出稼ぎ労働者不足に福建省が新政策
―子女の大学入学で改善策―

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2012年7月

福建省は出稼ぎ労働者対策として新たな施策を発表した。これまでハンディを課していた出稼ぎ労働者の子女の大学入学を同省の学生と同じ扱いにするというもので、2014年の大学入試から実施する。背景には、内陸部の急速な経済発展による深刻な労働力不足を指摘できよう。

差別的な受験機会、試験制度を是正へ

福建省教育庁は5月、「福建省の高校で3年間就学した当地の戸籍を有さない学生について、2014年より当地での大学入試の受験を認め、またその試験において当地の学生と同等の権利を付与する」と発表した。

従来は出稼ぎ労働者の子女が出稼ぎ先で高校に就学するのは難しく、仮に就学出来たとしても、大学受験については戸籍を有する(多くは内陸部の)親の出身地で受験する必要があった。中国の大学受験は市・省ごとに実施されている。出身地域外の大学を受験する事も可能だが、定員数が地域ごとに割り当てられており、地元の学生が優遇されている。そのため沿岸部の大学を志望する場合、内陸部出身の志望者は沿岸部の志望者よりも高い点数を獲得する必要がある。今回の改正により、出稼ぎ労働者の子女は出稼ぎ先の大学に入学する事が容易となる。

福建省教育庁の担当者は「この政策は都市部と農村の格差を是正するものだ。教育の質に向上するだけでなく、多くの出稼ぎ労働者を福建省に引き付けるだろう」と述べている。また福建省の大学入試制度の担当者は「産業高度化を実現するために、福建省にはより多くの熟練労働者が必要だ。多くの出稼ぎ労働者が福建省の企業に勤め、福建省に家を持ち、福建省の学校に子女を通わせている。彼らは福建省の戸籍を有さないが、だからといって単に出稼ぎ労働者と総称する事は出来ない」と述べている。福建省では2008年より教育制度改革を実施しており、出稼ぎ労働者の子女が小・中・高等の公立学校へ入学することを認めるとともに、受け入れを実施した学校に助成金を支出しており、その額は2011年で2.6億元に上る。

背景に労働者不足

今回の制度改正の背景には、福建省を初めとする沿岸部での深刻な労働者不足がある。

中央政府による中西部への経済発展支援政策などにより、内陸部は急速に発展しつつある。それに伴い賃金水準も上昇し、内陸部との賃金格差は縮小しつつある。また熟練労働者を必要とするような雇用も創出されている。そのため内陸部出身の出稼ぎ労働者は地元へと帰郷し始めており、福建省は近年労働者不足に悩まされていた。今回の政策により、出稼ぎ労働者自身の帰郷を防ぐとともに、将来の熟練労働者になりうる出稼ぎ労働者の子女もいち早く確保することとなる。

北京、上海はまだ慎重

沿岸部ではいずれの市・省でも労働者不足が深刻だが、こうした政策が他地域にも波及するかは不透明だ。今年に入り山東省と広東省が、福建省と同じく出稼ぎ労働者の子女の当地での受験を将来的に認めると発表した。しかし大学が多数存在し、また試験制度で恩恵を受けていると言われる上海市や北京市では、現在のところこうした動きは見られない。上海市や北京市では、出稼ぎ労働者やその子女の受け入れは大学入試制度だけの問題ではなく、住宅や社会保険制度にも大きな影響を与えるため、慎重になっていると見られる。

参考資料

  • 経済観察報

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