全国総工会が福利保障指数を発表

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  • 国別労働トピック:2013年1月

中華全国総工会は昨年12月、労働者の社会保険、住宅積立金など福利厚生の状況を測る「中国従業員福利保障指数」を公表した。それによると、2011年の社会保険法施行の影響のため、2012年の法定社会保険の加入率は9割を超えた。その他の住宅積立金などは業界や企業によって差があり、賃金上昇に陰りが見える中で、福利厚生の充実は今後の人材確保の焦点となりそうだ。

保険会社と共同で策定

指数の英語名は「China Employee Benefits Index(CEBI)」。総工会の労働関係研究センターが発表した。12年の指数は65.37であった。この指数はACFTUが国内大手の保険会社、平安保険と共同で作成したもので、発表は今年が初めて。今後、毎年公表される見通しだ。

調査は30の市・省の64都市で行われ、法定の社会保険、住宅積立金、その他の福利厚生の状況などが調査された。使用者からは1009の有効回答を、労働者からは3346の有効回答を得た。

項目で普及率に差

調査によれば、社会保障や福利厚生の普及率は項目ごとで異なっている。法定の社会保険は91.8%と広く普及していたが、住宅積立金は69.0%、法定社会保険外以外の医療保険が53.8%だった。その他の福利厚生は67.4%だった。

業界別に見ると、金融業が最も充実した福利厚生を持っている一方で、報道・出版・広告業などは整備が遅れている。

従業員への調査によると、特に住宅積立金と医療保険の拡充の要望が強く、それぞれ6割以上の者がその拡充を望むと回答した。しかし使用者側は自社の厳しい資金状況や公的支援の不足などを背景に拡充には消極的であり、拡充を検討すると回答した使用者は約4割に留まった。

企業形態別に見ると、外資系企業が手厚い福利厚生を提供している一方で、国内の民間企業の福利厚生は相対的に手薄い傾向にあった。

社会保険法施行が影響

法定の社会保険加入率が9割を超える高い値を示した背景には、2011年に社会保険法が施行されたことがある。これにより都市戸籍を持つ労働者の加入が促進されただけでなく、農村戸籍の出稼ぎ労働者の加入も進んでいる。ただし加入率で見れば都市戸籍の者と農村戸籍の出稼ぎ労働者との間には大きな隔たりがある。また地域・保険の種類によっては、同じ保険料を納めても受給できる保険の金額や期間に、都市戸籍か農村戸籍かで違いがあり、戸籍問題は労働者の社会保険にも影を落としている。

人材確保の焦点に

清華大学公共管理学院教授で雇用社会保障研究センターの代表を務める楊燕緩氏は「ハイテク分野の中小企業が充実した福利厚生によって優秀な人材を引き留められるように、政府は政策支援すべきだ。現在の中国は経済構造転換の真っただ中にあり、人々の生活の充実に対して、より注意が払われる必要がある。それゆえ、政府がそのために成すべき責務は多い。また今回公表された指標、CEBIは中国の全労働者の福利厚生の状況を反映させるためにも、将来的には企業だけでなく政府機関およびその労働者も対象とすべきだろう。」と述べている。

ここ数年続いてきた給与の毎年の大幅な上昇は、やや一服した傾向があるため(2012年11月リンク先を新しいウィンドウでひらく記事参照)、今後は福利厚生の充実が人員確保の重要な手段になり得ると見られている。

参考資料

  • 中華全国総工会、平安保険、人民日報、チャイナデイリー

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