所:DARES ANALYSES
  • 注:2002年までと2003年以降は定義が異なり、厳密には連続した数値ではない。

女性労働者の3割強

パート労働者の平均就労時間は週23.2時間で、フルタイム労働者の39.6時間と比べると4割程度短い。また82%が女性で占められており、女性雇用労働者の31.0%に相当する。男性雇用労働者は6.6%であり、女性との差は大きい。女性の場合、育児中の子供の数と年齢がパート就労の選択と関連している。3人以上の子を育てる女性雇用労働者の45%以上がパートでの就労である。子の年齢が低ければその割合も高くなる。最年少の子供が3歳から5歳の場合、55%以上がパート労働者である。また、育児中の子の数が1人以下の場合、パート労働者の比率は30%程度に留まっている。一方で男性の場合、育児中の子の数と年齢によって就業行動に違いは見られない。他の職業活動を行うためや学業・職業訓練に従事するために、パートを選択する者が比較的多い。

パートで就労する理由についても性別で特徴が見られる。フルタイムでの職が見つからないという理由で非自発的にパート就労する者の割合は31.7%であるが、男性で37.0%、女性で30.7%となっている。非自発的なパート労働者の比率は、雇用労働者の6%(男性雇用労働者の2%、女性雇用労働者の9%)に相当する。自発的にパートで就労している理由は、男女で大きく異なっている。例えば、パートで就労している男性の18.0%は、他の職業活動や職業訓練、学業に従事するためとしているが、その割合は女性では6.5%に過ぎない。逆に、パートで就労している女性の33.8%は、子供や家族を世話するためとしているが、男性では7.0%に過ぎない。

金融・保険業のパートの9割強が女性

業種別に見てみると、パートで就労する者の比率はサービス業で高いのに対して製造業や建設業で低い。サービス業で就労する雇用労働者の22.0%がパートである一方で、製造業では6.5%、建設業では4.9%に過ぎない。特に、清掃業や宿泊・飲食業、大型小売業、教育業、医療・福祉業で、パート労働者の比率が高い。また、金融・保険業で就労する雇用労働者に占めるパートの比率は12.7%と低いが、同産業のパート労働者の実に92.8%が女性である。不動産業でも同様の傾向が見られる。

勤務日数では64%が週4日以下である。勤務日数が週4日以下で、かつ週の労働時間が24時間未満の者が33%、24時間以上が31%である。この比率は業種によって大きく異なる。金融・保険業ではパート労働者の67%が週24時間以上就労しているが、週の就労日数は4日以下である。これは同業種で就労する女性が水曜日(学校が週4日制で、通常水曜日が休み)に就業せずに子の世話をし、それ以外の平日はフルタイム労働者に近い時間(1日当たりの就業時間として)で就労しているからと考えられる。その一方で大型小売業では56%のパート労働者が週5日以上、かつ週24時間以上就業している。これは、午後から夜の繁忙の時間帯にパート労働者を活用しているからである。

若年者、高齢者、低学歴、非熟練で高いパート比率

若年者と高年齢者のパート就労の比率が高い。15歳以上25歳未満の雇用労働者のうち26.6%、55歳以上では24.6%がパート労働者であった。パート労働者の9.8%が15歳以上25歳未満の若年者、同18.2%が55歳以上の高年齢者であった。一方でフルタイム労働者の場合、15歳以上25歳未満の若年者は6.2%、55歳以上の高年齢者は12.8%であった。

パート労働者を学歴別に見ると高学歴者が少なく、低学歴あるいは無学歴者が多い。パートで就業する者のうち14.9%がバカロレア(注2)+2年以上の学業修了証を取得した者(大学の一般教養課程修了に相当)で、また一切の学業修了証を持たない者は24.6%に上っている。フルタイム労働者では、バカロレア+2年以上の学業修了証を持つ者が19.9%、一切の学業修了証を持たない者は14.1%であった。さらに非自発的なパート労働者の64.0%がバカロレア取得者ではなく、学歴の低い者が多いことがわかる。

また、非自発的なパート労働者は非熟練労働者が多い。非自発的なパート労働者の63.5%は一般事務職として就労しており、11.5%が製造等現場労働者である。それに対して、自発的なパート労働者は51.8% が一般事務職、5.1%が製造等現場労働者である。上級管理職及び中間管理職の比率でみてみると、フルタイム労働者のうち上級管理職は19.9%、自発的パート労働者は11.4%、非自発的パート労働者は3.6%である。中間管理職では、それぞれ27.5%、25.8%、13.0%となっており、パートでしかも非自発的な場合に低い傾向が見られる。

不安定、低賃金の傾向

非自発的なパート労働者の雇用は、自発的な者と比べて不安定である。非自発的パート労働者の28.6%が有期雇用契約(CDD)であり、そのうち8.8%は特殊雇用契約(注3)締結者である。自発的パート労働者の比率がそれぞれ、10.9%、1.9%、フルタイム労働者では、それぞれ9.7%、0.5%に過ぎない水準と比較するとその高さがわかる。

パート労働者の平均賃金月額は996ユーロで、中位数は850ユーロである。また、自発的パート労働者の中位数は988ユーロ、非自発的パート労働者は719ユーロであった。時給でみるとパート労働者が平均11.2ユーロで、フルタイム労働者の14.8ユーロより低い。

パート労働者の16%は複数のパートでの仕事を掛け持ちしている。そのような者は合計で平均週27時間就業し、平均賃金は月額1230ユーロである。収入を増やすために複数の仕事を掛け持ちしている者が多いと考えられる。

  1. 産業別又は企業別の協約
  2. フランスにおける高校卒業及び大学入学資格を意味する免状のこと。 (当機構海外労働情報2006年12月参照)
  3. 若年者や就職困難者を対象としており政府からの賃金補助などを受けることのできる雇用契約。

参考資料

参考レート

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