出稼ぎ労働者数、前年より3.4%増
―2011年の労働統計―

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人的資源社会保障部は6月、2011年の労働統計を発表した。同年の民間企業の平均年間賃金は2万4556元で、前年よりも18.3%上昇した。全国の出稼ぎ労働者数は1億5863万人で、前年よりも3.4%増加した。内陸部の発展で、地元回帰の動きが見られるものの、出稼ぎ労働者は依然として増えている。

賃金上昇率、民間が非民間を上回る

賃金は一貫して上昇傾向にある(図1)。都市部民間企業の年平均賃金は2万4556元であり、前年比18.3%の上昇だった。一方、都市部非民間企業の年平均賃金は4万2452元であり、前年比14.3%の上昇だった。最低賃金についても各省で引き上げが行われた。昨年は北京市、重慶市など25の市・省で引き上げが実施され、その平均引き上げ幅は22%だった。失業率は4.1%で前年と変わっていない。ただし失業者は922万人で、前年より14万人増加している。

人的資源社会保障部の蘇海南氏は、「民間企業の方が非民間企業よりも賃金の上昇率が高いのは、出稼ぎ労働者を大量に雇用しているためだ。彼らが不足しつつあるため、賃金を上げざるをえなかった。民間企業の方が上昇率が高いのは好ましいこと」と述べている。また産業別の動向について同氏は、「建築業、製造業での賃金は、更に上昇すべきだ。一方で市場独占により高所得者が多い産業においては、それを打破して不合理な賃金格差を解消すべきだ」と述べている。

図1:平均賃金の推移(単位:元/年)

図1:2008-2011年、平均賃金の推移(単位:元/年)

出所:人的資源社会保障部

出稼ぎ労働者は依然として増加

出稼ぎ労働者の総数は1億5863万人で、前年より3.4%上昇した。依然として増加傾向にある(図2)。内陸部の発展に伴い出稼ぎ労働者の地元帰郷を伝える現地報道も多いが、統計上は出稼ぎ労働者の総数は減少していない。

図2:出稼ぎ労働者数の推移(単位:万人)

図2:2004-2011年、出稼ぎ労働者数の推移(単位:万人)

出所:人的資源社会保障部、統計局資料より作成

第12次5カ年計画、順調な滑り出し

第12次5カ年計画の初年に当たる2011年は、失業率、失業保険加入者数、労働契約加入率など雇用労働面の指標が概ね計画通りかそれを上回っている(表)。

第12次5カ年計画では、都市・農村を問わず、社会保険の適用範囲の拡大を目標に掲げている。中国社会科学院の鄭秉文氏は「社会保険の適用拡大で特に困難なのは、出稼ぎ労働者に対しての年金保険・医療保険の提供だ。社会保険制度改革が進まなければ、特に若い出稼ぎ労働者の加入率は伸び悩むだろう」と述べている。

表:労働、社会保障分野での 第12次5カ年計画の状況
項目 2010年値 2011年値 2015年目標
失業率(%) 4.1 4.1 5.0以下
養老保険加入者数(億人) 2.57 2.84 3.57
失業保険加入者数(億人) 1.34 1.43 1.60
労働契約率(%) 65 86 90
労働争議仲裁率(%) 80 94 90

出所:人的資源社会保障部

参考資料

  • 人的資源社会保障部、統計局、新華社通信

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