失業者数、今後4年で450万人増加も
―ILO、「ユーロ圏における仕事の危機」報告書

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2012年7月

国際労働機関(ILO)は7月11日、「ユーロ圏における仕事の危機:動向と政策対応」と題する調査報告書を発表した。それによると、ユーロ諸国は、2008年の金融危機後、最近の欧州債務危機の影響を受け、依然として厳しい状況にあり、各国が早急に緊縮財政や金融システムを見直し雇用中心の対策をとらなければ、失業者数は現在の1740万人から今後4年間でさらに450万人増加する、と予測している。

ユーロ圏の平均失業率は2012年4月時点で11.0%に達している。対象を15歳~24歳の若者に限ると、約2倍の22.2%とさらに悪化する。若年失業率を国別にみると、イタリアやポルトガルなどで30%超、ギリシャやスペインでは50%超と、南欧ほど深刻な状況であることがうかがえる(図)。

図 若年者(15~24歳)の失業率

図 2008年、2012年の若年者(15~24歳)の失業率

出所: IILS estimates based on Eurostat, Quarterly Labour Force Survey.

若年者を含めて労働市場全体が回復しているドイツ、ベルギー、ルクセンブルク、マルタといった国でも、ここ最近は回復速度が鈍化しており、報告書はユーロという単一通貨圏で、合意・協調された雇用政策に取り組む必要があることに言及。加えて、ほとんどのユーロ圏諸国が財政緊縮を優先したことにより、経済成長が弱められ、銀行の財務事情が悪化し、貸し渋りや、投資の減少、雇用の削減につながる「緊縮の罠(austerity trap)」に陥っている点を指摘した。その罠から抜け出す具体的な政策として、(1)小企業への融資再開を条件とした金融制度の修復、(2)若者を中心とした求職者支援と投資促進、(3)ユーロ圏諸国間の競争力格差に対する取り組みを行うよう提言している。

ILOのファン・ソマビア事務局長は、「こうしたユーロ圏諸国―特に南欧―で続く雇用危機は、正しい措置が講じられない限り、さらに深刻化して世界経済全体に波及する恐れもある」として、雇用を中心に据えた新しい政策については、ユーロ圏を越えた国際社会が合意できるよう国連やG-20 などが主導して取り組む必要があると結論付けている。

参考資料

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