アフガニスタン支援、持続可能な雇用創出が課題
―ILOカブール所長が報告

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2012年7月

国際労働機関(ILO)カブール事務所代表(上級調整官)のベルジェ氏は9日、日本の関係者に対し、アフガニスタンの雇用情勢について報告した(注1)。それによると、同国では全経済活動の8~9割をインフォ―マル・セクター(非公式部門)が占め、多くの労働者が不安定な働き方をしている。同国の今後の発展のためには、「持続可能な雇用の移行」が重要な要素だ、と同氏は強調した。

エルベ・ベルジェILOカブール事務所代表 / 上級調整官
エルベ・ベルジェ ILOカブール事務所代表 / 上級調整官

雇用データ不足や政策調整機関の不足

同氏は、前日の8日に開催された「アフガニスタンに関する東京会合」に出席するために来日した。同会合は、支援諸国や国際機関などの関係者らが同国支援の今後について話し合うことを目的に開かれた。

この会合に先立ち、ILOは6月5日、「アフガニスタン:今こそ持続可能な仕事へ移行する時(Afghanistan: Time to move to sustainable jobs)」と題する報告書を発表している。報告書は、(1)同国では信頼できる雇用統計や技能需給データが不備で、現状把握が難しい、(2)短期的支援事業が多く、長期的視野に立った取り組みが少ない、(3)雇用政策について話し合う機会や調整機関が不足している―などを課題として指摘している。

同報告書を担当したベルジェ氏は、「今後このような課題を克服した上で、アフガニスタンの開発計画の中心に持続可能な雇用とディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を据えるべきだ」と主張している。

経済の8~9割がインフォーマル・セクター

アフガニスタンでは、全経済活動の8~9割をインフォーマル・セクター(非公式部門)が占めている。農業とサービス業が多く、就業者の6割が農業分野で生産性の低い自給自足型生産活動に従事している。また、国際開発支援によって創出された雇用の多くは、臨時または一時的なもので支援の継続に大きく左右されるため、「持続可能」と言える状況にはない。

アフガニスタンの国内調査(NRVA2007/8)によると、1,206万人いる生産年齢人口のうち労働力人口は803万人で、労働力率は66.6%となっている。失業率はわずか7.1%(82.3万人)だが、不完全就業率は48.2%(387万人)、脆弱な雇用で働く者は、労働力人口の77.0%(618万人)に達している。ILOは低い失業率について「失業保険などの社会保障がなく、大多数の人が単に失業している余裕がないという点から解釈すべきだ」としている。

また、アフガニスタンの法定就労年齢は15歳だが、国連児童基金(UNICEF)によると、3割の子どもが児童労働をしており、主に牧畜・農業、煉瓦工場や絨毯工場などで働いている。

そのほか2002年以降は500万人を超えるアフガニスタン難民が本国に戻ってきているが、調査対象者の3分の1は農業や建設業の日雇いなどで働いており、不安定な生活から抜け出せずにいる。

2015年から「変革の10年」の重点に

アフガニスタンでは2014年末までに、治安権限が国際治安支援部隊(ISAF)からアフガニスタン政府へ委譲される。それ以降の2015年から2024年は「変革の10年(Transformation Decade)」と位置付けられる。今回の東京会合では、2015年以降を見据えた、持続可能な開発への道筋をつけるための話し合いがなされた。その結果、アフガニスタン政府が汚職防止や選挙制度改革に取り組むことを前提条件に、国際社会は2015年までに総額1.28兆円の支援を行い、2015年以降も支援を継続することで合意した。

ベルジェ氏は、この「変革の10年」に関する国家計画の中で、「持続可能な雇用の創出」に焦点を当てるべきとして、潜在的な成長可能性が高い「鉱工業」や「農業」の分野に重点を置いて、雇用対策に取り組む考えを示した。

参考資料

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