若年・高学歴層多く、競争力強化に貢献
―過去10年の移民について調査報告

カテゴリー:若年者雇用統計

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  • 国別労働トピック:2012年11月

ケルンドイツ経済研究所(IW)はこのほど、1999年から2009年の10年間に新しくドイツに移住した移民は、若くて高学歴の者が多く、国内の競争力強化と技能労働者の確保に寄与しているという調査結果を発表した。

3分の1が若年層、4分の1が大卒

ドイツでは、1960年代に労働力不足を補うためトルコなどから大量の労働者を受け入れた過去がある。こうした外国人労働者は最終的に自国に戻ると当時は考えられていたが、予想に反して大半がドイツに留まり、そのほとんどが未だドイツ社会に融合せずに閉鎖的なコミュニティを形成している。そのため、彼らの教育水準の低さや失業率の高さなどが国内で深刻な問題になっている。

それに対して、1999年から2009年の10年にドイツに来て在留している約280万人の移民を詳細に分析してみると、ドイツがかつて受入れた移民とは異なる「新しい移民像」が浮かび上がってくる。新移民の約3分の1は、EU諸国もしくはドイツと自由移動の協定を締結している欧州諸国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェイ、スイス)から来ている。その他3分の1は、旧ソ連/独立国家共同体(CIS)出身者で、特にロシア出身が多い。ロシアをルーツとする者は、ドイツに居住する移民の14%を占め、その多くは後期帰還移住者(注1)であると考えられる。残りの3分の1は、欧州以外の出身者である。

図:新移民の出身地域(2009)(単位:%)

図:新移民の出身地域(2009)(単位:%)出所:IWケルン2012

  • 出所:IWケルン2012
  • 注1:アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェイ、スイスを含む

新移民の特徴を一言でいうと、若く、十分な訓練を受けた人が多い。詳しく見てみると、新移民の平均年齢は32.6歳で、ドイツ全人口の平均と比較して10歳以上も若い。年齢層では25~35歳が3分の1以上を占める。この先に何十年もの職業人生を可能とするこの年齢層はドイツ全体の人口構成では12%に過ぎない。

また、保有資格については、移民の4人に1人以上が大学教育の修了者である。ドイツで学士号、修士号を持つ者は、平均で人口の18%にとどまる。特に大卒者が多いのは西欧出身者で、ほぼ半分が大学修了資格を持ち、現在ドイツで人材が不足している分野の修了資格者も多い。 西欧出身者の7人に1人以上が「数学、情報科学、自然科学、または工学(MINT)」分野の修了資格を有し、20人に1人が医学分野の修了資格を有している。

1999年から2009年までの間に、25歳以上64歳以下の18万5000人のMINT分野の大学修了者と、4万2000人の医学分野の大学修了者がドイツに入国し、そのまま在留している。

専門職・管理職の割合21%

人材不足分野の修了資格を保有することと、実際にその分野で職を得られることとは別問題であるが、過去10年間に入国したMINT分野の大学修了者のうち、2009年には約8万8400人が、また、医学分野の大学修了者のうち約2万2000人が、ドイツで保有資格に相応の職に就いていた。

ドイツにおける移民の地位は上昇傾向にある。2000年時点では、1990年以降に就職した移民労働者の12%が、専門職か管理職―学術系教員、法律家、医師、企業役員など―のポストで働いていた。この割合は2005年には16%に増加し、さらに2009年には経済危機にもかかわらず21%へと増加した。その結果、移民が専門職または管理職に就く割合は、ドイツ国内労働者の人口に占める割合とさほど変わらなくなっている。

2分野で130億ユーロ強の付加価値を創出

ケルンドイツ経済研究所(IW)では、「新移民はドイツの競争力強化と技能労働者の確保に重要な貢献を果たしている」と見ている。特にMINT分野と医学分野の大学修了者はその貢献度が高く、1999年から2009年までに入国した移民で、MINT分野または医学分野で働く専門労働者の貢献度を計算したところ、次のような結果になった;

  • MINT分野の人材の貢献度:MINT分野の大学修了者で専門職または管理職に就く者は、1人当たり平均で年11万9000ユーロを生みだしている。過去10年間にドイツに入国した移民のうち8万8400人が2009年に当該の職に就いていた。この2つの値を乗じると、付加価値貢献の総額は、105億ユーロを超える。
  • 医学分野の人材の貢献度:医学分野の大学修了者は、1人当たり平均で年11万5000ユーロを生みだしている。この分野で就労する移民の数は2万2000人で、乗じると25億ユーロ以上になる。

従って、これら2つのグループだけで合計130億ユーロ強の付加価値が創出されていることになる。1999年以降にドイツに入国した新移民全体の総就労付加価値は、この何倍もの高さになる。

ケルンドイツ経済研究所(IW)は、「今後さらなる技能労働者確保を目指し、ドイツにおける移民歓迎気運を高め、さらに移民に関する規定を改めることで、長期的に移民の受入を徐々に増やしていくことが重要だ」と結論付けている。

参考資料

  • eiro online(12 Jul 2012) IW trends 2/2012 Der Beitrag der Zuwanderung zur Fachkraftesicherung, Bundesministerium des Innern Website.

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