起業、3人に1人が移民、企業数25%増(5年前比)
―経済技術省調査

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2012年3月

経済技術省が2月に発表した調査結果によると、2009年に設立された40万の企業のうち、13万は移民によるもので、その数は5年前の2005年と比較すると約25%増加していることが明らかになった。ドイツで起業した3人に1人が移民という計算になる。

新規EU加盟国の移民による起業が増加

近年では、特にポーランドなど新規EU加盟国から移住した者による起業の増加が顕著である。全就業者に占める起業希望者の割合は、ドイツ人を1とした場合、ポーランド人は15と非常に高く、なかでも建設分野の起業が目立って多い。今回の調査結果でも、起業したポーランド人の3分の1がこの分野で活動していた。
 同様に、ルーマニア人の起業も2005年から2009年までに63%以上増加しており、このほか女性の数も僅かながら増加していた。

今回の調査結果から、それまで移民(注1)の伝統的な起業分野であったレストランなど飲食業や小売のほかに、知的産業や飲食と小売以外のサービス分野での起業も増加しており、ドイツ人による起業の業種分布に近似しつつあることも判明した。

経済相は歓迎

経済技術省(BMWi)は2010年から新たに、ドイツ国内での起業を促進するために「起業家の国ドイツ」という一連の支援策(イニシアチブ)を行っている。具体的には、(1)「起業家週間」を設けて広報・啓発活動の実施、(2)学校や大学における起業関連教育の重点化、(3)融資制度の改善、(4)将来の企業承継者である企業内の中間層に対する特別プログラムの実施などを行っており、対象には移民も含まれている。

今回の調査は、同イニシアチブの枠内で「移民の起業状況とその政策ニーズ」を探るために実施されたものである。イニシアチブでは、このほかに起業志望者に対する実践的なアドバイスなども実施しており、ドイツ商工会議所(DIHK)、ドイツ手工業中央連盟(ZDH)、および連邦自由業連盟(BFB)などが政府に協力して積極的に支援している。

レスラー経済技術相は今回の調査結果について、「外国にルーツを持つ起業家がドイツで増加することは、ドイツの経済成長にとって非常に良いことであり、これにより新たな経済効果がもたらされるだろう。我々は、革新的な製品やサービスを生み出し、経営者として独立する意欲を持つ独創的な頭脳の持ち主を常に必要としている」と述べ、移民による起業の増加を歓迎した。

移民の起業率が高い要因―IAB 調査

労働市場・職業研究所(IAB)が2011年に実施した「世界起業モニター(GEM)調査」によると、他国に比較してドイツは起業が少ない国として分類されている(図1)。

そのような中で、起業での移民の割合が高いことが今回の調査で判明した。IABはその理由をいくつか挙げている。一つは失業リスクだ。語学力・文化的背景の壁、求職時の固定観念や差別の壁、自国での公教育の資格が認定されないことなどによって、移民はドイツ国民に比べ2倍の高さの失業リスクを抱えており、それが起業の動機を強めているという。
 また、ドイツよりも起業が盛んな国から来ており、ドイツには希薄な文化的ロールモデルを持ち、加えて独自の社会的ネットワークも有していることも影響している、と見ている。
 さらに、良い暮らしを求めて移住してきた移民の多くの人物像は、本国にとどまっている同国人と比較して、向上心、独立志向、自己信頼、モチベーション、適応能力などが顕著で、その特徴は起業を促す要因になっているという。

図1. 起業に関する国際比較
(18~64歳人口に占める割合、%)

図1. 起業に関する国際比較(18~64歳人口に占める割合、%)

GEM-Bevolkerungsbefragung 2009/2010, IAB

調査結果によると、起業した事業内容の新規性・改革性という見地でいえば、ドイツ人と移民との間に大きな差は見当たらず、起こした企業規模では移民のほうがドイツ人よりも大きいこともわかった。そのため、移民による起業のほうが大きな雇用効果があり、ドイツ経済に重要な貢献をしている、とIABは結論づけている。

参考資料

  • Die Bundesregierung Nummer 02 02/2012, IAB Kurzbericht8/2011, Bundesministerium fur Wirtschaft und Technologie“ Initiative fur einen guten Start”.

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