「新たな雇用危機の時代に突入」
―ILO年次報告書

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2012年5月

国際労働機関(ILO)は4月29日、「仕事の世界報告2012年―より良い経済のためのより良い仕事」と題する年次報告書を発表した。欧州債務危機などの影響で、「大多数の国や地域では近い将来回復する兆しは見られず、新たな雇用危機の時代に突入しつつある」と警告を発している。

前年の報告書では、2008年の世界金融危機前の雇用水準に回復するのは、「16年以降」としていた。しかし、今回はその予測を「17年以降」に1年遅らせた。

報告書は、ドイツ、オーストラリア、イスラエルなどでは経済の回復が見られたものの、危機前の水準と比べると依然として全世界で5,000万人以上の仕事が失われたままだと指摘している。昨年末の全世界の失業者総数は推定1億9600万人。2012年にはさらに増加して2億200万人に達するとILOでは予測している。

報告書はさらに、ユーロ圏を筆頭に多くの先進諸国が財政緊縮や規制緩和などの労働市場改革を優先した結果、雇用創出が進展していない点にも言及。雇用を中心に据えた租税政策の組み合わせと公共投資や社会給付支出を適切に増やせば、先進国で来年にかけて180万~210万人分の雇用創出が可能との試算を示し、各国の理解を求めた。

日本については、昨年3月の東日本大震災が、世界金融危機からの回復に深刻な影響を与えたと分析している。

就業率は、危機前(07年第3四半期)の58.3%から56.6%(11年第3四半期)に低下したことを指摘(図1)。また、危機前に4%以下だった失業率は、10年に5%以上に悪化した後、11年に再び4.5%に改善したが、非労働力率が09年から11年にかけて40.1%から40.7%に増加していることから、結局は雇用状況が改善したわけではないと見ている。

図1:日本における就業率の推移

図1:日本における就業率の推移(2007-2011年)

出所: ILO, LABORSTA Database

このほか、日本は公的債務の対GDP比率が先進諸国で最悪となっている点も伝えている(図2)。ただ、財政の健全化を目指す際には、日本を含む多くの先進諸国が実施しようとしている財政緊縮策など「公的支出の削減」のみに偏るのではなく、環境税を導入するなど何らかの方法で「税収の拡大」を積極的に進めることを奨励している。税収拡大につながる政府の消費税引き上げ案(5%から段階的に10%)については、短期間に効果を得られる選択肢の一つだとしつつも、消費税は逆進課税であり、いかなる増税を行う際にも、深刻な影響を受ける低所得者に対する支援措置を同時に行うようILOでは提言している。

図2:先進諸国における公的債務の対GDP比率(2011年)

図2:先進諸国における公的債務の対GDP比率(2011年)出所: ILO, LABORSTA Database

出所: ILO, LABORSTA Database

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